見出し画像

Tenchijin New Age Blog 宇宙ニュース特集 Vol.3

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。天地人に所属する学生インターンが、これは面白いと思った宇宙のトピックスを、定期的にお届けします。

Tenchijin New Age Blog宇宙ニュースの3回目の記事となる今回は、日本の宇宙産業から海外の宇宙産業まで、国内・海外の動向がつかめるニュースを選んで紹介していきます。

宇宙ニュースがちょっぴり楽しく感じられるような解説や、学生インターンの見解や感想もお伝えしていきます。ふらっと宇宙を覗いていくような気持ちで読んでいただければ嬉しいです。

今回は天地人学生インターンが注目した以下の4つのニュースを紹介します。
・スペースX社、インテュイティブ・マシーンズ社による先駆的月探査ミッションで民間の「オデュッセウス」着陸船を打ち上げ
・NASA、OSIRIS-RExのバルクサンプルの質量を発表
・宇宙での手術:小型遠隔操作ロボット、宇宙ステーションで初の模擬手術を完了
・小惑星の表面で水が初めて発見される



天地人学生インターンが注目したニュース4選!

ニュース1:スペースX社、インテュイティブ・マシーンズ社による先駆的月探査ミッションで民間の「オデュッセウス」着陸船を打ち上げ

出典:SpaceX

SpaceXは、Intuitive Machinesが製造したロボット型月面着陸機「オデュッセウス」を搭載したFalcon 9ロケットを、フロリダのNASAケネディ宇宙センターから打ち上げました。オデュッセウスは、2月22日に月の南極近くに着陸する予定で、民間企業としては初めての月面着陸を目指しています。NASAのアポロ17以来、米国が月面に到達するのはこれが初めてです。

このミッションは、NASAのアルテミス計画を支援するための6つの科学機器を搭載しており、月の南極にある水氷を活用することで、将来の宇宙飛行士のサポートと地球外での宇宙船の燃料補給を可能にすることを目指しています。

出典:SpaceX launches private ‘Odysseus’ lander on pioneering moon mission by Intuitive Machines (video)

学生インターンの見解
日本では1月20日のJAXAによるSLIMの月面着陸が記憶に新しいですね。今回は月面探査について、そもそもどんなところに意義があり、どのような変遷を追ってきたかを調べてみることにしました。

まず月面に着陸を成功させた国々は、1966年のソビエト連邦から始まり、アメリカ、2013年には中国、2023年にインド、そして2024年に日本が加わりました。

月探査の目的は多岐にわたりますが、太陽系探査技術の確立、月の科学的理解の深化、国際的な存在感の強化、特に最近では月資源の開発への関心が高まっているようです。その中で特に注目されるのが、水資源の存在です。月の極域にある永久影地域は、水氷が存在する可能性が高く、これがロケット燃料、飲料水、酸素供給源として活用できる可能性を秘めています。また、月には鉄、チタン、ヘリウム3などの貴重な資源が存在し、これらは将来の宇宙開発や地球のエネルギー問題に対する有効な解決策を提供することが期待されています。

オデュッセウスのミッションは、これらの資源を活用するための第一歩を意味しています。水資源の確認と利用、効率的なエネルギー源としての高日照率地域の活用、さらには月の資源探求は、月探査を超えた未来の宇宙開発への重要な一歩となります。日本を含む各国の探査が、この未知の領域への理解を深め、地球外での人類の生活基盤を築くための貴重な知見へとなっていくのではないでしょうか。

今回のオデュッセウスのミッションが成功すれば、未来の月面開発への道が一層明確になり、地球外での生命維持の可能性を広げる次のステップになるはずです。

参考
月探査の現在
月面基地とは いつ実現する?–目的や得られる資源、日本など各国の取り組みを解説
月探査の5W1H

ニュース2:NASA、OSIRIS-RExのバルクサンプルの質量を発表

出典:NASA/Robert Markowitz

NASAがOSIRIS-RExミッションで小惑星ベンヌから持ち帰ったサンプルの質量を121.6グラムと発表しました。この成果は、宇宙ミッションで収集された小惑星サンプルとしては最大量であり、当初の目標を大きく上回るものです。このサンプルは、太陽系の起源や地球上の生命の起源に関する貴重な手がかりを提供することが期待されています。

出典:NASA Announces OSIRIS-REx Bulk Sample Mass

学生インターンの見解
今回のミッションの目的と、収集したサンプルによって得られる未来について調べてみました。まず今回のOSIRIS-RExミッションは、太陽系の形成と生命の起源に関する理解を深めること、将来の資源開発と宇宙探査の可能性を探ること、そして地球に衝突する可能性のある小惑星からの防衛策を研究すること、という三つの重要な目的を持っています。

小惑星ベンヌから採取された試料は、地球上で生命が誕生するための条件を解明する貴重な手がかりを提供し、さらに、水や貴金属を含む天然資源の存在が将来の宇宙探査や資源開発における重要な資源となることを示唆しています。また、このミッションによる小惑星への接近と試料採取技術は、地球に接近する小惑星からの防衛策を研究する上でも重要な役割を果たしています。

また、今回OSIRIS-RExミッションがサンプル収集を行った小惑星ベンヌを調べたところ、約6年ごとに地球に接近し、将来的に地球と衝突する可能性があると予測されているようです。地球に持ち帰られたサンプルの分析は、このような衝突リスクを事前に評価し、適切な対策を講じる上で重要な役割になるとのことです。

このOSIRIS-RExミッションにより採取される小惑星ベンヌのサンプルは、JAXAとNASA間での覚書(MOU)により、JAXAが総重量の0.5%を受け取ることが決まっています。

参考
OSIRIS-REx NASA
OSIRIS-RExミッションとBennu | 地球外物質研究グループ


ニュース3:宇宙での手術:小型遠隔操作ロボット、宇宙ステーションで初の模擬手術を完了

出典:CNN

ロボット "ミラ "が、国際宇宙ステーションで史上初の宇宙手術を成功させました。この画期的な出来事は、宇宙医学における重要な進歩であり、長期ミッションに参加する宇宙飛行士の医療に革命をもたらす可能性があります。地球上の外科医が遠隔操作で行ったこの手術は、地球外での複雑な医療介入の可能性を示すものであり、有人宇宙探査と居住の新たな可能性となります。
出典:Surgery in space: Tiny remotely operated robot completes first simulated procedure at the space station

学生インターンの見解
CNNの記事の中にある動画視聴から得られた情報によると、今回紹介されたのは、地球から遠隔操作により宇宙空間で行われた模擬的な手術の様子でした。具体的には、遠隔操作されたロボット”ミラー”を用いて、バンド状のものを切断する試みが行われていました。

この実験が通常の医療行為としての手術とは異なるものの、これだけニュースとして取り上げられているのは、地球上の医師が行う動きを宇宙空間まで正確に伝達し、バンドを切断するという行為には、高度な技術が利用されていることを示しているのではないでしょうか。今後の技術開発においては、操作の精度向上と信号伝達速度の改善が重要な課題とされています。将来的に人間の手術を宇宙空間で行うことを目指す場合、現在の技術水準をはるかに超える進歩が必要になっていきます。

近年、月面着陸やH3ロケットの打ち上げなど、宇宙業界における技術革新がニュースとして報じられています。このような宇宙技術の発展は、多くの人々の宇宙への関心を高めるだけでなく、異なる分野の技術が融合し、新たな可能性を生み出すきっかけとなるはずです。今回のようなニュースがもっと増えていくことで、より多くの方の関心をひき、探査活動以外にも、医療の領域などでの大きな飛躍に繋がっていくと良いなと考えました。

ニュース4:小惑星の表面で水が初めて発見される

出典:NASA/Carla Thomas/SwRI

初めて、水分子が小惑星表面で検出され、太陽系における水の分布についての新しい手がかりが発見されました。科学者たちは、NASAとドイツ航空宇宙センターによって運営されていた航空機搭載望遠鏡SOFIAのデータを利用して、4つのケイ酸塩を多く含む小惑星を研究しました。その結果、SOFIAのFORCAST赤外線カメラによる観測で、IrisとMassaliaと名付けられた2つの小惑星が、水分子の存在を示す特定の波長を示すことが明らかになりました。

この発見は、太陽系における水の分布に関する新たな洞察を提供し、小惑星や他の天体に水がどのように分布しているかについての理解を再構築する可能性があります。

出典:Water found on the surface of an asteroid for the 1st time ever

学生インターンの見解
小惑星の表面で水分子が発見されたことは、太陽系の形成時に残された小惑星が、単なる乾燥した岩石の塊ではないことを明らかにした重要な成果だったようです。調べたところ、以前にイリスとマッサリアという小惑星で、水和反応の証拠が別の望遠鏡を使用して発見されたことがありました。しかし、これらの水和反応が水分子によって引き起こされたのか、それとも水酸基などによるものなのかについては、科学者たちも確信を持てていませんでした。

また、今回のデータの提供元となっていたSOFIAについて調べたところ、SOFIAは、元々「ボーイング747」として知られるジャンボジェットを改造して作られたもので、2022年9月に運用を終了していました。地上からは観測できない波長の光を捉えるために、望遠鏡を搭載したジャンボジェット機が使用されていました。しかし、このプロジェクトは高額のコストがかかり、期待された成果を得るのが困難だったため、運用を終了したという背景があります。

今回、SOFIAの運用期間中に収集されたデータからの発見ということで、その価値が再評価されたことは注目に値するのではないでしょうか。宇宙研究は高額な投資を必要としながらも、その成果が直ちには明らかにならないことが多いため、今回のような成功事例が投資環境を刺激し、更なる発見につながっていくと良いなと考えました。

参考:ジェット機を改造したNASAの“空飛ぶ天文台”が、その短い歴史に終わりを告げた



今回は月面探査から宇宙での手術実験まで、幅広いテーマで宇宙ニュースをピックアップしてみました。ロケット開発や月面探査だけではなく、様々な領域で宇宙に関する取り組みが増えていくと、宇宙に関するより多くの技術革新につながるのではないでしょうか。

これからもTenchijin New Age Blogでは学生インターンがピックアップしたトピックをライトに紹介していきます。これをきっかけに、皆様にとってなんとなく目に入っていた宇宙のニュースに対する彩度が上がったら嬉しいです。

天地人へのご質問・記事に関するご感想・記事の内容のリクエスト等ございましたら、info@tenchijin.co.jp までお気軽にお問い合わせください。

(学生 事業開発インターン 渡邊)