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「天地人が注目する今月の宇宙ニュース ~衛星通信編~ Vol.8」

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

天地人が注目した4つの衛星通信に関する海外ニュースを紹介します。

今回は、
Rivada Space Networks社がグローバル衛星通信事業者協会に加盟
インドの衛星地球局ゲートウェイ設置免許に関する制度整備
・周波数帯のシームレスな切り替えが可能な船舶用アンテナ
・EchoStar社の通信衛星の生産をMaxar社が継続

を取り上げました。

それぞれについて、天地人の専門家が、
ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。

1.天地人が注目したニュース4選! 

ニュース①:Rivada Space Networks社がグローバル衛星通信事業者協会に加盟

政府や企業向けに安全でグローバルな接続を可能にする欧州衛星通信ネットワーク企業、Rivada Space Networks社(以下、RSN社)がグローバル衛星通信事業者協会(以下、GSAO)への加盟を発表。低軌道惑星(LEO)コンステレーションを展開し「ヨーロッパに独立した安全な通信インフラの提供」を目指す。

出典:Cision PR newswire,Rivada Space Networks Joins the Global Satellite Operators Association to help shape the future of communications for Government & Enterprise
Aarti Holla-Maini, GSOA General Secretary (left) and Severin Meister, Rivada Space Networks CEO, shake hands.

https://www.prnewswire.com/news-releases/rivada-space-networks-joins-the-global-satellite-operators-association-to-help-shape-the-future-of-communications-for-government--enterprise-301688340.html

ニュース②:インド電気通信省(DoT)は衛星地球局ゲートウェイ(SESG)に個別のライセンスを付与すべきである。とインド電気通信規制庁(TRAI)は述べた。

インド電気通信規制庁(TRAI)は、電気通信省(以下、DoT)に対して、衛星地球局ゲートウェイ(以下、SESG)に関する無線局免許付与のガイドラインの作成を勧告した。SESGは衛星通信と陸上の通信ネットワークを結ぶ衛星通信システムの重要な構成要素であるため、適格なサービス・ライセンス保持者/許可保持者に割り当てられるべきである、と規制当局は述べている。

出典:Businessline,DoT should grant separate licence for Satellite Earth Station Gateway: TRAI

https://www.thehindubusinessline.com/news/dot-should-grant-separate-licence-for-satellite-earth-station-gateway-trai/article66200740.ece

ニュース③:Cobham SatcomがKu・Ka帯をシームレスに切り替えられる独自のアンテナイノベーションを発表

海上および陸上移動セクターの無線・衛星通信ソリューションのリーディングプロバイダーであるCobham Satcom社は、ワンクリックで Ku 帯から Ka 帯にシームレスに切り替えられる最先端のアンテナシステムを発表した。このアンテナシステムを用いることで、衛星通信の運用費を最適化し、海上オペレーションの簡素化を図ることができる。

出典:Maritime Executive ,Cobham Satcom Introduces Unique Innovation to Simplify Maritime Ops

https://www.maritime-executive.com/corporate/cobham-satcom-introduces-unique-innovation-to-simplify-maritime-ops

ニュース④:EchoStar社とMaxar社、Hughes JUPITER 3衛星の生産に関する契約を変更

衛星通信ソリューションのプロバイダーEchoStar社と衛星製品の製造を担うMaxar社はHughes JUPITER 3衛星の製造に関する契約を変更することを発表した。これにより、
2023年前半の打ち上げ予定に向けてより強固なパートナーシップを結ぶことに至った。

出典:Cision PR newswire,EchoStar and Maxar Amend Agreement for Hughes JUPITER 3 Satellite Production

https://www.prnewswire.com/news-releases/echostar-and-maxar-amend-agreement-for-hughes-jupiter-3-satellite-production-301685660.html


2.天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。

ニュース1:Rivada Space Networks社がグローバル衛星通信事業者協会に加盟

ニュース1の解説では、「パリに拠点を置き、天地人事業開発マネージャーである浦部」が欧州における低軌道衛星コンステレーションの勢力図とRSN社がGSOAに加入することによって発生する影響について見解を記します。

欧州における低軌道衛星コンステレーションの勢力図

低軌道衛星による衛星通信の状況は、他の世界と同様にいくつかの主要企業の存在感が大きくなっています。

既にサービスを始めている米国のStarlink、英国のOneweb、急速に推進している米国のAmazon Kuiperの存在感が大きく、EUに属する企業の存在感はまだ大きくありません。

EUとしてはこの状況を憂慮しています。というのも、通信技術、インフラは経済だけでなく、安全保障上も重要です。これを他国に握られている状況は避けたいというのがEU所属各国の政府の考えているところです。

EUでは、EU主導で低軌道衛星コンステレーションを構築するという話は、何度も出ては消えを繰り返してきました。今年の2月にもこれまでの計画を修正し、EU内企業によるLEOコンステレーションを推進する方向性を強めています。

また、衛星通信は技術と資金と政治が主な舞台です。EUではルール作りを主導することで、業界に影響力を出したいと考えており、周波数帯の管理、通信技術の規格化など、政治的な動きも強めています。

RSN社がGSOAに加入することによって発生する影響

結論から言うとそれほど影響は大きくありません。

その理由を説明するにはGSOAとRivada Space Networkのそれぞれについての説明が必要になります。

まず、GSOAについてですが、GSOAはGlobal Satellite operators Associationの略です。
グローバルとついていますが、元々はEurope Satellite Operators Associatonでヨーロッパの衛星企業の業界団体でした、それがEMEA (Europe Middle East Africa)Satellite Operators Associationになり、2021にGSOAに変わっています。

この経緯からもわかるように、GSOAはヨーロッパの衛星関連企業が参加している業界団体で、主に衛星関連のルール作りにヨーロッパの事業者が積極的に関与するために活動しています。

Rivada Space Networkは米国の通信会社Rivada Networkを親会社に持つドイツ本社のLEOによる衛星通信サービスの企業です。この企業は衛星通信においては後発企業で、2025年に衛星の打ち上げを開始し、2028年にコンステレーションを完成させる計画です。

Rivada Networkが地上通信分野で後発ながらも成功していることもあり、衛星通信でもうまくやるのではないかと言う視点で見られています。私見では後発ということもあり、またドイツ企業でもあるため、米国ではなくヨーロッパをうまく使ってルール作りや企業連携を進めていくという意図もあるのではないかと思います。

しかしながら、Rivada Space Networkはまだまだ後発の企業であり、その企業がヨーロッパ中心の業界団体に加盟したというだけでは、大きなインパクトはないと思います。今後も企業単体、企業グループ、国内連携、地域の連合など、様々な単位、形でせめぎ合いが続くと考えられます。

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この後もニュース2,3,4それぞれに対し天地人の専門家の解説を記します。

ニュース2は、
衛星地球局ゲートウェイを活用した通信の仕組みとTRAIの勧告のメリットを

ニュース3は、
船舶における衛星通信の活用法と本ソリューションがもたらすメリットを

ニュース4は、
衛星生産におけるポイントと衛星開発における発注者、受注者の役割を

それぞれ記しています。

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