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天地人が注目する今月の宇宙ニュース ~リモートセンシング編~ Vol.1

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

 リモートセンシング技術を用いて行われた最新の調査や、スタートアップの衛星技術活用事例など、天地人が注目した5つの海外ニュースを紹介。それぞれについて、天地人の専門家が、日本における注目ポイントや今後の動向を解説します。

天地人が注目したニュース5選!

 

ニュース1: 牛のメタン排出量を宇宙から検出

牛が排出するメタンガスは高い温室効果を持ち地球温暖化に影響を与える。カナダのベンチャー企業GHGSat Inc.は、今年3月、米国カリフォルニア州の肥育場で、高解像衛星を用いた牛のメタンガスの追跡を行い、1年間で15,420世帯の電力に相当する排出があることを明らかにした。

出典 : Methane-Belching Cattle Finally Detected Via Satellite, ExtremeTech, https://www.extremetech.com/extreme/335112-methane-belching-cattle-finally-detected-via-satellite

ニュース2:トンネル火災の土壌焼失評価を完了

米国の焼却地域緊急対応の専門家らは、約80㎢の焼却地のフィールドワーク調査を完了した。リモートセンシング画像と合わせて土壌消失の深刻度マップが作成され、火災後の侵食とその後の土砂運搬、河川流量、土石流の発生確率の推定等に活用される。

出典 :BAER Team Tunnel Fire Soil Burn Assessment, SignalsAZ, https://www.signalsaz.com/articles/baer-team-tunnel-fire-soil-burn-assessment/ 

ニュース3: 宇宙からプラスチック汚染を特定

オーストラリアの慈善団体 Minderoo財団は、衛星データと機械学習を使用して、宇宙からプラスチック廃棄物の山の測定を行い、25カ国・数千カ所の廃棄物処理場を特定した。海洋環境へのプラスチックの流出の管理向上が期待される。

出典:Global Plastic Watch: Satellite Eyes Pinpoint Waste From Space to Reduce Ocean Pollution, Business Wire, https://www.businesswire.com/news/home/20220508005107/en/Global-Plastic-Watch-Satellite-Eyes-Pinpoint-Waste-From-Space-to-Reduce-Ocean-Pollution 

ニュース4: 飛行機で積雪マッピングを行い貯水量を予測

 米国西部の干ばつに見舞われやすい都市では、航空機で積雪を測定し、水資源予測の改善に活用している。航空機による積雪データは、従来の測定方法では対応できなかった気候変動による早期の雪解けに対応し、流域全体の積雪を正確に測定することを可能にした。

出典 : The Aspen Times: To refine water forecasts, Western cities map snow by plane https://www.aspentimes.com/news/to-refine-water-forecasts-western-cities-map-snow-by-plane/ 

ニュース5:リモートセンシングで氷河下の地下水を確認

米国の海洋研究所の学者らは、南極大陸で、電磁波を用いたリモートセンシングによる氷河下の地下水の調査を行い、地表下の貯水池を確認した。その水は、温暖化に伴い、氷の減少を加速させる可能性がある。

出典 : Huge Groundwater System Discovered Under Antarctica, GIZMODO, https://gizmodo.com/huge-groundwater-system-discovered-under-antarctica-1848874563 


天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した5つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。

・前半3つのニュースは「環境分野での職務経験を持ち天地人でビジネス開発を担当している立石」の見解
・後半2本は「水分野で研究を行い現在JAXA研究員でもある小川」の見解

を記します。

ニュース1: 牛のメタン排出量を宇宙から検出

日本における牛のメタンガス問題は、昨今のカーボンニュートラルの機運を受け注目度は高くなってきているように感じます。ただ、欧州・豪州・北米と比べるとまだ危機感は薄いように感じます。

その理由として、日本における牛の飼育数が少なく、メタンの排出量はそこまで多くないことが挙げられます。しかし、日本でも議論されていないわけではなく、大学や研究機関では腸内細菌や餌を変えることによりメタンの排出量を削減する研究開発が行われています。

一方で、畜産においてメタンガスを減らす最も迅速かつ効果的な対策は飼育頭数を減らすことです。その結果起きる食肉不足を防ぐため、欧州・北米では培養肉の開発・普及が盛んです。

GHGSat Inc.の取り組みの一番注目すべき点は、理論値ではなく実測値でメタン排出量を評価した点にあると思います。通常、牛から排出されるメタンの量は、牛の種類や頭数から理論値として算出されます。

しかし、GHGSat Inc.は衛星の広域性を活かすことで、実測値としてより正確なメタン排出量を計測でき、その結果、環境負荷のより正確な評価を可能にするのです。

今後も衛星技術が牛のメタンガス追跡として使用される可能性は高いと思います。計測する範囲が広域になるため、計測機器による現地計測ではあまりにコストがかかってしまいます。そんな中、低コストで実測値が計測できる衛星のソリューションは今後メタン計測におけるスタンダードになる可能性もあります。

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