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Tenchijin New Age Blog 宇宙ニュース特集 Vol.1

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。
天地人に所属する学生インターンが、これは面白いと思った宇宙のトピックスを、定期的にお届けします。

Tenchijin New Age Blog最初の記事となる今回は、SpaceXの衛星コンステレーション計画である「Starlink」とNASAの月面探査計画「アルテミス計画」の最新の動向を踏まえながら、これらの計画に国家主導で対抗を試みる中国の動きに着目していきます。

Tenchijin New Age Blogでは宇宙ニュースがちょっぴり楽しく感じられるような解説や学生インターンの見解や感想もお伝えしていくのでふらっと宇宙を覗いていくような気持ちで読んでいただければ嬉しいです。

天地人学生インターンが注目した4つのニュースを紹介します。
今回は

  • SpaceX、56基のStarlink衛星を打ち上げ

  • 中国、今年後半に独自の衛星コンステレーション建設に着手へ

  • NASA の新型宇宙船オリオンが無人アルテミス I 飛行試験を完了

  • 中国科学院、ロシアとの共同月面基地計画の目的リスト発表

を取り上げました。



天地人学生インターンが注目したニュース4選!

ニュース1:SpaceX、56基のStarlink衛星を打ち上げ(3/30時点)

56 個のStarlink衛星を搭載したSpaceX のFalcon 9ロケットが、フロリダ州の基地から3/29午後 4 時 1 分(フロリダ現地時間) に打ち上げられました。 Starlink計画のための打ち上げは2023年に入って 11 回目です。同社は 12,000基の低軌道(LEO)衛星の打ち上げ許可を取得しており、すでに4,200基以上のStarlink衛星がすでに打ち上げられています。

出典:Mike Wall, "SpaceX launches 56 Starlink satellites, lands rocket at sea”, Space.com, March 20 2023
https://www.space.com/spacex-starlink-group-5-10-launch

学生インターンの見解

SpaceXは言わずと知れたアメリカの民間の宇宙航空会社で、2021年に初の民間宇宙飛行を達成したことでも知られます。同社は宇宙輸送事業だけでなく、衛星インターネットサービス「Starlink」も提供しており、既に日本でも昨年の10月からサービスが開始されています。

衛星インターネットのすごいところは「光通信のように物理的な回線を引っ張ってくる必要がない」という点です。アンテナとルーターさえあればインターネット環境を構築できるのが衛星インターネットの優れたポイント。現在、日本では沖縄等一部地域を除いて全国で利用でき、ハードウェアが73,000円、月額6,600円と手が届かなくもない価格帯で利用できます。天地人の過去のブログでStarlinkのレビューを行っていますので是非下記の記事もご覧ください!

ニュース2:中国、今年後半に独自の衛星コンステレーション建設に着手へ SpaceXに対抗か

中国航空宇宙科学技術公司 (CASC) は、低軌道(LEO) 衛星ネットワーク用の衛星を打ち上げると発表しました。中国は13,000 基の衛星を搭載したLEOブロードバンド衛星コンステレーションを配備する計画で、2023年終わりまでには最初の30基の打ち上げを目指します。Starlink や欧州のベンチャー企業に対抗する目的があると思われます。衛星を提供するInnovation Academy for Microsatellites (IAMCAS )と長征5号といったロケットを建設する中国宇宙技術院 (CASC)がプロジェクトに参加する見込みです。

出典:Andrew Jones, “China to begin constructing its own megaconstellation later this year”,Space.com, March 28 2023
https://spacenews.com/china-to-begin-constructing-its-own-megaconstellation-later-this-year/

学生インターンの見解

「衛星コンステレーション」とは複数個の通信衛星を連携させて動作するシステムで、人工衛星1基では捉え切れなかった情報を複数基が「群」として機能することで絶え間なく広範囲の情報を得たり、通信を行ったりすることができます。

SpaceXに対抗して中国でも衛星コンステレーションの計画が始動しました。衛星コンステレーションの分野においては既に4,200基を打ち上げ、12,000基の打ち上げ許可を有しているSpaceXに大きく遅れをとっている状況と言えるかもしれません。SpaceXのライバルに中国の名が上がってくる日はくるのでしょうか。

昨年中国は宇宙ステーション「天宮」の建設を完了しました。1年8か月という短い作業期間で建設が終わったのは個人的にとても印象的でした。この時中国は長征5号Bというロケットを2,3か月に一回打ち上げることでモジュールを運搬しています。しかしさらに衝撃的なのが、この長征シリーズ、2022年の1年間で年間53回も打ち上げられているというではありませんか。SpaceXも2023年に入って週1回のペースで数十基の衛星打ち上げを行っています。物理的にも経済的にもこの頻度でロケットを打ち上げることができるとは驚きです。中国はじめ、衛星通信業界では開発速度に伴い、実機を多く打ち上げるための資金力やロケットや打ち上げ場所を調達する力が求められるようになりつつあるのではないでしょうか。

ニュース3: NASA の新型宇宙船オリオンが無人アルテミス I 飛行試験を完了

NASA の新型宇宙船オリオンは、昨年末に無人アルテミス I 飛行試験を完了し、将来の有人月面探査計画への第一歩を踏み出しました。オリオンはスペースローンチ システムロケット(SLS)で打ち上げられ、月面 から80 マイル以内に 2 回接近し、 268,563 マイルに及ぶ旅を経て地球に帰還しました。オリオンが月から地球の大気圏への再突入し帰還できたことによって、時速 25,000 マイルという速度への耐久性と、 5,000℉(2760℃)程度への温度に対する耐熱性を実証することに成功しました。

出典:Erika Peters, “Worldwide Team Makes Orion’s First Artemis Mission Possible”, NASA, March 24 2023 
https://www.nasa.gov/feature/worldwide-team-makes-orion-s-first-artemis-mission-possible/

学生インターンの見解

アルテミス計画とはNASAが提案する月面探査プログラムのことです。この計画の目玉は「月に再び人類を送り込むこと」。1969年のアポロ11号以来2度目の人類月面着陸を目指し日本を含めた8か国がアルテミス計画に合意をしています。このプログラムでは月面への有人着陸だけでなく、将来的には月や火星に向けた中継地点としての「ゲートウェイ(月周回有人拠点)」や月面基地の建設を計画しています。

今回触れた記事では、3段階あるミッションのうちの第一フェーズアルテミスⅠとして、スペースローンチシステムロケット(SLS)とオリオン宇宙船の無人飛行テストをクリアしたというニュースをお伝えしました。次はいよいよ有人飛行となりますが、ついにアルテミスⅡで月での周回に臨む宇宙飛行士4名が2023年4月3日に公開されました! ミッションは2024年後半に10日間のフライトが予定されています。半世紀ぶりの月面着陸に向けてますます期待が膨らみます。

ニュース4:中国科学院、ロシアとの共同月面基地計画の目的リスト発表

2021 年 6 月、中国はロシアと提携して、NASA のアルテミス計画に匹敵する月探査計画を開始すると発表しました。このプログラムには、ロボット探査、軌道船、有人ミッションが含まれ、最終的には月の南極周辺に前哨基地である国際月研究ステーション(ILRS)を建設する予定です。直近の国内会議で中国科学院 (CAS) の科学者チームは ILRS の目的のリストを提示しました。China Science Dailyによると、これらの目的には、月をベースとした天文研究、地球観測、および月の現地資源利用 (ISRU) が含まれます。

出典:MATT WILLIAMS, “China Hints at Its Goals for a Lunar Base”, UNIVERSE TODAY, March 29 2023 
https://www.universetoday.com/160719/china-hints-at-its-goals-for-a-lunar-base/

学生インターンの見解

上記の記事でも紹介したように、米国や欧州に対抗する目的で中国では国家主導で凄まじいスピードで宇宙開発が進められています。ここでは中国の宇宙ニュースを読む上で知っておくとためになる「嫦娥」「長征」の2つについて解説していきます。

「嫦娥(じょうが)計画」
中国が国家主導で進める月面基地建設に向けた月探査プロジェクトのことです。アルテミス計画同様ミッションは3段階あり「探査」「着陸」「滞在」に分けられています。第一段階の「探査」として、既に月からの試料を持ち帰ることに成功しています。次は宇宙飛行士が月面に着陸する第二段階を目指しています。「嫦娥」は計画の名前でもあり「嫦娥1号」「嫦娥2号」...というように月面に送る探査機の名前としても使われています。「嫦娥」とは中国の神話にでてくる月の仙女の名からきているそうです。日本でいうかぐや姫のような存在でしょうか(月周回衛星「かぐや」が有名ですね)。

「長征(ちょうせい)」
中国で開発された人工衛星打ち上げ用ロケットです。先述の人工衛星だけでなく長征5号Bのようなより大きな型のロケットは宇宙ステーションのモジュールの運搬にも使われます。長征は合計21シリーズあり、打ち上げ目的に合ったシリーズが使用されます。「長征」という名前は20世紀前半の中国で起きた歴史上の出来事からとっているので英語の記事では「Long March」と訳されます。

「嫦娥」や「アルテミス」など宇宙関係のミッション名が月や宙にまつわる神話や伝説からとられるのはよくあるケースで、人々の夢や憧れを反映しています。ここからは個人の感想ですが、こうして愛着の湧くミッション名がつけられるのも、そこで得られるであろう知見が平和的に利用されるのが前提だからこそなのではないかと思います。社会に良いインパクトを与えるものだと自負していないとなかなか神話の神様から名前を付けることはできないのではないのかなと。そういった意味でミッション名は人類の夢・憧れだけでなく研究開発者の方々の決意を表すものなのかもしれません。



今回は「衛星コンステレーション」と「月面探査計画」の2つの宇宙の話題に対して、それぞれ世界の先頭を行くSpaceXの「Starlink」とNASA含めた8か国が協力する「アルテミス計画」、そしてそれらに戦いを挑む「中国」について紹介しました。

これからもTenchijin New Age Blogでは学生インターンがピックアップしたトピックを隔週に渡ってライトに紹介していきます。これをきっかけに、皆様にとってなんとなく目に入っていた宇宙のニュースに対する彩度が上がったら嬉しいです。

天地人へのご質問・記事に関するご感想・記事の内容のリクエスト等ございましたら、info@tenchijin.co.jp までお気軽にお問い合わせください。

(学生インターン 松戸)