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【Jリーグ第34節】FC東京 2-3 川崎

■2022年11月5日(土) 14:00キックオフ
■味の素スタジアム

曇りがちでときおり薄日のさす秋の土曜日。飛田給の駅から味スタにいたるスタジアム通りを歩行者天国にしてキッチンカーなどが出店する「青赤ストリート」が開催されるなど、これまでにないイベントを実施した最終節となった。

今季の総仕上げとして開幕戦で対戦した川崎を味スタに迎える。今季の成長が試される重要な試合。厳しい相手だがホームでの勝利で勝ち点を50の大台に乗せたい。2位の川崎はこの試合に勝ち、首位の横浜が負けると優勝が決まる。目の色を変えてくるはずで相手にとって不足はない。

この試合ではアダイウトンがレアンドロに代わり左ウィングで先発。またバングーナガンデが警告累積で出場停止となり、中村が右SBで先発、長友が左SBにまわった。試合前日に今季限りでの契約満了が発表された林がベンチ入り。

フォーメーション

スウォビィク
中村 木本 森重 長友
塚川 東 松木
渡邊 フェリッピ アダイウトン

前半

ともに強度の高い守備から奪ったボールを動かして敵を崩しゴールをねらいに行く似たスタイルで、互いにコンパクトな中盤で主導権を争うガチマッチになる。拮抗した押し合いだがボールを持ったときには川崎の方がゴールの近くまで行けている印象。

16分には塚川の落としを受けた東からの縦パスを受けたフェリッピがエリア手前からシュートしたが枠外に。強いシュートだったが抑えが効かなかった。

19分、右サイドから敵FWにドリブルで切りこまれ、中央にラスト・パスを出される。これを受けた敵FWがエリア手前からシュート、これがゴール隅に決まり0-1と先制を許してしまう。そこまで崩されたわけではなかったがミドルでやられた。

25分、右寄りで得たFKを松木がけると、ファーの森重が頭で合わせる。これが敵GKにセーブされこぼれたボールをフェリッピがダイレクトでシュートするがバーを越える。結果的に最初の森重がオフサイドの判定となったが見ごたえあった。

29分、塚川から逆サイドに大きく展開されたボールをアダイウトンが追い、飛び出した敵GKよりわずかに早くボールをつついたところをGKに倒される。敵GKは決定的な得点機会の阻止で退場となり東京が数的優位を得る。

ここからは試合の様相がガラっと変わり、自陣で4-4-1のブロックを組む川崎に対し東京がボールを支配し波状攻撃をしかける流れに。なんとか前半の間に同点にしたかったが押しこんでも川崎の守備が堅くなかなかフィニッシュまで持ちこめない。

42分、塚川のゴールライン際からのクロスをアダイウトンがバイシクルで合わせるがゴール横。0-1で前半を終えた。

拮抗した展開から押し負けて先制を許したが、その後アダイウトンの踏ん張りで敵GKを退場に追いこみ数的優位を得た。ドン引きの川崎を敵陣に押しこむなかなか見られない流れになったが追いつけず。カウンターからの失点だけ気をつけて早い時間帯にまず1点ほしい。横浜は先制したものの前半のうちに追いつかれ、川崎は優勝の可能性が現実的に。

後半

後半開始早々の47分、塚川が右サイドから入れたクロスが敵ゴール前でルーズになり混戦に。アダイウトンが至近距離からこれをけりこみゴール。目論見通り早い時間帯に1-1と同点に追いつく。

その後も東京は数的優位を生かして敵陣でボールを動かす。時おり失ったボールから川崎がカウンターをしかけようとするが、起点が低いうえに人数をかけられないので対応できている。

53分、塚川からの縦パスを受けたフェリッピが反転してシュートを放つ。鋭い軌道でボールが飛んだが惜しくもバーをヒット、ゴールにはならなかった。これが決まっていればというキーになるプレーだった。その後も東京が主導権を握りボールを動かしながらチャンスをうかがう。

しかし61分、選手交代で機動性の出た川崎が、東京の自陣でのビルド・アップにハイ・プレスをかける。森重がエリア左でからまれボールを失うと、そこからクロスを入れられる。これをゴール前で流しこまれ失点、1-2と再びリードを許す。恐れずに自陣から組み立てるコンセプトではあるが、失った位置がいかにも最悪だった。

66分、塚川と長友に代えて三田と紺野を投入、紺野は右ウィングに入り、渡邊が左SBにスライド。渡邊がひとりいると本当に重宝する。この布陣変更は最初ちょっとわからなかった。意図としては紺野を入れたいが渡邊もアダイウトンも下げたくないということか。

引き続き東京がボールを握るが川崎がやや高めでプレスするようになる。74分、紺野が右サイドから大きく逆サイドに振ると、走りこんだ渡邊が折り返し、これを中央のアダイウトンが頭で押しこみゴール、2-2と再び同点に追いつく。

ところが直後の75分、右サイドから上げられたクロスにファーで対応しようとした渡邊にボールが当たりそのままゴールに。オウン・ゴールで2-3とみたびリードを許す。これも自陣でのポゼッションにこだわった結果高い位置で敵にボールを渡したところから。

79分、松木と渡邊に代えて安部とレアンドロを投入。時間を使う川崎に対して反撃を試みたが追いつくことはできず、結局2-3で最終戦をホームでの惜敗で終えた。

戦評

先制を許しながらも数的優位を得て後半開始早々に追いついたが、自陣でのミスから勝ち越され、もう一度追いついたもののオウン・ゴールで決勝点をプレゼントして自滅。優勝争いをする川崎と十分渡り合い、勝てた試合だったが前節同様試合運びのつたなさで勝ち点を逃した。

シュート数9-4、CK8-2、ポゼッション62-38と、ひとり多くなってからは完全に東京のゲームであり、川崎から2点をうばったにもかかわらず、それを生かすことができなかった甘さは今季の最後に大きな課題として残ってしまった。

簡単にボールを捨てず、自陣からしっかりビルド・アップするコンセプトのもとでは、時としてミスからボールをさらわれるリスクは常にある。それを怖がらず敵をいなしてプレスをかいくぐり前にボールを運ぶことに取り組んでいるので、2失点めのようにミスが出て失点するシーンも「失敗事例」として出てくるのは当然。

リスク管理のやり方を洗練する必要はあるが、ミス自体は責められないし、最もボール扱いに長けたはずの森重でもこういうミスが出るのだから、これを怖れてボールを捨てる選択肢はない。技術を高めるしかない。

今季の総括は別にやりたいが、アルベル監督のもと、これまでとは異なるコンセプトに挑戦し、苦労はしながらも6位でフィニッシュできたのは、土台を作るシーズンとしては(もっとギリの成績になる可能性もあると思っていただけに)悪くない結果だった。

なにより明確なコンセプトとそれを語る言葉をもった監督のもとで成長を実感しながら進むチームの姿には、結果の出ないときでも納得感があり希望がもてた。来季は今季より要求水準もずっと高まる。今季できたこと、課題として残ったことをしっかり整理してそのうえにさらに積み上げが必要だ。

開幕戦と最終戦を見比べれば、同じ川崎相手になにができたか、成長は明らかだと思う。まだまだ課題は多いが、どうやってゴールに迫るのか、どうやって勝つのかという道筋をチームで共有できるようになったことは間違いなく進歩であり、来季につながるベースを構築できた。

これで全日程を終了、14勝13敗7分で勝ち点49(1試合あたり1.44)、6位でシーズンを終えた。1試合あたりの勝ち点が1.50となる51は死守したかったし、勝てた試合だったがそれを取りこぼした甘さを反省するしかない。この勝ち点で6位は僥倖だ。

評点

[評点はドイツ式(最高1~最低5)]:
スウォビィク(4) 3失点はキツい。どれか1本は止めたかった。
中村(3.5) 裏抜けは効いていた。守備も頼りになった。
木本(3.5) オレ的には今季のMVP。スゴいフィードあった。
森重(4.5) 失点に直結する痛恨のミス。捲土重来を期す。
長友(4) 今イチ消えていたような。代表での活躍を期待。
塚川(4) 気合いの入った古巣対戦。来季も主力の予感。
東(3.5) 今季のMVP次点。東京の顔になってきた。
松木(3.5) ヤバいサイドボレーあった。いつまでいてくれるのか。
渡邊(4) オウンは責められない。アシストあり。
フェリッピ(3.5) 得点の匂いしかしなかったが得点はなかった。
アダイウトン(2.5) 得意のパターンじゃないヤツで2ゴール。
===
紺野(3.5) いいボールを何度もゴール前に入れた。
三田(4) 懸命に走ったがチャンスにからめず。
レアンドロ(-) 時間短し。
安部(-) 時間短し。

なお横浜が勝ったため川崎の優勝はなかった。試合後には森重とアルベル監督からのスピーチがあった。

この試合はチケットが事前に完売で入場者は35,000人弱。アウェイ応援禁止のバックスタンド上層にも川崎サポが大量に潜入しており、ユニこそ着ていないが手拍子とかウザかった。ユニさえ着ていなければいいのか。


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