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もうすぐバレンタイン 料理なんて大嫌いだけど

御年27歳女。
私は、料理が嫌いだ。

最近やっと、自分で認めて、口に出して
言えるようになってきた。

多様性が叫ばれている昨今で、料理は女がするもの、と
言う気はさらさらないし、無意識に彼女に料理の腕を
求めてくる男にはずっと嫌気がさしていたけれど、
そうはいってもできるに越したことはないんじゃないかと。
美人さんで料理ができる人なんかを見ると、柄にもなく
嫉妬したりもしていた。

基本、ポジティブに生きてきたと思う。
新しいことには前向きに挑戦してきた。
だいたい、それなりのところまではいける技量を持っているため、
(器用貧乏っていうんだっけ、こういうの)
逆に壁にぶつかって、努力しないとそれ以上進めないラインに来ると
ぱたっと飽きてしまう。
もとい、諦めてしまう。

料理に関してもそうだ。
1年くらい一人暮らしをしていた経験もあるので、
生活に事足りる程度の料理は作ることができる。
が、そこ止まり。
もっとうまくなりたいとか、美味しく作りたいとかは
基本思わない。
面倒臭いが勝つ。

なんなら食べる才能のほうがあるんだから、って
割り切っていた時期もあった。
誰かと一緒にご飯を食べに行くと、たいてい相手は喜ぶ。
「美味しそうに食べるね〜」って。
特に何も思わないが、相手を喜ばせることができるなら
料理上手な人に作ってもらって、自分は美味しそうにそれを食べ、
お互いwin-winじゃないか。
自分の都合の良いように考えるのが得意。

にしても。
手料理が食べたいと思う男の気持ちも、わからないでもない。
自分にとっても、美味しい料理が自力で作れるのであれば嬉しい。
ちょっとずつできるようになれればな〜とのんびり考えていた矢先の
電撃バレンタイン。

何が電撃なのかと言うと、そんなつもりはなかったが
唐突に長く付き合っていた彼と復縁することになったから。
思い返すと、彼とのバレンタインはだいたい逃げてきた。
期待されていることをひしひしと感じながらも、それに応えられない自分の
プライドが曲げられず、アンパンマンチョコでおどけてみたり、
チョコ以外のプレゼントでごまかしてみたり。
今思うと、ちょっと申し訳なかったかな。
失敗したっていいじゃん。
頑張る気持ちが大事じゃん。
最近の私って素直でかわいい。

頑張ってみた。
クッキーとか生チョコとかならいけるかも。
まだ1月だけど、仕事もあるし
一回練習しておくと失敗が減るかも。
最近の私ってすごい。
今までは絶対そんな面倒なことしなかった。
でも結局練習しておいたほうが楽だったりするんよね。
学んだ。

頑張ったけど、めちゃ疲れた。
やっぱり料理って嫌い。
だって作っている最中、一度も楽しいって感じなかったもん。
うまくいかない。焦り。不安。疲れ。
それだけ。
彼のために作るのに、一度だって彼のこと思い浮かべなかったもん。
才能ないんだ。
わかってたけどショック。
楽しめないって苦痛だもんな。
あーもう無理。疲れた。
クッキーの生地が全然固まらない。
オーブンがうまく作動しない。
弟に直してもらって、とりあえずオーブンに全部突っ込んだ。
もうどうにでもなれ。
べたべたの洗い物に向き合うのなんてへっちゃら。
うまくいかなかったことに比べたら。

なかったことにしたい。
自分の部屋で爪をやする。
爪やすりは良い。
やすればちゃんと爪が短くなっていく。
作業が報われる感じ。
昔からそうだった。
ちゃんと進んでいく作業が好き。
洗い物とか、洗濯物とか。
なくなったときの快感。
料理とか掃除とかはなくならない。
いくら時間を費やしても、自分にとって
満足な形にならないこともある。
それが怖い。

今回もそうだ。
せっかくいろいろ買ってきて、新しいハートの型だって買って、
この勢いならいけるかも!だったのに。
結局できたのは、裏が真っ黒焦げのクッキーだけ。
誰が食べねんねんこんなの。
いっぱい焼いちゃったし。
辛い。

母が帰ってきた。
「このクッキー食べていいー?」
えーだってそれ
「いいけど焦げてるよ?」
見たくもない。
失敗したハートたち。
「んー!!美味しい!」
まさか。
気を遣ってくれてるんだろう。
今はそんな気持ちも素直に喜べない。
かわいくない私登場。
気持ちがくさくさしちゃう。

やけくそでキッチンに行って、一口。
表は真っ白なのに、裏は黒焦げのハートたち。
「、、、美味しいじゃん」
「でしょー?」
「ありだよね」
え、市販のクッキーよりうまくないか!!?
なに、私天才???
いや、単純。
なるほどねー
絶望が、一気に大きな学びに変わる。
そうか、もっと大きなボウルを使えばいいのね。
バターはもうちょっと柔らかくすればいいのね。
裏が焦げた理由はわからないけれど、もう一回やったらうまくいくかも。

不本意に、ちょっとうれしい。
パワーアップした気分。
こうやってみんな、ちょっとずついろんなことをできるように
なっていくのかもしれない。
めっちゃ疲れたけど、料理なんてもう一生やらないって思ったけど、
悪くない。
まだまだ伸びしろだらけの私。

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