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2020年11月21日(土) 晴れ

クラフトビールではなく、クラフトコーラと聞いた時は、頭にクエッションマークがついたが、そんなまだ聴き慣れないクラフトコーラを開発している友人がいる。この前、引越しの手伝いにいったらキッチンには何やら怪しげなスパイスがいくつも棚に並べられていて、理科の実験室みたいだなと思った。その彼が、今日ついに完成(?)したクラフトコーラを薩摩川内市のリバーフロントマルシェというイベントで販売するというので遊びに行くことになっていた。

クラフトコーラを楽しみにしながらも、まずは昼ごはんを食べようとうちから車で10分ほどの西方ルームという海沿いの定食屋さんに立ち寄った。ここへは膝の手術をする前は週に1回、多い時では週に3回は来ていて、もう行きつけといわせてください。はい、行きつけです。

集落の古民家を改築したお店は、目の前に海が広がり、波の音が気持ちよい。いつも笑顔で迎えてくれるお姉さん・のんちゃんはホンワカしていて、お客さんがいない時にはギターを弾いたり、上から読んでも下から読んでも同じになる回文、例えば「田島、記憶無く起きました(お店のfacebookより)」みたいなものをずっと考えているのだそう。少し前までまったくの初心者だったギターは、もう譜面を見ながらだいたいの曲は引けるようになっていたり、クオリティの高い回文が店内に貼られていたりと、どんだけお店暇なんだよーとつっこみたくなる(笑)。

この前はショップカードを作ったといって手渡してくれた。よく見ると厚手の紙に黒ペンで花柄やキャラクターなどのイラストに店の名前や営業時間などが書かれている。こういうものは印刷会社で作るもんだとばかり思っていたので、手作りのあたたかいカードに驚いた。このカードを作るの大変だったんではないですか?と聞くと、ニコニコしながらのぶさんも書いて行ってくださいとペンとカードを渡された。どうやら一枚もらうと一枚ショップカードを書くシステムらしく、その時は私は時間がなくて書けなかったが面白いシステムに笑ってしまった。そんな感じでとても居心地のいい場所だ。ちなみにのんちゃんの作る料理は抜群に美味い。今日は久しぶりに来て焼うどん大盛りを食べた。

ここのお店には近所の子どもたちがよく遊びにきていてその中の一人の少年が大きな声で「のぶくーん」と駆け寄ってきてくれた。この少年は小学5年生でとても人懐っこくて仲良くしてくれる。今日は暇だというので、一緒にクラフトコーラ飲みにいくことになった。黙って連れてったらよろしくないので、行く前に少年のお母さんが働いているお店に顔出して許可をもらった。

独身の私にとって助手席に子どもがいるということだけでも、とても違和感があったが、会場に着くと「お父さんおいしいですよー」「お父さん買って行ってー」「お父さんおつり」「お父さん・・お父さん・・・」と呼ばれて少し先の未来を想像したし、気恥ずかしかったし、フラフラと生きていきた私にはどっしり重たくも感じた言葉だった。

クラフトコーラは下園薩男商店さんがやっている店舗で蝶ネクタイをつけた友人が商品を売っていた。挨拶を済ませ、早速クラフトコーラ2つ注文。飲んでみるとそれはとても渋い大人の味で、もっともっと美味しくしたいと語る友人の夢の詰まった味だった。とても渋い味だから少年には飲めないだろうと思い目をやると「おいしいねー」と笑いながら大きな声で言っていた。手にもってるコーラは全然減ってなかった(笑)。

ぶらっとマルシェをみて回った。少年は「楽しいねー」といっていた。一通り回って、会場を後にした。こういうコロナの中で開催する主催者・お店のスタッフの方々には頭が下がる。今は足踏みでもいいから、こうして歩みを止めないことが大切なんだろうなとも感じた。

帰り道、夕日の頃、マジックアワー、余計きれいに見えた一面のススキに立ち止まった。「きれいだねー」と少年が言った。そういえば、少年はずっと「おいしいねー」「たのしいねー」「きれいだねー」と”ねー”と言っていたことを思い出した。気遣っていたつもりが気遣われていたのだなと思った。

一日お父さんをさせてくれてありがとう少年よ。


写真はリバーフロントマルシェの切り抜き


亀田信暁

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