「分かりやすい」は実は間違い!?

こんにちは。布施川天馬です。

僕はこのnote上で色々なことを紹介してきましたが、その中に「誰かにものを教えているつもりで学習する」というものがありました。
でも、「教えるってどういう風にやればいいの?」と思う人は多いと思います。

せっかくいい勉強法があるのに、それができないなんて勿体無い!
これもいい機会ですから、これから「わかりやすく教える」方法について考えて行きましょう。

「わかりやすい」なら良い?

まず始めに、「分かりやすい教え方」の注意点について考えましょう。
「分かりやすいから絶対に良い」というわけではないのです。

そもそも、わかりやすいとは何を持ってわかりやすいというのでしょうか。
これは、難しい概念や言葉を使用しないということで、ある程度カバーできるのではないかと思います。

もちろん、論理関係などが難しい可能性もあるので、簡単な言葉遣いなら理解も簡単であるとは一概には言い切れないのですが、それでも難解な熟語や概念が理解を妨げているパターンは多いでしょう。

しかし、それでは「わかりやすい」ということは良いことなのでしょうか?
分かりやすさを優先することにより、私たちは何か重要なことを捨ててしまったりはしないのでしょうか?

だって、簡単な言葉にすれば誰でも分かりやすくなるのなら、世の先生方はなるべく簡単な言葉遣いで、誰にでも分かるように説明するはずです。
でも、実際は先生の説明を聞いていても眠くなってしまう(=分からない)ことは多いと思います。

先生方は、「分かりやすい」ということよりも「何か」を優先するからこそ、難解な言葉遣いをしてまで説明を行うのです。
なぜでしょうか。

専門用語の重要性

おそらく、そういった人たちは専門用語を多用しているのでしょう。
一般的に難解であると言われる言葉には次のうちの2パターンがあります。

・用語自体がマイナーである。
・用語の指す概念が理解しがたいものである。

前者の場合は、専門用語的な名詞に多いです。
例えば、僕の学んでいる言語学だと(言語学の中ではかなり初歩的な用語ですが)「音素」や「音節」といったものがあります。
これらは、その語が何を指すのかについてがある程度はっきりしていることが多く、辞書を引くだけで済んでしまいます。
つまり、極端な話をすれば、内容を理解していなくても、「そういうものがあるのだな」と受け入れることさえできれば、その話を理解することに対して全く阻害するものではありません。

Ex.)この効果はビタミンBが作用した結果現れるものだ。
(「ビタミンB」が何であるのか理解しなくても文の意味の理解自体を阻害しない)

後者の場合も、これは大きく見れば前者に含まれますが、違いを挙げるなら、後者の方が複雑な関係性を指すということです。
例えば、僕の学んでいる言語学では「関連性理論」や「トートロジー」などが当てはまるかと思います。
つまり、それぞれの言葉を知っているだけでは意味がなく、その指す概念、内容の意味まで理解しなければそれらの言葉を扱えないようなものを指します。

Ex.)小泉進次郎構文はトートロジーでありながら、日常会話では自然に用いられる。
(「トートロジー」の意味内容を理解しなければ、なぜ「でありながら」と逆接で繋がるのかが理解できない)

ではなぜ理解されない危険があるというのに専門用語を用いるのかといえば、それはその用語がその説明をするために最適化された言葉だからです。

誰しも、なるべく簡素に説明は行いたいものです。
とりわけ難解な内容について、いちいち全てについて噛み砕いていたら時間がいくらあってもたりません。

そもそも専門用語とは、ある特定の状況、事物に対して、それを表す言葉を新たに生成したがために生まれるものです。
そして、その専門用語を使うメリットは、その状況、事柄を限定して指定できるということです。

例えば、先ほどの「音節」について考えると、これは、語についての長さの単位で、モーラより大きく、フットよりも小さいものであるということができます。

モーラ、フットがなんなのかということは置いておいて、ここで大事なのは、その長さを指定するために適切な語は「音節」という言葉以外に存在しないということです。

音節という言葉が指す音の長さの単位を表すために、モーラより大きくてフットより短い〜なんて言っていたらまどろっこしすぎます。
そのような手間を省くために専門用語は使われるのです。

そして、そのような説明を聞く人たちは往々にして、そのような専門用語を理解、使用することが望まれている人たちです。
全く何も知らない、関係がない人たちに専門用語を交えて話をしても理解が得られないことは誰しもが知っています。

ですから、説明者が相当に意地の悪い人である、もしくは自分のレベルが世間一般のレベルであると信じ込んでいるような場合でもない限りは、専門用語を交えての説明がなされた場合には、その用語は理解している前提、もしくは理解して欲しいというメッセージなわけです。

さて、ここで専門用語などを噛み砕いた分かりやすい説明のデメリットについて整理してみましょう。

・いちいち用語を再度説明し直す手間が生じ、説明が冗長になる可能性がある。
・その用語を指す際に、相応しい言葉が他に存在しない。

なお、後者については類義語のような表現で表すことができる場合もありますが、これは厳密には同じ意味ではないことが多いです。
分かりやすさを優先するのであればそのような説明でも理解が得られる場合はありますが、しかし、厳密な話をしているのであれば、そのような説明は誤解の元となるので、避けるべきでしょう。

そのような意味で、分かりやすい説明は間違いのもとであると言えるかもしれません。

今日は、ここまで「分かりやすさ」の中に潜む危険について見てきました。
それでは、どのようにすれば「分かりやすく」説明できるのでしょうか。
それは、また来週見ていくこととしましょう。

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