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遠い夏の日の思い出

#エッセイ
#随筆

結婚する前に付き合っていた
彼がいた。
付き合ってしばらく経った頃、
夏に、私たちカップルと、
彼の友人カップルとで
一台の車に乗り
海水浴に行くことになった。 


場所は日本海、新潟の村上市、
笹川流れに近い海水浴場。

夏の日本海の海水浴場、波が無い。
浮き輪を使って、遊ぶだけでも楽しい。

そのうち、私たちが海に入ると、友人カップルが砂浜で待つ、というスタイルになった。

そして、私たちが海に入るとき、
持って来たウォーターフロートに
私を載せて、彼が引っ張って泳ぐことになった。
彼は泳ぎが得意だと聞かされていた。

こんな感じ。
私はうつ伏せ


ところが、彼はどんどん沖へ行く。

『えっ、えっ、どこまで行くんだ、この人は』

と、私の心の声。

いくらなんでも怖すぎる。

『私、落っこちたら死ぬよね、コレ』

『どうしよう、大丈夫なのか』

『怖いよ、怖いよ』

私の頭の中には、どんどん恐怖心が🫨溢れてくる。

彼は、そんな私の声など聞こえない。

『そろそろ戻ろう』

そのひと言が言えない私。

『この人は自信があるから、私を引っ張ってるんだよね。この人を信じてもいいんだよね』

引きつった笑顔を返しながら
海水浴なぞ、楽しめなくなってきた私。

その後、

彼は砂浜に戻り、私は助かった。
いや、戻って来た。

あの時の恐怖は、いまだに忘れられない。
日帰りだけど、思い出深い旅になった。

それから、しばらくして
友人カップルが別れたと、
彼から聞いた。

とても仲が良く、お似合いのカップルで、結婚間近だと
思っていた私は驚いた。
女性の両親が猛反対だったらしい。

そんな別れ方もあるのかと、
私は悲しかった。

そして、その時の私の彼は夫になった。

思えば、沖まで連れて行かれた、
その行動が、私には

『この人についていこう』と

思わせる、錯覚いやきっかけの
ひとつになったのかもしれない。

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