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【記憶より記録】図書館頼み 2304#2

 すっかり失念していた読書記録。月1,2度の事なのに、タイミングを逸するとモラトリアム状態になってしまうから始末に負えません。
 とかく、仕事のリズムが変わってしまう黄金週間を前にして、想定外の出来事に対する臨戦態勢を整えておく必要もあり、悲しいかな … 読了する本が減る一方といった具合です。がしかし、ここは恥を忍んで4月の読書記録を、遅ればせながら備忘しておきます。(※所定の日限に返却済です。)

1:ニッポンの肉食 -マタギから食肉処理施設まで-
  著者:田中康弘 出版:筑摩書房
著者 田中康弘 氏のマタギに関する作品群を所蔵する身なれば、氏の丁寧で偏りのない(公明正大)印象のする仕事ぶりに好感を持っている。
この本は、新書にもかかわらず、取り扱う内容の風呂敷を大きく広げた分、その密度が懸念されたが、それは私の杞憂であった。
昨今は、メディアが「肉・肉食」を扱う場合、特定の角度から視野が狭窄したような言説(原理主義的とも)を喧伝するプログラムが増えてきているけれど、この本は努めて冷静だ。田中氏は、数多のフィールドワークを通じて獲得した中庸な立場で、経験やデータをバランスよく提示しながら、肉食に関わる現状や実際を分かりやすく書き綴っている。
兼ねてより、極端な言説を最初に提示することで議論を活発化させるという手法が旺盛しているけれど、それが故の弊害も多く散見される。特に成熟していない人間や、偏った思想信条を持つ人間が複数参加する議論においては、アレルギー反応が先に出てしまい、結局は議論が進まず、折り合いがつかないまま時間だけが過ぎるといった具合だ。こうした惨憺たる状況を見るにつけ、自分の立場や思想信条に因らず、まずは実相を多角的かつ丁寧に認識することの重要性が増しているように思われてならない。(※そもそも、結論なんぞ出るわけもないのだから、些少なりとも歩み寄りの姿を見せることで議論自体が無意味ではないことを提示して欲しい。)
そんなことを考えさせられた本でもあった。

2:宮本常一とあるいた昭和の日本 -16- 東日本16 
  監修:田村善次郎 宮本千春 出版:(社)農山漁村文化協会
こちらは、本としてではなく資料として借りてきた。元より、当該ジャンルはライフワーク的な色彩が強過ぎるので、感想にとどまらず感情を書き連ねそうになってしまうので、本稿では自重したい。
今となっては、現地へ赴いたとて得ることが難しい知見(それも文責が確実な資料)を探そうと思うと、こうした本を頼るしかないので本当に重宝している。因みに、此度は「気仙大工」について不足していた部分を補完させていただいた。本当に先達の仕事には助けられるばかりである。

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