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【日常】寄り道 日本再低山を再登頂した日のこと

 仕事と仕事の合間に程良い猶予があって、しかもロケーションが良ければ、それは「 寄り道のタイミング 」と言って差し支えないはず。
 此度は、そんな素敵な条件が整った一日の様子を綴らせて頂きます。
 ※巻末に全体像が分かる地図を載せましたのでご参照下さい。

1:その日の始まりは津波タワーから

 委託業務で向かうことになった、仙台新港に近接する住宅地 … 。
 仙台市にとって「海の玄関」とも言える仙台新港の界隈には、キリンビールを筆頭に、名うての企業が生産・集積の拠点を設けています。こうした様相もまた、港湾エリアの典型と言えるでしょう。

 時刻は午前8時過ぎ。
 工業地帯特有の幅員が広い道路を、いかつい大型車両の合間に挟まりながらひた走り、時間調整のために目的地付近のコンビニへ入りました。
 店舗の駐車場からは、震災後に建設された 津波避難タワー ¹ が見えました。スロープにより建物の階数が分かり難くなっていますが、公共建築物クラスの建物に例えれば、実質3.5階程度の高さになるでしょうか。

皆さんは、どうお感じになりますか?

 振り返ってみれば、仙台新港の界隈へ足を向けなくなってから、かれこれ10年以上経つはずです。もっとも、その北側に連なる七ヶ浜塩竃には公私の用事で訪れていましたので、この界隈の海岸線とは無縁ではなかったのですが、何故か、仙台新港界隈に関しては、ついぞご無沙汰しておりました。
 正に、浦島太郎状態 です。されば、当地での仕事を終えてから、この辺り一帯の変化を眺めてみようと考えたわけです。

脚注1:仙台市では、平成26年度から平成28年度にかけて、東部地域の13カ所に津波避難施設(タワー型6カ所、ビル型5カ所、津波避難屋外階段2カ所)を整備しています。

情報元:仙台市HP

2:過去の地名は何を語る?

 仕事を終えて、七北田川の堤防と仙台新港側に広がる工場地帯の合間に挟まれた住宅地から大通りに出るべく、車をノロノロ運転(送迎バス待ちの園児多し!)していたら、実に芳ばしい名前の公園を見つけました。

 その名も耳取公園みみとりこうえんです。
 しかし、看板の下には白鳥しらとり二丁目」と記されています。
 これは異なことです。一般的に、住宅地内に計画されている公園の名前って、住所にリンクしていることが多いはずです。
 首をかしげたまま考えること暫し。恐らくは耳取みみとり従前の地名であると考え、当該地域が住宅地に変わる段階で、耳取の「取」を「鳥」に転じさせたといった程度の推察しかできませんでした。

公園内には備蓄倉庫も

 とまれ、「耳取」と言えば、今年に入って読んだ、清水克行 著「耳鼻削ぎの日本史」で記されているような血生臭い歴史を想起させます。がしかし、当該地域の場合は全く関係がないと判断しました。

 その理由は、この住宅地が位置する環境(地形)です。 
 殊に、地名として遺っている「耳取」「耳」には、工程差が生じている土地の端部(イメージ的には突出部)という意味があり、そうした土地を切り開いた(開拓・干拓・耕作)した場所を指すことが多いようです。言うなれば、地形・地形的変化を示す言葉ということになりますね。
 ※この地名は、東北を中心に、中部・北陸の一部に遺っているそうです。僕自身は、岩手県と長野県で確認しています。

地蔵菩薩のお堂も掃除が行き届いていました

 そんな現実と推理の間を行き来しながら公園の中を検分していたら、石塔お堂が見えたので、道路側から回り込んで参拝させて頂きました。
 すると、石塔には「白鳥八幡」の文字が。おやおや、先程の「取 → 鳥」の推理は間違っていたようですね(汗笑)。

白鳥八幡神社の石塔

 とまれ、当該地域の正史には触れていないので分かりませんが、心理的な観点から、「耳取」という地名のまま新興住宅地として開発するよりも、古くから当地に鎮座している「白鳥八幡様」のお名前から、字面的にイメージの良い「白鳥」を拝借して住居表示にしたと方が好ましいという意思が働いたとしても、何ら違和感はありません。
 更には、従前の地名を遺すべく、公園の名前に「かつての記憶」を託したであろうこともまた、想像に難くないのです。
 恐らくは、そんなところではないかと … 。
 ※当地の詳細を知る方がいたら是非コメントにて教えて下さい!

3:生物のゆりかご 蒲生干潟 へ

 公園を出てから向かったのが、蒲生干潟がもうひがたと呼ばれる県内屈指の「水鳥の聖地」になります。もっとも、干潟と言えば水鳥だけではないですよね。それこそ ” 数多の生物のゆりかご ” だと言えるでしょう。

七北田川河口を望む

 目の前に広がる雄大な干潟!
 心地良い海風と潮の香。この時ばかりは、旧友と久しぶりに会った様な懐かしい気分になりましたよ。

 七北田川の河口方面に目をやると、護岸上に2,3の人影が … 。手には長い棒!?を持っていますね。そうです、彼らは「釣り人 どこにでもいる説」でお馴染みのアングラー達です。
 更に、仙台新港の方向に目を向けると、バードウォッチャーと思しき人物がリックを背負い、ワサワサと藪を漕いで前進していく姿を発見。
 思い思いに楽しんでいる風が伝わってきて、心が軽くなりました。

仙台新港方面を望む

 震災から12年余。
 自然と人間の営みが混然一体となったエリアの中にあって、この蒲生干潟は、海と陸を柔らかく繋ぐバッファーゾーンとして数多の役割を担っていることが伺われました。
 これからも「宮城県の宝」として大切にしていきたい場所です。

4:日本再低山 日和山 再登頂!

 そして、この干潟の一角に聳えたつのが 日和山ひよりやま です。
 各地に存在する山名なので、分別するために 蒲生日和山がもうひよりやまと呼ばれています。※宮城県内だと、名取市の閖上に日和山(標高6.3m)があります。

 此度の寄り道のメインは、このバーティカルでスティープでディープな山を12年振りに再登頂することにありました。

階段状のグルーヴがルート

 頂上までの道程は厳しいですが、ダイレクトルートなので迷うことはないでしょう。でも、舐めると遭難します。それから、落石には十二分に注意してくださいね。※下山ルートは南東陵を安全に降りて下さい。

登山届は無用

 この蒲生日和山(現標高:3.0m)は、津波で標高が変わってしまい(震災前:標高6.05m)、名実ともに日本最低山(人工の山部門)の栄誉を勝ち取りました。何しろ、かの大阪天保山よりも低いのですから、日本最低山を標榜しても問題ないですよね? 

看板に偽りなし!

 下山後に眺める干潟の景色もまた最高です。
 とにかく、風が気持ち良かった … 。
 「たまには、快闊な場所に身を置くべきだなぁ。」なんて思いましたね。 今度は、嫁さんと一緒にハイキングかなぁ … 。

ダイサギと思しき鳥が二羽

 とにもかくにも、30分足らずの寄り道でしたが、心満たされる時間になりました。これだから寄り道は堪りませんよね。 

大型商業施設から工業地帯そして干潟からのサーフ … カオスそのもの

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