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【記憶より記録】びっくり箱 from 秋田

 先週の日曜日(12月10日)、僕が作ったルアーの面倒をみてもらっている秋田在住のトラウト・アングラー Hさんから贈り物が届きました。 
 一足早いクリスマス・プレゼントを頂戴するという幸運に、軽い酩酊を覚えながら開梱し始めた伝吉小父でしたが・・・顛末はこれ如何に!
 此度は、秋田発の歴史ミステリーにお付き合い頂きましょう。


1:秋田美人の様な伝統工芸品

  段ボールの中には化粧箱がひとつ・・・。 
 その上にHさんのお手紙があったにもかかわらず、僕は好奇心の赴くままに開梱作業を続けました。もうこうなると手は止まりません。

 そして、不思議な程に重い化粧箱の蓋を開けて出てきたのは、桜の名所として知られる角館かくのだて(秋田県仙北市角館町)の伝統工芸品樺細工かばざいく道具箱でした。

 これには感激しました。
 何しろ、僕は樺細工の自然な風合いが大好きで、自宅で使っている茶筒や茶筅、茶托なども樺細工で揃えています。テクスチャーが地味過ぎず、かといって華美過ぎないところが好ましいのです。それこそ、秋田美人にも通じるところがあると思います。

 樺細工桜皮おうひ細工とも呼ばれていて、主に山桜の樹皮から作られており、とても丈夫なので日用使いに適していると感じています。事実、母が買い求めた樺細工の茶筒は、50余年に渡る長期使用に耐えていました(外観上の経年変化を除く機能低下は皆無)。
 これぞ正に「一生もの」ですね。 

 一朝一夕には獲得できない伝統的な技術を礎にしながらも、それらを必要以上に誇ることなく、むしろアノニマスな雰囲気を醸している樺細工。これもまた、日本の伝統工芸品の一角を担う存在だと言えるでしょう。


2:開けてびっくり玉手箱

 道具箱の面構えを一頻り愛でた後、道具箱全体の造りや風情を楽しむべく化粧箱の中から取り出そうとしたら、箱の中で何かが大きく動きました。

 不思議に思って道具箱のふたを開けてビックリ!
 樺細工の道具箱の中には、分厚い古書が入っていたのです。
 想像だにせぬ物が視覚に入ってきたので、不覚にも「うわっ!」と声を出してしまいましたよ。

 ここでようやくHさんの手紙の存在を思い出し、改めて手に取って一読。
 案の定、手紙には贈物の経緯が綴られていました。
 なんでも、ご自宅の蔵を整理している時に発見したとの事。そして、処分するくらいなら、この伝吉めに検分させた方がよろしかろうと言うことで、此度の仕儀とあいなったようです。

 にしても、近年稀に見るドッキリ・レベルでしたよ。もっとも、お手紙を読んでから開梱すれば良かっただけの話ですよね(猛省)。
 何はともあれ、箱の中から出てきた煙を浴びて爺様じさまになっちゃった・・・なんて事にならなくて良かったです。

右下の絵図は三国志の一場面

 それにしても、一瞥して年代物と分かる風体です。全体の傷み具合といい、紐で綴じている装丁(和製本)といい、芳ばしい香りしかしません。
 表紙には「嵯峨埜〇〇 中内」、裏表紙には「葛野群 我嵳 中山」と筆書きされていましたが、これは持ち主の所在か何かを示しているのでしょうか。
 とまれ、細かな検分は仕事を終えてから行うことにして、取り急ぎ御礼のメールを送り、興奮さめやらぬまま仕事に戻る僕なのでした。

 この日の夕刻、予定通り検分を再開。(嫁も次男坊も興味津々)
 ざっと捲ってみたところ、今風(昭和風)に言えば「日本なんでも大百科」といった感じの古書であることが朧気に分かってきましたが、確証を得られる材料を発見することはできませんでした。
 そして、巻末に「校訂 真書太閤記」という印刷を見つけて合点がいきました。そうです、真書太閤記と言えば講談ですよね!

興味深い絵図が沢山!

 落語こそ好んで聴くものの、講談までは掘り下げていない僕ですが、真書太閤記(豊臣秀吉の一代記)という講談ネタは存じ上げています。
 本書は、真書太閤記の概要に合わせて、太閤記を聴く上で必要な情報がまとめられている解説本・ガイド本的な冊子だったのでしょうか。

 とまれ、この物言わぬ古書が、答え合わせに応じてくれるわけもなく、故に僕の推理は正当には程遠いかもしれません。けれども、何某かの判断材料が見つかった事に、喜びと安堵を感じている伝吉小父でした。 
 ※ご存知の方、間違っていたら教えて下さい。情報を請う! 

 念のため、版元と思しき「東京博文館」という社名をグーグル先生で調べてみると、今もなお、博文館新社/博友社として存続していることが分かりました。(1887年/明治20年に創業した東京博文館は、国粋主義的な雑誌を創刊していたらしい。社名は 伊藤博文 由来だとか(笑)。※Wiki調べ)

 本当に楽しくも愉快な時間でした。心急く師走にあって、心地良い感情の起伏を体感することができたように思います。


3:御礼

 Hさん、抑制の効いたみやびを体現したかのような美しい道具箱好奇心を触発させてくれる逸品を贈っていただき有難うございました。久しぶりにドキドキとワクワクが止まりませんでした。
 道具箱は大切に使わせて頂きます。 


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