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The 1975がバンドであることを感じた90分間

最高。震えた。痺れた。完璧。

どの言葉もThe 1975を体験した後の自分の感情を表しているが完璧に当てはまる言葉ではない。
なんだか不思議な感情。

以前ここにも書いたが、
The 1975の2年以上ぶりのライブ再開の場。
The 1975初のSUMMER SONICのヘッドライナー。
The 1975の今までリリースしてきたアルバム4枚目までのMusic For Cars期と来たるNew Eraの狭間の貴重なライブ。

もうこれだけで日本のファンのみならず全世界のThe 1975のファンが注目していることが分かる。
実際SUMMER SONIC(以下、サマソニ)のライブ後は彼らの地元イギリスのメディア中心に各メディアがカムバックショーの様子を伝えた。

ライブから2週間以上経ってしまったが振り返っていく。

開演前に降り出した雨はKing Gnuが作り出した熱を冷ましThe 1975に向かうためにはちょうど良かった。
暗転し焚かれたスモークに白い光があたりモザイク状に拡がる白い世界。
The 1975のサポートでおなじみのサックス奏者JohnとキーボードのJamieが『If You’re Too Shy(Let Me Know)』の音を鳴らす。
そこにThe 1975のメンバー4人が登場。
4人とも最近のアーティスト写真のようなスーツ姿だ。
ボーカルのマシュー・ヒーリーはおもむろに煙草をくわえ火をつけた。
モニターにモノクロで映されたその姿は映画のワンシーンのようで超クール。痺れた。
照明の当て方、モニターに映る彼の角度、そしてマシューの仕草は完璧で今後一生語り継がれるオープニングになった。

序盤に『If You’re Too Shy(Let Me Know)』、『Love Me』、『Chocolate』とヒット曲を惜しげもなく披露したあたりでみんな気付いたが、この日はベスト盤のようなセットリストだった。
『Love Me』でマシューが“We are back !!”と高らかに叫んだのは本当にかっこよかった。

そしてその後に披露された曲は『Me & You Together Song』。
この曲は自分が学生時代に聞いていたようなサウンドの曲でありイントロが鳴るとすぐあの頃に戻ってしまう。
4枚目のアルバムに収録されているがツアーが中止になったため日本では初お披露目。
聞けて嬉しかったがこの曲の時にトラブルが発生していて音がおかしなことになっていたのが少し残念だった。
ただ今年のフジロックでのVampire Weekendのように何度もトラブルを繰り返しメンバーがいったん掃けるようなことにはならなくてよかった。
あとから思ったことだが、今回のThe 1975のステージは90分通して見る必要があるまさに映画のようなステージだったので途中で止まったら成立しなかったと思う。

『TOOTIMETOOTIMETOOTIME』のイントロで暗くなったバックモニターの淵を強くて白い光がなぞるような動きで彼らを象徴する縦長のスクエアを作っていたのも印象的『It’s Not Living(If It’s Not With You)』

序盤のブロックが終了しマシューはスタジアムに集まった多くの人を眺め人の多さに驚き、バンド活動最大クレイジーな出来事と語った。
また煙草を吸う。
そして今回は2019年の反省を活かしたのかお酒を魔法瓶に入れてお猪口に移し少しずつ飲んでいた。笑 (2019年は日本酒を瓶ごと持ってきて飲んでかなり大変なことになっていた。)

そして“favorite song”と言い始まった『Paris』で優しく歌い、続いた10月リリース予定の新作に収録の『Happiness』がライブ初披露されマシューはノリノリで踊りながら歌っていた。
後半のマシューの歌とバンドメンバーのコーラスが交互に入るパートが上手く決まってマシューは凄く満足げな表情をしていた.
このパートは超シンプルな構造なのにすごく気持ちいい。
今後おそらくお客さんも歌うようになるのでは。

そして1stアルバム収録の『Robbers』、2ndアルバム収録の『A Change Of Heart』と名曲を立て続けて披露し、まだライブ当日には配信もされていなかった新曲『I’m In Love With You』が東京で世界初披露された。
すごくポップでキャッチーな曲で『Happiness』に続いてバンドメンバーのコーラスが特徴で1回聞いただけですぐみんな口ずさめる耳馴染みの良い曲。

ライブ定番の名曲『Somebody Else』では雲の隙間から出てくる太陽光のような白い光が何層にもなってこちらに向かってきていたのが印象的。
『Love It If We Made It』ではバックモニターが暗くなりメンバーに当てた光の影をモニターに映す演出は本当に痺れた。

『People』を挟み披露された超名曲『I Always Wanna Die(Sometimes)』。
2019年には空がオレンジ色になった夕方に披露され最高だったが、この日は夜の真っ暗なステージに白い光がメンバーを照らす中披露されこれまたクールで良かった。
後から分かったことだが、翌日の大阪、翌週のReading & Leeds Fes.では披露されず『Tonight (I Wish I Was Your Boy)』が披露されたようです。

そしてみんなお待ちかねの『The Sound』では雨が降る中オーディエンスが飛び跳ねている様子が美しかった。
『The Sound』で終わることが多い彼らだが今回が違った。

その後、バンドのエモーションが爆発する『Sex』とライブの序盤で披露されることの多いポップでポジティブな『Give Yourself A Try』でカムバックショーの最後を締めくくった。

全世界が注目する彼らのカムバックショーは今までのカラフルな映像演出、派手はステージセットではなく、映像演出はほぼなくメンバーがモノクロで映されるのみ。
そしてステージセットも超シンプル。
ただ照明とモニターにメンバーをどう映すかということには強いこだわりがあるように感じた。
先にも書いたが、オープニングのマシューの姿を映したモニターの映像を見て立ち位置まで決まっているんじゃないかと思ってしまうくらい完璧だった。
白い光での照明演出はシンプルだが緻密に練られており、メンバーに当てる光の当て方まで拘りを感じた。
またモニターの映し方も何か計算されているんじゃないかと思うくらい練られていた。
やっていることはまさに映画だった。
そして既存のアルバムのツアーでもない、そして新作もリリースはこれから、という間のライブということもあってセットリストはオールタイムベストのようなセットリスト。
まさにThe 1975のヒストリーを体感する映画だった。

ライブを見ていて印象的だったのが2019年の時よりメンバー全員が楽しそうだったことだ。
ギターのアダムは時より激しい動きでギターを弾き、ベースのロスとドラムのジョージは笑顔になっているシーンも映され4人で音楽をやっていることを心から楽しんでいる様子だった。
彼らの4枚目のアルバム『Notes on a Conditional Form』に最後に収録された『Guys』は今回披露されなかったがこの曲にある“The moment that we started a band was the best thing”を改めてステージ上で感じているようなそんなメンバーの表情だった。
今回オールタイムベストのようなセットリストと書いたが打ち込みとかではなくメンバーみんながそれぞれ楽器をそこで演奏し鳴らすバンドサウンドを活かした曲が多く選出されたのも『Guys』のリリックから繋がっているのかもしれない。
そして来たる新作『Being Funny in a Foreign Language』に収録され現在既に配信されている曲はそれぞれの楽器の音が活かされているし、バンドメンバーのコーラスが曲を印象付けている。

Music For Cars期の最後を飾った作品の『Guys』で歌ったことを休止期間を経て新章に突入するThe 1975はこのタイミングで改めてこの4人でバンドをやれていることを楽しもうという時期に入ったのかもしれない。
新作はマシューとその他の3人ではなく、マシュー、アダム、ロス、ジョージでThe 1975であるということを改めて示す作品になりそう。

とりあえず今は新作を楽しみにしつつ、今年のSUMMER SONICのステージにしっかり立ってくれ素晴らしいパフォーマンスを見せてくれてありがとう、と言いたい。


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