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面接の位置付けが、変わりつつある

ご覧いただきありがとうございます。2021年3月から日経COMEMOでキーオピニオンリーダー(KOL)として執筆させていただく寺口と申します。

普段はワンキャリアでPR Directorとして、仕事選びの透明化と、採用DXの推進を行っています。今後、個人の仕事選びや、企業の採用に関してリアルな情報をお届けしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

二本目は、最近の潮流であるDXについて。採用でもデータやデジタル技術を活用して差別化しようという流れがありますが、手段であるはずの業務効率化やクラウドの導入が目的化して、肝心の差別化のためのUXについてあまり触れられていないので、ここではDXにおけるUX改善の重要性について解説します。

AI面接導入は、判断精度向上か、UX改善か

AI面接の導入に関する記事が連日あがっている。

様々な領域でDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれているが、新卒採用の領域は特にDXのポテンシャルがあると言われている。

DXはしばしば複雑な文脈で語られているが、要はデータやデジタル技術を活用して、抜本的な業務変革を起こし、顧客(ステークホルダー)体験を向上させることによってビジネス上の差別化を図ろうというものだ。

しかし、この顧客(ステークホルダー)体験というものが、新卒採用領域ではなおざりにされてきて、改善が進まなかった。理由は3つある。

①面接は「企業が学生をジャッジするの場」という認識が強かったこと。
②密室で行われており周囲からのフィードバックがなかったこと。
③学生からのフィードバックがなかったこと。

面接の位置付けは変わりつつある

進む少子化により、新卒採用の難易度は急速に高まっている。

上記の調査では、3分の1の企業が学生を1人も採用できていないというデータが出ている。しばしばその原因は「知名度」によるもので片付けられているが、実は採用時における候補者体験の毀損の影響も少なくない。

情報の流通構造の変化により、個人の声の影響力が高まっている昨今、候補者体験の毀損は、候補者が選考を辞退する原因になるだけでなく、企業にとって広報的なリスクの要因にもなっている。

就活を通じて企業を好きになった経験があるか、嫌いになった経験があるか、と聞いたところ、11.7%が「印象が変わった経験はない」と回答している。約9割の就活生が就活を通じて企業を評価していることが分かった。また、好きになった企業、嫌いになった企業に対して行動を起こしたかという質問に対しては、好きになった企業に対しては4人に3人が、嫌いになった企業に対しては2人に1人が何かしらの行動を起こしていたことがわかった。

このように、少子化や、情報流通構造の変化、Z世代のシェア文化などにより、企業が学生を評価する場としてのクローズドな空間は、相互評価の場になりつつある。しかし、多くの企業の面接は、依然として、一方的な評価の場という前提のもとに設定されているため、面接における候補者体験の毀損によるクチコミは後を絶たない。

AI面接でも強調される候補者体験

上記で取り上げた記事においても、面接における候補者体験の毀損リスクとその重要性について強調されている。

不適切な面接は企業価値を大きく傷つける問題だ。学生の内面を引き出せないうえ、悪評は交流サイトですぐに共有される。野沢比日樹社長は「ウソがつけないように圧迫面接をする企業もあったが、面接体験の観点から言えば最悪」と話す。
米グーグルは選考の過程で起きることを「応募者体験」と名付けて重視。求める人材像を適切に伝え、迅速に情報共有するよう努めるとしている。同社によると、不採用者でも「友人にグーグルへの応募を勧めるだろう」と回答した人が8割にのぼるという。
学生は面接の合否しか知らされることがなく、なにが悪かったのか省みることが難しかった。

採用DXの定量的な成果は候補者体験の向上

採用DXを進める上で、業務効率化のためのオンライン化ツールの導入について話されていることが多いが、「何のためのDXなのか」「DXの成果を何で測るか」ということを明らかにしておくことが重要だ。

データやデジタル技術を活用することによって、業務効率を向上させた際に、採用力向上につながりやすく、計測しやすい成果としてUX(候補者体験)の改善がある。

他の事業領域と同様に、採用領域においてもUX改善の重要性が挙げられ始めているものの、依然としてマッチングアルゴリズムの最適化や、業務効率改善「だけ」に焦点が当たっているケースが多い。

新卒採用領域においても、UX(候補者体験)や、ユーザー(候補者)視点というワードが、今後、採用DXと共に語られることを願っている。


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