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水晶体に映る記憶 vol.1 | 桜の散る頃に起きた、魔法とやら

記念すべき、定期購読マガジン「水晶体に映る記憶」の一つ目の記事です。
このマガジンでは、「今日しか感じ取れないかもしれない有限な感性で、日々の感情や記憶の形を残す」というテーマで文章を書いていきます。週に1度更新します。




四季のある国に生まれたからか、春という季節に影響されて文章を書くことが多くなった。今回の文章もそんな感じ。春という季節は、人を優しくさせるんだなという言葉を残して、今春への思いをまとめたいと思う。

先日、桜の木に囲まれた場所で、知り合いの屋台のお店の手伝いをしていた。と言っても、もう桜の見頃はすぎてしまって、強い風の日だったから、桜の花びらは落ちている方が多かったと思う。それでもお花見に訪れる人はまさに老若男女で、とにかくいろんな人がお店にやってきた。

そんな中、年配の男性から注文を受ける。着ている服に〇〇酒蔵、と書いてあるから、おそらくどこかの酒蔵の店主さんだ。個人的に、職人さんといえば、寡黙で真面目な方が多いイメージを抱いていたのと、マスク越しで表情がわからないのも相まって、少々緊張しながら接客をしていた。しかし、そんな緊張も、次の瞬間一気に解けてしまう。

なんと、その方の髪の毛に桜の花びらがついていたのだ……!!!

私はその方の頭部に思わず見入ってしまった。不思議なもので、人の髪の毛に桜の花びらというキュートなものが乗っていると、その人が春の妖精のように思えてくるのである。魔法か。おまけに注文は、クリームの乗った甘い飲み物…!!!少し恥ずかしそうに注文をしてくださる感じも、第一印象とのギャップで、マスクの中で微笑みながら商品をお渡しした。

その後も次々も人がやってくる。そして、三人に一人は、頭に花びらが付いているからまた微笑ましくなる。いつしかお客さんの頭ばかりに目がいくようになり、花びらがついていること期待するようになってしまった。笑

この一件から気づいたのは、わたしが知らず知らずのうちに先入観を持って人を見てしまってたことと、桜の花びらはそんな先入観すら無くしてしまう最強アイテムということである。少し飛躍して考えたら、どんな人にも第一印象ではわからないキュートな側面が隠れている、とも思えて、なんだかすごく人が愛おしく思えてきた日でもあった。

このことから、すっかり人間観察が楽しくなってしまったわたしは、春の風に吹かれながら通り過ぎて行く人達をぼーっと見ていた。

そしてふと、気になったことがある。
それは、みんな服の色味が似ているということである。

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