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子供の名前、「択が多すぎる」問題

おかげさまで先日子どもが生まれまして絶賛育休中なんですが(別にヒマだからnoteばっかり書いてるわけではない)、出産まわりで1つだけものすごく苦労したことがあったので書き留めておきます。

何かというと、とにかく名前が決まらなかった! 赤ちゃんの名前というのは出生後14日以内に届け出を出さないといけないんだけど、まあ周りが心配するくらいギリギリまで粘ってしまった。そういえば自分が本名でずっと書いてるのも、単純にいいペンネームが浮かばなかったからなんですよね……(ちなみにライター活動のめっちゃ初期、一瞬だけカタカナで「イケヤハヤト」って名前で書いてたことがあったけど、あのまま使い続けていなくて本当によかった)。

――で、なんでこんなに悩むか考えた結果、「択が多すぎる」からだと気づいたわけです。


三択くらいだったらなんとかなるが……

だって、子どもの名前なんてほぼ無限に選択肢があるわけで、その中からベストな1つを選ぶのって……難しすぎない? もっと気軽に付けちゃう人もいるとは思うんだけど、なんせ赤ちゃんにとっては一生ついてまわるものだし、自分にしたってうっかり中途半端な名前をつけちゃったりしたら、この先ずっと子どもの顔を見るたびに「ああ、やっぱり別の名前にしておけば……」とか後悔がよぎることになるわけですよ。

三択くらいだったらまだなんとかなるので、いっそ子どもが生まれたらその瞬間に神様とかがパァァ……って降りてきて、「この3つのどれかから選べ」とか言ってムリヤリ決めさせるシステムだったらよかったのに――などと一時は本気で思ったりもしました。いやまあそれで「ボロンゴ」「ゲレゲレ」「トンヌラ」の三択とかだったらイヤはイヤですけど、国民全員それで名前が決まるんだったら諦めもつく。池谷トンヌラ案外馴染むかもしれないし。

それと困った理由の一つが性別で、うちは男の子だったんだけど、もともと「かわいくて、響きのやわらかい名前にしたい」という希望があったから、自然と女の子っぽい名前ばかり考えちゃってたんですよね。ところが男の子だったのでほとんどがボツになってしまった。

ちなみに「響き」にこだわったのは、昔読んださくらももこの『そういうふうにできている』のこの一節が忘れられなかったから。

名前の画数による姓名判断以外に、私は名前のもつ“音(おん)”の影響という事を前から考えていた。名前の音の響きというものは、長い間呼ばれ続けることによってその人全体に沁み込んでゆき、人格にも大きな影響を与えるのではないかと思うのだ。(中略)
例えば、カチ山カチ子という名前には“固い”“カチカチしている”といったイメージがある。そうするとカチ山カチ子さんは、本当に固くカチカチしたところのある人だったり、ガサ田ガサ男という人は本当にガサツ者だったりするというような事は実際あると思う。
「そういうふうにできている」文庫版176-178P

これは確かにそのとおりだなあ、とずっと思っていて、もし自分の子どもに名前をつけるなら、なるべくやわらかい、ほわんとした響きの名前にしよう、と決めていたのだった。

それから他にも、細かな希望を言えばこのあたりも盛り込みたかった。

・かっこよすぎないこと(名前がカッコよすぎると無駄に人生のハードルが上がるという持論)
・あまりキラキラしていない。かといってシワシワでもない
・漢字で書いた時、読み方がパッと分かる
・夫婦が好きなもの(ゲーム、ジョジョ、銭湯、猫など)にちなんでいるとなおよし
・令和には絡めなくてよい(他の子とかぶりそうだし)

――はい、じゃあ以上を踏まえて、これらを全部満たす名前を考えてください! 回答は1回きりです! うっかりヘンな名前を付けても後から変更はできません! ……ごめん、僕には無理です。

あと残る希望としては、実際生まれた子どもの顔を見たら何かひらめくのでは? というのもあったんだけど、まあそんな都合のいいことが起こるわけもなく、とうとうもうすぐ提出期限、というところまで引っ張ってしまったのでした。いつもはこんなに優柔不断じゃないんだけどな~。

最後は編集部のチャットで助けを求めた

で、結局どうしたかというと、開き直って「他の人に助けを求めた」のでした。実は生まれる三カ月前くらいから「さすがにやばい」と危機感を覚え、会う人会う人に「なんかいい名前ないですか」と聞きまくっていたんだけど、それでも足りず最後は編集部チャットに「突然ですが副編集長からのお願いです」というスレッドをたてて、編集部メンバーから名前候補を募った。

自分の子どもの名前なのにそれでいいんか、という気もしないではないが、仕事でもプライベートでも「頼れるところはどんどん人に頼る」というのが自分のやり方なので、むしろ子どもの将来がかかっているからこそ、使えるカードは全部使うべきと言えましょう。

「自分に何が出来て、何が出来ないのか分かるようになりゃ、一人前だな」(ふしぎの海のナディア、17話より)

結果的にはこれがうまくいって、一時はちょっとした大喜利状態になったものの、それでもちゃんと良い名前候補もかなり出てきてくれて、そのうちの1つをありがたく頂戴し、めでたく名前決定の運びとなったのでした。焦って池谷トンヌラにしなくて本当によかった。

結局どんな名前になったのかというと、予期せず自分でもビックリするくらいナイスな名前になってしまったので(自画自賛)、ホントは発表したくて仕方ないくらいなんですけど、子どもの個人情報なのでさすがにそれはやめておきます。とりあえず、響きがかわいくて、かっこよすぎず、キラキラもシワシワもしておらず、書きやすく読みやすく、さらに僕が好きなゲーム・風呂・猫にもちょっとずつちなんでいるという、我ながらかなり理想的な名前になったと思っています。ちなみに最終的に採用されたのは加藤編集長の案でした(そのままは使わず、ちょっとだけアレンジさせてもらった)。

「誰かにつけてもらう」のも悪くない

しかしあらためて振り返ってみて、自分の場合やっぱり「選択肢が多すぎる」かつ「ミスした時の取り返しがつかない」というのが極端に苦手なんだな、というのを痛感しました……。ゲームでも自由度高すぎる(正解が多すぎる)とかえってダメで、ちょっと窮屈なルールの中であれこれ工夫する方が好きだったりするしな~。とにかく苦手なのが、RPGとかでレベルアップした時に自由にステータスを割り振れるやつ。

あとこれは自分だけかもしれないけど、不思議と「自分で考えた名前」より「誰かに考えてもらった名前」の方が受け入れやすく、愛着も沸きやすいのはなんでですかね。最初に冗談で書いた「神様が三択を迫る」システム、実際あったらけっこうガチで需要あるんじゃないか。ドラクエVのキラーパンサーも、自分で名前をつけるんじゃなくて「ビアンカの案から選ぶ」形だったけど、堀井さんのことだからもしかしたらそこまで考えてああしてたのかもしれない。でもやっぱりサマルの名前で「トンヌラ」はどうかなあ。

そういえばTwitterで教えてもらったんですが、京都の晴明神社では「命名依頼」ができるそうで、お願いすると神社側でよさげな候補をいくつか挙げてくれるらしいですね。まんまじゃん! 2人目の名付けでもし困ったらホントに使ってみようかな……。

では、最後に編集部メンバーが考えてくれた名前候補を一部お見せして終わりにしたいと思います。

池谷 穂湾(ほわん)
池谷 笑多(しょうた)
池谷 薫(かおる)
池谷 円(つぶら)
池谷 斗飛(トピ)
池谷 にとり(イケア+ニトリ)
池谷 けい(回文)
池谷 ドットコム
池谷 あくあ(僕が好きな東中野の銭湯)
池谷 リュウ/ケン/ゴウキ(ストIIから)
池谷 一八/平八(鉄拳から)
池谷 呂布/董卓/仲達(三国志から)
池谷 飛呂彦/露伴/仗助/康一/初流乃(ジョジョから)
池谷 茂/聡/智(ゲームクリエイターから)
池谷 七六五(なむこ)
池谷 二五六(にごろ/8ビットにちなんで)
池谷 ニ三六P(はどうけん)/六二三P(しょうりゅうけん)
池谷 雷電(イケア本社がオランダのライデンにあるから)

……お前ら……人んちの子どもだと思って……。

個人的には、8ビットにちなんで「池谷ニ五六(にごろ)」はわりとお気に入りだったんですが、NIGORO(LA-MULANAの開発チーム)の人たちの顔がモロに浮かぶという理由で惜しくも却下に。

まあどれもひどかったんだが、あえてワーストを選ぶとしたら、

「そうだ、池谷にとりにしましょう! イケアとニトリですよ! どうですか!?」

――と言い放った青柳さん(@ao8l22)さんのドヤ顔が一番ひどかったと思います。

おしまい。

赤ちゃんのおむつ代にします。