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適当人間
2022年2月6日 09:56
零れ落ちる熱すらも落とさぬように、掬い上げるように、抱き止めておきたい。いつも、そう思っていた。彼女を抱く時は、より一層壊さぬように、細心の注意を払った。けれど、その注意深さから、彼女はするりと抜け出して、遠く離れていったのだ。いや、きっと、俺が逃してしまったのだ。―――――俺の家は、祖父も父親も叔父も3つ上のいとこも警察官で、長男の俺だってそうなるべきだと言われ続けてきた。