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オーストラリアで初めて泣いた日

夫婦には、絶対に逃してはいけない“タイミング”がある。相手にとっては取るに足らないことであっても、自分にとっては、”今”なんだ―。


今日は、私がオーストラリアで初めて涙を流した話をしたい。

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オーストラリアに来て数ヶ月。2週間のホテル隔離の後、怒涛の家探し、引越、保育園・学校関係の手続きを済ませた。

ただ、長男の学校は時期の関係ですぐには入れず、しばらく家庭保育の日々が続いた。


私は疲れていた。

日本だったら年中で、この時期は同じ年の皆と楽しく、刺激のある日々を過ごしていたはずだ。

でも、異国の地で、家庭保育が続く。コロナの休校期間も合わせると、この1年の半分以上家庭保育をしているのではないか―。

5歳といういろんなことを吸収し、成長する時期。だからこそ、家庭保育でも、それなりのことをしてあげなくてはという思いがあった。

でも、異国の地で、友達もいない中、接するのは自分だけ。

夫も仕事に慣れていないのか、帰宅は相変わらず遅い。母子3人の時間が続く―。


そんなある日、私は朝から頭痛と間接痛を感じた。

「ちょっと体調悪いねんけど、今日早く帰ってこれそう?」

答えを聞く前から返事が空耳で聞こえてきそうだったが、一応聞いてみた。

「今日は、会議詰まってるし、ちょっと難しいなぁ」

予想通りの答え。まぁ、家庭保育だし、何とでもなるか―。


午前中、近所を散歩させようと連れ出そうとしたが、朝から35度超えの真夏日。
オーストラリアの紫外線は刺さるように痛い。

「今日はママしんどくて、散歩無理そうやわ。ごめんね」と言い、家に帰る。

「ちょっとママ体調悪いから寝てくるね」

布団にくるまって寝ていると、どんどん子供達がお見舞いごっこを始め、私の周りに果物がたくさん積まれていた。
心配してくれてありがとう。

昼は冷やしうどんを作り、熱を測ると39度。
頭も割れそうなほど痛く、体もだるい。大の大人がたかが風邪で涙が出そうなくらいしんどかった。
テレビに飽きた2歳児は私の上に乗っかってくる。

状況を夫に伝える。
「思いのほかしんどくて。少しでも早く帰ってこれたら嬉しい。」

ただ、その返事はなかった。既読スルーだった。


出会ってからもう10年は経ってるので、分かっている。
夫は、相手に期待させるようなことを言って裏切ることをしたくないタイプ。
だから、確実なことしか言わない。
何より、今日は返事をする間もないほど忙しいのだろう。朝言っていたじゃないか。


でも、私は今、涙が出そうなくらいしんどいのだ。限界なのだ。

日本だったらすぐに病院に行って、薬をもらうだろう。
でもここはオーストラリア。日本語の医療センターもあるが、当日はいっぱいとのことだった。
何より、子供2人を連れて公共交通機関に乗っていく元気がない。

日本だったら実母に来てもらって、子供の世話を見てもらうだろう。

日本だったら宅配を頼んで、子供達のご飯を適当に済ましたかな。
今は英語の説明を読み、ウーバーの登録をする元気すらない。

呆れるほどに、何の解決にもならない「if」を永遠に繰り返す。
高熱とPMSも相まって、もう思考回路はショート寸前。


そんなとき、友達にLINEをした。

「高熱でしんどい。夫は帰ってこない。泣きたい。」
こんな要旨のことをつらつら長文で書いた。

すると友達はすぐに返事をくれた。

「ありえんやろ。今帰ってこんくていつ帰ってくるねん。海外でのワンオペほんまによく頑張ってるで。もう十分やん。母子で日本帰っておいで。」


関西弁で憤り、そして包み込むような友達の優しい言葉を見た瞬間、私は涙が止まらなくなった。

一度決壊すると、もう涙は留まることを知らず、熱で火照った頬の上をひたすらに流れた。

「ああ、私はこの言葉が欲しかったんだ。」


ひとしきり泣いたところですっきりした。
夫は結局その日、寝かしつけの直前の19時半頃帰宅した。

その頃には私の体調は少し良くなっていて、私の"タイミング"は終わっていた。


その後、私がどうして欲しかったか、日頃のしんどさなどを話し合った。もちろん理解はしてくれた。解決策も考えてくれた。

でも、私は高熱の中、子供の世話も見て、もう限界を迎えていたあのときに、夫に帰ってきてほしかった。
帰ってこれなかったとしても、せめてパートナーとして夫の労わりの言葉が欲しかった。

その代わりに、私を受け止め、労わってくれたのは友達だった。

その友達への恩は一生忘れないと思う。



今、もし同じ状況になったとしても、あのときのような涙は流さないとは思う。

高熱のしんどさと、海外生活始まったばかりの緊張感と、長期間に及ぶ幼児2人の家庭保育による心身の疲労感と、海外でのワンオペ育児の孤独感と、生理前のホルモンバランスの乱れと―。
複数のドーナツの穴が揃い、私の感情がその穴を突き抜け、爆発してしまったのだと今となっては思う。

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世界中の、ワンオペ育児で頑張っている配偶者を持つ人に伝えたい。

ワンオペは悪でしかない。
まずは物理的にワンオペを阻止すべく、対策を考えてほしい。
どうしてもワンオペになるなら、せめても精神的にワンオペにさせないよう、徹底的に労わり、配慮してあげてほしい。


そして、繰り返し伝えたい。

夫婦には、逃してはいけない”タイミング”がある。
特に、妊娠中・産後・体調不良時。
あなたにとっては”今”じゃなくても、妻にとっては”今”しかないこともある。





普段はブログを書いています。
駐在妻の孤独」「日本に帰りたいと思ったときにすべきこと」など、またお時間あれば読んでいただければ嬉しいです。


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