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東大発AIベンチャー創業CTOが語る「スタートアップのしくじり談」 ガオトークvol3 レポート

東大発AIベンチャーとして急成長中(自社AIプロダクトであるAnewsは現在1,500社が活用中)のストックマーク株式会社のCTOを務める有馬さん (@kosukearima) に特別ゲストとして創業期の振り返りトークのレポート記事です。ガオトークVol3 イベントURLはこちら

ストックマーク社は創業から3年半くらい経つスタートアップです、1年前時点では10名ちょっとだった人数から急成長し、現在社員54名。東大卒メンバーを中心にしたエンジニア陣をマネージメントしながらAIプロダクト開発をリードしている創業者兼CTOの有馬さんの生々しいスタートアップの体験談を語っていただきました。

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ストックマーク社はAWSとディープラーニングを日本トップレベルで活用しているテックスタートアップ

ストックマーク社はAWS Lambda 1,000台以上、月間2億秒以上活用しており、日本有数のAWSサーバーレスの活用を行っています。AWS賞も受賞経験があり、技術スタックにかなり力を入れています。

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ストックマーク社のサービス紹介の後、有馬さんからはよくスタートアップの記事などでは語られがちな成功論についてではなく、あえてスタートアップの創業期からグロース期での失敗談についてリアルなご自身の経験を交えて語っていただきました。

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アイデア期のしくじり1 - ロジカルシンキングをすると起業できない問題

外部的には東大発のAIベンチャーとかAWS賞とか華々しい功績があるように思えますが、実はタコス屋を始めるアイデアから始まりました笑

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ロジカルに考えるとタコス屋のビジネスチャンスは様々な軸からの評価としては高かったためそれが一番の起業アイデアとして取り組みました。実際に少し進めてみて「これって本当にやりたいんだっけ」、と考えるようになりピボットをした経緯があります。

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ロジカルシンキングによるアイデア選定はどうしても勝てる領域つまりニッチな領域になってしまいます。ピボットした先はAI関連、やりたい領域だったが勝ち筋が見えない状態でスタートするような状況でしたが、後に事業は伸びました。そこで学んだのはロジカルシンキングで起業アイデアの選定を行ってもうまくいかない、という教訓でした。

アイデア期のしくじり2 - VCにボロクソに言われる問題

これまで大学も褒められて育った創業メンバー達、創業当時VCを回ってはボロクソ言われていました。何度も回った結果、たまたまVCのコワーキングスペースの審査に通り、この出来事がきっかけでご自身が当時の会社を退職し、本格的にこの事業に力を入れようになりました。

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プロトタイプ期のしくじり1 - すごい勢いで貯金がなくなる問題

初期のプロダクト開発を進めて資金調達に動いたところ、割りの悪い出資の提案が多く、当時は感情的に投資を拒否していました。当然、出資もなくマネタイズ前の状況なので、貯金がどんどん減っていく経験をします。

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節約のためにはシャワーの温度も調整しました。ただ、ひたすら「Eat->Sleep->Code」を繰り返し続ける日々を過ごします。

プロトタイプ期のしくじり2 - 開発領域デカすぎ問題

あまりにも作らなくてはならない項目が多くなりすぎて絶望する場面も多く経験しています。AIプロダクトには必要な技術要素が多く、とてもじゃないけど数名の開発チームでは実現できないと思いました。

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そのような暗闇を目の前にした中、とにかく全力で頑張っていると、なぜか大企業の内定を辞退してこんな創業期のスタートアップを給与なしで手伝ってくれるメンバーが現れ、初期メンバーが揃ってきました。(実はこの記事の筆者 @tejitak も以前お手伝いさせていただきました笑)

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お給料なしや徹夜もしながら手伝ってくれたメンバーにありがとうと言うと、本人から逆に「ありがとう」と伝えられ、スタートアップをやっている実感を感じたと共に、この事業を成功してやるという気持ちも芽生えました。

PMF期のしくじり1 - 機能作りすぎ、サグラダファミリア問題

BtoCアプリとして数万ユーザーを超えましたが、キャッシュポイントに苦しみ、需要のある企業向けのサービスとしてBtoBにピボットしました。そこからマネタイズに成功します。

実際に企業のお客様がつくと、お客様が欲しがる些細な機能にも応えていくことで、保守の工数が上がり、ボディブローのように開発スピードはダウンし始めます。創業者にエンジニアがいるとありがちな「機能を盛り込みすぎる」傾向に。

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学びとしては、リーンスタートアップでMVP最小プロダクトで顧客価値を仮説検証を行うべきだったと反省。スタートアップの初期では外見はテクノロジーと謳っても、中身はマニュアルでも良いくらいだと思っています。ストックマーク社も実は当時AIによるニュースの配信も一部人力で行っていました笑

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LinkedInの創業者も言っているように、公開して恥ずかしいくらいのサービスで良いと思います。コアな顧客価値を追求すべき。スタートアップの教科書通りではありますが笑

PMF期のしくじり2 - スタートアップに定石がないと思い込む問題

起業家は教科書は必要ないと思いがちですよね。自分と違う事業だから読んでもしょうがないと思わず、先輩ベンチャーのやり方をまずは真似るのは非常に価値はあると考えています。そのまま取り入れるのではなく、まずは真似て自分たちのモデルに改変していくプロセスの方が近道だったと反省しています。

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読んでおくと良いオススメの書籍

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PMF期に大事だと思っていることは以下です。

・エンジニア自身がお客さんにヒアリングすること。創業当時はCTOである有馬さん自身がお客様にヒアリングを行なっていました
・お客様には必ず「できます」と答え、ロードマップセリングを行いました
・プライシングは「思っている値段の2倍を言ってみる」こと。B向けのビジネスであれば意外と大企業であれば通ったりするので、そこから調整します
・エンジニア採用のコツは、とにかくでかいことを言うこと。GoogleやAmazonを目指すというようなありきたりの思想ではなく、本気でぶっ飛んだ思想を伝えることで、刺激を求めているエンジニアを惹きつけることができます

グロース期のしくじり1 - 技術負債突然襲ってくる問題

グロース期になると、複雑なコードのメンテナンスが大変になる問題が顕著になってきました。ザッカーバーグは以前Facebookのモバイル移行のために新機能開発を2年間ストップする意思決定をしたことを思い出しました。実はそれを真似て、新機能開発をストップして、ボトルネックになっていたソースコードのフルリファクタを行いました。結果的にその決断は良かったと思っています。

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グロース期のしくじり2 - 採用不足いきなり到来する問題

去年の10月に大きな案件がガンガン取れるようになりました。それがPMFで、ビジネスは一気にグロースしたが、人がすぐに集めることができなかった状況でした。それが失敗談で、兆しが見え始めたタイミングで少し早めに採用を行うべきでした。

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グロース期のしくじり3 - 勉強すること死ぬほど多すぎ問題

どんどん優秀な人が入ってくるので、勉強をし続けなければなりません。友人と積極的に情報交換したり、採用面談を通じて他社のアーキテクチャなどの知見を得たり、コーディングを行ったり意識的に勉強を行っています。

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現代のCTOになるならば、とにかく死ぬほど勉強が好きでないと難しいですね笑

しくじり5番外編

最後に番外編として失敗と学びを簡単にまとめていただきました。

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このイベントでは有馬さんの講演の後質疑応答の時間もとり、例えば、プライシングのコツ、カスタマーサクセスについて、これから新規事業立ち上げをするならどうする?などなど双方向で活発な意見交換が行われました。


いかがでしたでしょうか?

資金繰りに苦しみ、大変厳しい数年間を乗り越え、失敗から学びを経験して成長して今があるということを創業当事者であるご本人の口から語られている機会は貴重だと思いました。

また、東大卒の頭脳スタートアップが、ロジカルではなくプロダクトファウンダーフィット、つまり本人が何を本気でやりたいのか、という点が一番重要だと述べていた点が非常に印象的でした。

世間的にはスタートアップの成功ストーリーのコツが語られる中、ストックマーク社のリアルな失敗談を中心に生々しい創業ストーリーが聞けたと思います。ご要望がありましたら今回のセミナー動画をYouTubeなどにアップさせていただくかもしれません。

LT枠: 個人開発でコードの質と開発速度を両立するための技術スタック

今回のイベントでは個人開発者としてご活躍されている寺嶋さん (@y_temp4) にもLT登壇をいただきました。個人開発で一発当てたいと思いつつ5月病に悩んでいるそうです笑

AnyMake https://anymake.app/

以下、発表に使用していただいた資料を添付します。

AnyMakeはこれまでの個人開発とは異なり継続拡張を見据えて、スピードと質を両立するのはどうすれば良いかという点にこだわって開発を行ったそうです。スピードと質を高めて、かつ開発体験の高い以下の技術選択についてご紹介いただきました。

1. Nuxt.js
もはやフロント界のRailsと位置づけされており開発効率が向上します

2. Firebase/Firestore
APIサーバーサイドの実装工数を減らせるのがやはり大きいです。セキュリティルールの部分が敷居が高いかなと思っていましたが、Firestore Masteryという本のおかげでスムーズに進められました。(ご本人は10回以上読んでいるそうです笑)

3. TypeScript
やはり型による補完は開発体験が高い! とりあえず入れましょう

4. Tailwind CSS
最近話題になっているユーティリティファーストなCSSフレームワーク。クラスを組み合わせることでデザインを進めることができる。Bootstrapっぽさをなくしたデザインを実現することができます。

ぜひ皆さんこの技術スタックで爆速開発を試してみてください!

次回vol4!

次回も0->1とグロースを経験しているあのサービスのエンジニアの方に登壇していただく予定です。近日中にアナウンス予定ですので、乞うご期待!

最後に、弊社GAOGAOではエンジニアの方、 0→1起業・開発にお困りの方、双方募集中ですので @tejitak までお気軽にDMください!(特に最近はインフラ/Rails/Next.js/Go あたりの領域でエンジニア足りておりません!)

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