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週末美瑛ドライブ | HINATABOKKO

とある週末、家族で美瑛と上富良野に遊びに行った。
運転手は、運転練習中の私と妹。助手席には指導係の母。
札幌から美瑛まで、高速を入れて車で約2時間40分の長距離移動だ。

私は運転という行為自体が、どちらかというと苦手な方だ。いつかの講習で見た、交通安全を訴えるビデオがいつまでも脳裏を離れず、運転中は”命”という言葉が、背中にどんどん迫ってくる感じがする。自分は1つのことに強く意識が向いてしまいやすく、瞬間空間把握が求められる運転は、普段と違う脳を使っている感覚がある。運転席を降りると、すでに1日を乗り越えた後のような重い疲れがドッとくる。こんな大変なことをみんなやっているのか、と思う。

ここまで書くと、運転が嫌いなのではないか?と思われそうだが、嫌いではない。行為は苦手でも、それが広げる可能性やその先で得られる体験や笑顔が好きだからだ。北海道は広い。行きたい場所がたくさんある。だから自分は運転ができるようになりたい。

週末の美瑛ドライブに話を戻そう。
無事に高速に乗り、三笠ICで高速を降りてからは、連続カーブのある山道を通るなど、なかなかにハードなドライブだった。山道を抜けると、窓の外には広大なパッチワークの丘が見えてきた。札幌に住む自分からすると、同じ道内でも別世界に来たな、と感じる。少しずつ高揚感が、心に戻ってくる。

1つ目の目的地は、「SSAW」。目当ては、東京からやってきたLOS TACOS AZULESのポップアップイベント。自分たちが到着した頃には、木々に囲まれた緑色の家は、すでに人だかりができていた。聞くと残念ながら、タコスの枠はすでになくなってしまったらしく、デザートとドリンクだけなら、外の席でいただけるとのこと。せっかく来たのだから、いただけるだけでありがたいと、デザートプレートとドリンクを注文した。

木漏れ日を眺めていると、ドリンクとデザートプレートが到着。色とりどりの花が散りばめられたメキシカンなデザート。にぎやかで見つめているだけでも楽しい。「かんのファームの白とうもろこしとセージのアイス・トスターダス添え」の、冷たいとうもろこしをそのままかじったようなジューシーさと優しい甘さに頬がほころぶ。「あらいファームのフルーツほおずきのチョコテリーヌ」は、しっとり濃厚で、見慣れないフルーツほおずきが嬉しい。「メロンとレモンバーベナゼリー カモミール香る華やかなフラワーシロップ」は、口に含んだ瞬間、ふわっと花の香りが広がり、 暑い日差しの下で、うるおいで満たされた。

店の前には小さなかわいい似顔絵屋さん。似顔絵屋さんを囲んで、楽しげに繰り広げられる会話を眺めながら、なんだか家族の集いのような、あたたかさと同時になぜか懐かしさを感じた。

SSAWを後にして、美瑛から上富良野まで30分ほど車を走らせて着いたのは、「喫茶 山の分室」。

葡萄畑に隣接するその店には、シンプルな白の空間にアンティーク家具や器が並べられており、それを見ただけで、好きだ!と少し体の熱が上がるのを感じる。店のいちばん奥には、牧草地の風景がアーチ型の窓で大きく切り取られており、ゆっくりと雲が流れていた。

タコスが食べられなかったので、遅めのランチに「パテ・ド・カンパーニュ」をいただく。上富良野産の豚肉をミンチにしたものを中心に、キャロットラペとサラダとピクルスとパンと粒入りマスタードが並んでいる。シンプルで素朴な料理が心地よく、フランスの家庭に遊びに来たような気分になる。

ハウルの動く城が今にも通りがかりそうな窓の外では、ゆらゆらと木々が揺れ、いつまでも、いつまでも、見ていられるな、と思った。

旅行をきっかけに、自分の住む場所の見え方が変わるような視点が手に入るように、運転もまた、自分にとっては視点を変えてくれる行為のようだと思った。同じ体験をしたとしても、その前後の出来事によって感じる感情は全く異なってくるのだろう。体験を存分に楽しめる心作りをしていきたいし、瞬間瞬間の心をきちんと味わい尽くすことを忘れずにいたいと思った、週末ドライブだった。


HINATABOKKO
癒しと温もり届け屋さん/ 企画・映像制作

本職(企画・映像制作)の傍ら、癒しと温もりを届けるをモットーにInstagramなどで活動。
この頃は、散歩とロウソクとお茶に助けられている。札幌在住。
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