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【大慈悲】疑問…けっきょくみんなへんなのではないか(中篇②)

 というわけで、変な人ばかりが寄ってくるわけだが、思い起こせば、むかしから、子どものときからそうだった。

 高校生の時の話をしよう。メガネボクサーのNというともだちがいた。メガネボクサーというのは、メガネをかけていたことと、ボクシング部(唯一の部員だったような気がする)であったからである。変なやつであった。

 私ははっきり言って、変なひとがスキなので、そいつとよくつるんでいた。廊下などもいっしょに歩いていた。

 ある日、同じ部活動の仲間に「おまへ、さいきんNとよくいっしょにいるが、あんまりいっしょにいると、おまへまで変だと思われるぞ。というかじっさいに思われつつあり、うわさになっているような感じだぞ」と注意された。

 そんなもんかね、と私は多少気にしたが、同時に、バカバカしい。思われるなら思われるとよい、気にしねーよ、おれはよ。と反発も感じた。この部活動の仲間は、いまでも仲の良いともだちである。であるので、別にその後(も)私の行動は変わることはなかった。

 Nは最後の高校の大会で、一回戦を勝ち、二回戦も勝った。勝ったというかどちらも相手が棄権したのである。そして三回戦はみずから棄権し、負けた。ボクシングにはよくある話であるらしい。Nは一度もたたかわずして、三回戦ボーイでボクシングの青春をおえた。

 おまへそれでも男かよ。それでいいのか、と言うと、ボクシングの世界にはよくある話だという。ボクシングは殴り合いであり、アマチュアはヘッド・ギアを付けはするものの、殴り合いなので、生、死の問題となる。であるので、自分よりも明らかに相手が格上の場合は、棄権するのが普通、とNはいった。

 では、おまへは一度でもリングの上で本番で、殴り合いをしたことがあるのか、と問うと、Nは、ない、なかった、と言った。

 ふーん。と私は思った。何だボクシングて。

 Nは受験に落ち、卒業後は東京の予備校に行った。進学ならまだしも、何でわざわざ予備校のために上京するのだと聞くと、親がそうしろというからという。具合はいかがと問うと、「東京は誘惑がおおい。たのしい。お金があれば何でもたのしめる」と言っていた。

 浪人中に一度会って、それきり。

 これを書いていていま、Nに会いたいと思う。

本稿つづく


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