【連載小説 短篇予定】美の骨頂㉟真剣二十代しゃぶり場……millennium mushroom in mother tongue
まず、求めてきたのはエーリー先輩でした。帰り道、ふらふらとうちらは辻のラヴホテル「母国語」に入りました。
うちとなっちゃんはズーミギ(水着)で、尻に砂(砂浜のやつ)がついていたので、一緒にシャワーに入りました。風呂桶で泡まみれになり、こちょこちょしながら、「誰を好いているのか」質問し合い、転がるガラス製の箸のような嬌声が、自分らのことながら五月蠅いなあと思っていました。
そこに、善羅(全裸)のエーリー先輩が入ってきたので「シーン」という感じになりました。チャーリー・シーンみたいな。
そこに間違えて、掃除のおばさんが入ってきたので、まあ、いっしょに風呂入りましょうとなりました。自然と。
というわけで、四人でカラダを洗い合いっこしたり、風呂掃除をしたり、歯磨きや雑談。風呂上りに買ってきたピザを四人で食べて、炭酸水をのみました。
掃除のおばさん(桃子さん)がふところにしのばせた一升瓶を出して、四人で飲み始めて、ディープ・インパクトの新レコードばりにすぐに無くなり、そこでこのホテルの主(おとう)が一斗樽を担いできて、さいわいうちには気づかずにフロントに戻っていきました。
一斗というのは十升なので、まあまあ飲みでがありました。というかうちとなっちゃんは全然のみませんでした。イキフン(雰囲気)でもうベロベロ状態。
しかしまあ、エーリー先輩と掃除のおばさんのまあ、よう飲むこと。
うちとなっちゃんはベッドに入り、善羅のまま抱き合い、お互いのホットスポットをさぐりあっていました。たとえば目尻とか。かきあげた耳の上の毛の、その先とか。
設定を忘れたのですが。
なんだっけ。
なっちゃんて誰だっけ。
志賀島(しかのしま)の話をしました。誰と?
テレビをつけるとニューステロップで、下関で通り魔事件が起きたと出ていました。
「死傷者多数」
「まえもあったよね」と桃子さん。「まえはあれ、秋葉原」
「別れ道」というバス停が、あったという、おかあの話を思い出しました。そこは死刑場に向かう丘の麓にあり、そこで遺族と死刑囚は、友人知人さっき会った行きずりの野次馬と、死刑囚はそこで別れたのでした。
そのうち消える、命。
「こういう時間を大切にしたい」
とエーリー先輩が言いました。ぼったくりの原生物。
なぜ人は生きるのか。
このときエーリー先輩は真実をかたり、また、忘れたのでした。
なぜか。
馬鹿だからです。うちらは。
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