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vol.80 晩秋【手紙の助け舟】

こんにちは。喫茶手紙寺分室の田丸有子です。秋が深まってまいりました。まさに錦繍の候、お変わりありませんか。

紅葉した葉に陽の光が当たって輝く様子を「照紅葉てりもみじ」や「照葉てりは」と言うそうです。
私の家のまわりには桜の木がたくさんあるのですが、葉が色づいてとてもきれいです。照紅葉の輝きにうっとりして、神様はなんて美しい色をこの世に作ってくださるのだろうと、散歩するたびにしみじみと感じ入ってしまいます。

紅葉に関する日本語を他にも挙げてみましょう。
黄落こうらく
 銀杏の葉っぱのように黄色く色づいて落葉する葉っぱや実のこと
散紅葉ちりもみじ
 紅葉が舞い散る様子。
 散紅葉で地面が赤く埋め尽くされている光景は眼福ですよね。
落葉舟おちばぶね
 水面に落ちて流れていく紅葉。

『錦繍』

宮本輝さんの小説『錦繍』をご存知でしょうか。
最初から最後まで、男女が交わす書簡形式の小説です。恋愛小説というよりかつて夫婦だった2人が、偶然の再会をきっかけにして自分の生き方を見つめ直し再生していく物語です。
かなり前に読んだのですが、書簡形式だからこそ成り立つ文章表現の底力を感じました。若い頃にはよく理解できなかった心の襞が年齢を重ねたことで見えるようになり、ラストの手紙に向かっていくにつれ、さざなみのように押し寄せる深い感動が印象的でした。
今の季節にぴったり。読書の秋のラスト一冊にいかがですか。

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田丸有子(たまる・ゆうこ)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。
切手に描かれている美術品や絵画の実物を鑑賞するための美術館巡りが趣味。目下ステイホームで始めたベランダガーデニングに夢中。
blog: 手紙魔Yukoのお手紙ライフ




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