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【娘におくる手紙】1歳8か月、親になる

これは、母から娘への手紙です。
2022年の夏、ひいおばあちゃんの生き写しみたいにそっくりな顔で生まれてきた娘。まばたきするくらい早く過ぎていく日々を書き留めて、娘が大きくなった時に渡せるよう、手紙にして残すことにしました。

▼1歳7か月、徒歩1時間

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こんにちは。
今月はお母さんのお母さんがお誕生日なので、あなたへのお手紙はおやすみして、あなたの大好きな「ばーば」にお手紙を書きました。

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お母さん

64回目のお誕生日おめでとう。
この間は3人で沖縄に行って楽しかったね。
あの子の食べっぷり(と、好きなものしか食べないこだわり)に驚いたでしょう。
食べものでいうと、最近はお父さんが作る焼きそばが好きです。シンプルだから。
キャベツと豚肉と麺と、薄味にしてねって私が言ってもそこそこ濃い味付け。
私はキャベツはもちろん、人参とか、食べてくれたらいいなと思っていろいろ入れてしまいます。きのことかも。
(相変わらずきのこ類はなめこしか食べませんが、懲りずに他のも忍ばせています)

そういえば小さい頃、うちのおかずにはどうしてこんなに野菜がたくさん入っているんだろうと思っていました。
同じメニューなのにお店で食べるものとはちょっと違って、うちのにはいつも野菜がたくさん。
野菜が入りすぎてどんなメニューも全部野菜炒めじゃん。と、不服でした。
だからお店のメニューはもちろん、縁日で売っている何の肉か怪しいくらいの小さいかけらが入った焼きそばは、究極の憧れ。

それから、うちのお弁当はどうしてこんなに大きいんだろうとも思っていました。
もっと小さくて可愛らしいお弁当が良いのに、って。
しかもその大きいお弁当箱に詰め込まれたおかずは、やっぱり野菜炒めとか、煮物とか。
私は“ ミートボールと卵焼き ”だけのお弁当が食べたかったことを未だに覚えています(笑)。

だけど、あれから20数年がたった今、娘がうまれて、我が家の料理は毎日が野菜炒め状態です。
ー 野菜もたくさん食べてほしい。でも味が好みじゃなかったら困るから、別のも作っておこう。足りなくてもいいようにもう一品作ろう。ー
そう思って毎日、作らなくても足りる日まで次のおかずを作ってしまいます。

いつか、あの子がお弁当を待っていく日が来た時の自分の様子が目に浮かびます。
足りなくならないように、誰かにあげてもいいように、と、大きなお弁当箱を用意して野菜たちをぎゅうぎゅうに詰め込んでしまうんだと思います。
ミートボールは多分滅多に登場しないけど、「特別だよ」と言って入れてあげるつもり。

娘とすごす日々は、あなたとの日々を振り返ることでもあるなと、最近思います。
普段、「親になったなぁ」としみじみすることはないのだけど、当時のあなたの気持ちにふと気が付いた時に「親」の自分を実感します。
私にとって「親になる」とはそういうことなのかもしれません。

気付かなかったたくさんのことに、これから出会っていくんだろうね。
その都度ありがとうというのは照れくさいので、誕生日おめでとうに紛れ込ませて、今日ここに書いてしまいます。
お誕生日おめでとう。これからも元気で、また旅行にいきましょう。
今度はじーじも一緒にね。

 母になった、あなたの娘より


ばーばと行った動物園。ほんもののキリンにくぎ付けでした。


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原田 理恵 | 喫茶 手紙寺分室 note 編集長
「誰かの想いを翻訳・編集して磨き上げ、多くの人に伝えていく」が信条。旅と、時間が経って朽ちた風合いや佇まいがあるものがすき。ペンのインクはブルーブラック派。喫茶で最高のクリームソーダを出すのが夢。
Smiles: Project & Company 所属。

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