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【娘におくる手紙】1歳5か月、うたのおかあさん

これは、母から娘への手紙です。
2022年の夏、ひいおばあちゃんの生き写しみたいにそっくりな顔で生まれてきた娘。まばたきするくらい早く過ぎていく日々を書き留めて、娘が大きくなった時に渡せるよう、手紙にして残すことにしました。

▼1歳4か月、一緒に生きてる。

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こんにちは。今月も手紙を書きます。

1歳半を間近にして、ことばがだいぶ増えてきました。
「わんわん」「にゃーにゃー」にはじまり、「こっち」「あっち」と行きたい場所を教えてくれたり、「あっこ!(抱っこ)」とおねだりをしてきたり。
自分が嬉しいことや面白いものはお母さんにも「あ!」と教えてくれます。
教えてくれるというよりも、「ほら、面白いよね」ってうなずきあう感覚が近いかもしれません。

気持ちがシンクロするとあなたはとても満足そうですが、ひとつだけなかなかあなたの思い通りにいかないことがあります。

それは歌。
今はおもちゃや絵本や他の遊びよりも歌うのが一番大好きなあなたは、遊んでいるとき、ごはんのとき、お風呂でも、行動が歌に結びついて突然歌いたくなって、「あ!(あの歌うたおう!)」と誘われます。
まだ自分では歌えないので、お母さんの歌にあわせて語尾だけ一緒に歌います。

大きな栗の木のしたでー
あなたとわたしー

みたいな感じです。正確にはまだ「えー」とか「いー」とか、母音です。
合いの手みたいで威勢がいいです。

だから歌いだしはお母さんに歌ってもらわないといけないのだけど、ここで難しいのが、お母さんはあなたが歌いたいのは何の歌なのか、推理しないといけないこと。

象の絵を見たら「ぞうさん」、(動物の歌って本当にたくさんあるね)
夕ご飯でさつまいもを食べたときは「やきいもグーチーパー」
このくらいは序の口です。

ところが、なかなか当てられないこともあります。
いざ歌ってみて違うと、違う違うと首をぶんぶん振って、時にはブチ切れ状態で激怒されてしまいます。
「あーーー!(あの歌が歌いたいのーーー!!)」って。

でもヒントは教えてもらえないし、目当ての歌にたどり着くまでパスや降参は認められません。
とにかく容赦ないので、お母さんはひたすら想像を膨らませて歌のレパートリーを出しつくします。
この手の動かし方はあの歌だな、とか。さっき○○って言ったから歌詞に○○が出てくるのはあれだな、とか。(昨日はおにぎりでした)

あなたの中では、
”私が思っていることはおかあさんも思っているから、私が歌いたい歌はお母さんも歌いたい。”
そういう理論です。だから早く歌ってよ、と。

自分とお母さんが違う存在だということは知っているけれど、考えていることや感じている気持ちは同じ。
別々だけれど、一緒。
そういう不思議な世界にあなたは今いるんだと感じます。
ひとりの独立した存在に少しずつ向かっている過程だと思うと、なんだか感慨深いです。

最近は知っている歌を歌いつくしても、当てられないことが増えてきました。
きっと保育園でお母さんが知らない歌をたくさん歌ってもらってるんだね。
「の!(それじゃないよーーー!)」とあなたに怒られながらも、おかあさんは今日も ”うたのおかあさん” になりきって、一緒に手や足をぶんぶん振り回しながらあなたと歌おうと思います。

だけどそういえば、ごはんのときに気に入らなかったものをおかあさんの口に「どーじょ」と言って押し込んでくるのは、ちょっとどうかと思っています。
さっきの理論でいうと、おいしくないものはおかあさんも一緒なはずなのに。
そこはお構いなしのようで、なかなか調子のいい子に育っています。

それでは、また来月に。

母より


飛行機が大好きで、見つけるといつも手を振っています


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原田 理恵 | 喫茶 手紙寺分室 note 編集長
「誰かの想いを翻訳・編集して磨き上げ、多くの人に伝えていく」が信条。旅と、時間が経って朽ちた風合いや佇まいがあるものがすき。ペンのインクはブルーブラック派。喫茶で最高のクリームソーダを出すのが夢。
Smiles: Project & Company 所属。


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