社会保障の歴史と国民識別番号 フィンランドの人・社会福祉・介護 聖書を基として見る 5

「あなたの手に善を行う力があるとき、求めるものに、それを拒むな。」
聖書 箴言3章27節

フィンランドにちょっと長期住む事になった人は必ず国民識別番号が与えられ社会保険省、略してKelaと何らかのやりとりをする事になる。

人間の生き方とスタイルはその時代により変わってくる。そしてそれは常に一定のスタイルを保っている訳ではない。その時代に沿った問題や必要が出てくるのだ。
第二次世界大戦後のフィンランドではまず国民年金を整備する事から始まった。生活が安定し始め家事の機械化が始まった1960年代には母親たちが一日中家の外で働くようになり母親保証が導入され、その後時代の必要とスタイルに合わせて今2020年代でも法の改正が続けられている。1990年代初頭にはバブルが弾け大勢の人々が仕事を失った。2000年前後には海外から養子縁組をする家族も増え、子供が家族に慣れ親しむ間の事を考慮しそのような家族のためにも特別な補償が用意されている。2010年代になり幅を利かせて来たLGBTの人々に関する保障もある。社会の動きや必要に目を留め、それを「特別な事情」として脇におかないのがフィンランドの社会保障の良い面なのではなかろうか。

ここでフィンランドの社会保障の歴史を見てみよう。

フィンランドの社会保険省Kelaの歴史

KelaのHPより抜粋、おおまかに翻訳。

1937 国民年金法が整備され社会保険省の働きが始まる。
1940年代 最初の失業国民年金
1949 高齢者年金を導入
1956年以降 年金は収入の積み立てとなる
1960年代 国民識別番号(マイナンバー)が与えれらるようになる
1964 病気のための補償が始まる。これ以前は高齢者と働くことのできない疾患や障害のある人が保証を受ける申請ができたが、これ以後全フィンランドの住民が保証を受けることができるようになる。それに伴い病気の予防、リハビリなどにも力を入れるようになる。
1969 子供保育保証や年金受給者の住宅補助の導入
1970 薬品購入代金補償の導入
1982 母親保証の改定
1983 難病の子供への治療とリハビリへの補償を開始
1985 失業者の補償もKelaが請け負う事に
1989 障がい者保険の導入
1993 子供補償と保育補償の導入
1994 母親補償、学生・軍人補助、家賃補助、失業保険の導入
1997 子供の通学補償の導入
2000-2004 業務のIT化が始まる
2004 ヨーロッパ内で病気や怪我になった時の補償の導入
2006 薬品購入代金補償改定 成分が同じなら高いものから安い物に変えることができるようになる
2007 父親育児休暇の原型が始まる。就業している両親に対しての補助の増加
2010 タクシー券の発行 病気で自分で車の運転ができず、タクシーに乗る必要がある人のためのサービス券
2010年代 IT化が進み、ネットでの申請が推奨される

国民識別番号 マイナンバーとフィンランドのIT化

マイナンバーの使用も1960年代に始まり、自分の生年月日の後に4~5桁の数字もしくはアルファベットの組み合わせにより構成される。男性なら最後の数字は偶数、女性では奇数となっている。
マイナンバーは生涯同じナンバーで通す。このナンバーで税金の支払い状況、銀行、医療機関、ハローワーク、警察、社会保障の受給やネットショッピングの認証、血液検査やその他検査機関での本人確認など色々なところで使用される。IT化に伴い税金や個人の電子カルテの履歴はインターネットで自分で自由に見れるようになった。

マイナンバーの他に銀行口座、そしてスマートフォンが必ずないと今のフィンランドでは生きていけなくなったと言ってもいい。銀行口座を開く時にマイナンバーや職場の有無はもちろん、海外への送金の有無、支持する政党の名前などありとあらゆる個人情報を質問される。銀行で口座ができるとネットバンキングシステムを通して、税務署をはじめ上記に示した全ての公共の機関で用事をする際にログインできる認証システムが使えるようになる。
以前はKelaを始め役所や銀行は窓口に行けたが最近ではどうしても対面で話したい場合はネットで最初に予約しないといけない。銀行などは完全予約制か週に2~3回、昼間の数時間しかオフィスを開けないし、現金を取り扱わない銀行も出て来た。高齢者でネットやスマートフォンが使えない人などは事務所に行ってもかなり長い時間待たなければならなくなった。都市によっては税務署でさえ週に3日しか開いていないようになってしまった。ハローワークなどはほとんど対面で話すと言う事はできなくなった。
最近の問題としてはLGBTの人たちは末尾番号で元の性別が男か女かがばれてしまうので、それを変えて欲しいという事を主張しているが、マイナンバーシステムの全てを変えるとなるとコロナ対策より多くの予算が必要となるらしい。

「税務署」の個人ページにログインしようとすると、まずネットバンキングを使っている銀行を選ぶページになる。

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そして銀行のページから認証ログイン。

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