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罪 第21話

【前回の話】
第20話 https://note.com/teepei/n/n8be768263971

「『シャングリ・ラ』の設備だけでは、完全自走する人工知能の発現はありえない。
私の見立てでは、おそらく被験者の頭脳を集合知能として、人工知能が取り込んでいる」
谷崎が鼻で笑う。
「本山さんよ、あんた自分で何言ってんのか、分かってんのか」
「ああ、驚くほどにね。だが、私の見立てが正しければ、被験者を接続から外すことで完全自走できるほどの演算能力を失い、人工知能は停止する。しかしさっきも言った通り、他の機械装置からの接続は一切不可能だ。直接被験者を外すにしても、プールに入れば被験者が不安定に追い込まれる。被験者が自発的に目を覚ましてくれれば別だがね」
口の端を歪め、本山を見据える。
「つまり、直接意識に入り込めってか」
「そういうことだ」
「大西がいるじゃねえか」
興味をなくしたように、視線を脇に放る。
「既に試したさ。しかし、はじかれた」
「はじかれた?」
再び向きなおり、眉を顰める。
「そうだ。意識への介入を試みた途端、鼻から出血して倒れた。脳に過大な負担がかかったらしいが詳しいことは分かっていない」
「大西は」
「今は安静にしている。後遺症が残る心配はない」
谷崎から、深いため息が漏れる。
「それを、俺にやれ、と」
「菊池が被験者になっている。彼が自ら望んだことだが、今はプールの底に横たわっている」
あの野郎、と舌打ちする。
「大西君とは比べ物にならんのだよ、お前の力は。実際にデータを取ってみて実感する。これはお前にしかできない」
再び深いため息。
「仕方ねえ、久々に外の空気でも吸いに行くとするか」

         ***

屋内のプールは薄暗く、プール内の通電経路の軌道が鮮やかな輝きを放つ。
プールサイドに胡坐を組んで、谷崎が静かに集中している。

「まずは菊池からだな」
手錠は腰と鎖に繋がれ、足にも歩幅を制限するための足枷が鎖で繋がれている。
何とか胡坐は組めるものの、捕縛された犯罪者という印象は払拭できない。
プールとガラスを隔てて監視員室があり、ここにも機械装置が置かれている。
プールと東校舎を中継し、機能を補佐する役割を担っていた。
その部屋に、本山、森野、石田、設備管理の関係者の数人がいる。
東校舎には日下部と何人かの技術者が控えていた。
(続く)
【次の話】
第22話 https://note.com/teepei/n/n21b5b33b24e

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