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水素エンジンが実現するのか!!

トヨタがこんな発表をしました。

トヨタにおいて自動車での水素活用というのはFCV車を実用化させていました。FCVというのは純度の高い(99.97%)水素を高圧にして(75MPa→600気圧以上の圧力です!)タンクに充填、その高圧水素を少しずつ燃料電池セルに流し込んで化学的に発電し、その電気エネルギでモータを回して車が走るというものでした。一種のPHEVやEVみたいなものです。ただ、構造が複雑な分実用化したMIRAIではかなり高価な車となってしまい、我々庶民が環境に良い事を理解していてもおいそれと手がでるものではないのも事実でした。

車が普及しない事から水素を供給する水素ステーションもなかなか増える事もなく車の普及にブレーキをかける事にもなっていたのではないか?と考えております。

社内では仲間と「水素で発電するからめんどくさいので、昔マツダがロータリーエンジンでトライした様に水素をエンジンにぶちこんで燃やしたら?」とよく話していたんですよね。そうしたら何とトヨタがエンジンを作っていた様ですw

今回の発表ではまず耐久レースで走らせるとのこと。サーキットを実験室に
するのですね。(まるでどこか別のメーカみたいですw)しかし、ここまで作り込んできているのに驚きました。

水素エンジンについてはまだまだ技術的課題はあると考えています。
・燃えやすさによる過早爆発
・過早爆発によるノッキング
  →間違いなくリーン燃焼技術を突っ込むと思ってます。
   また筒内直接噴射方式を取るのではないか?と思いますね。
・ガソリンと比べて爆発エネルギが小さくなる為出力が下がる
  →ここは筒内噴射とターボの組み合わせなのかな?と
   なんとなくディーゼルやロータリーと相性良い感じがするんですよ
・NOxの大量発生
  →リーン燃焼とEGR(排出ガス再循環)+三元触媒で対策を
   取るのかな?と
・水素脆化対策
  →鉄系の材料に水素がずーっと接触していると金属の方が
   もろくなると言う現象があります。その為水素に強い
   非鉄金属とかステンレスとかをよく使うのですが、エンジンの
   シリンダ、ヘッド、ピストンなど水素が接触するところの
   水素脆化対策にも興味があります。

ただ、その一方でメリットも多いと考えています。
・燃焼しても排ガスは水(H2+2O2→2H2O)でとてもクリーン
・直接燃焼であれば高純度である必要もない、安価にできる可能性が
 高い
・水素は国内で確保しようと思えば作りやすい資源である
 (極端な話、水を電気分解すれば良いですし、石炭からも水素を
  作ることができます)
 (石油依存から脱却できる)
・現行の内燃機関の技術をそのまま流用できる
 (特にミッション、駆動系はそのまま流用可)

と技術的にもめっちゃ気になる所ではありますし、環境対策車の決めてになるのではないかなぁ?とも考えています。EV普及の場合、その国の総発電量を確保できるのか?という課題が残ります。また開発途上国においてはその総発電量すら不足しておりEV普及には無理があります。
水素は極端には水の電気分解なので、水を確保できて電力を太陽光などのスタンドアローン電源で確保できれば水素精製はしやすいのでは?とも考えます。海水から真水を作ることも技術的には可能なので海に囲まれた日本なんか資源大国になる可能性を秘めた技術であると考えます。

トヨタは開発着手を発表してから1ヶ月後の24Hr耐久レースにカローラスポーツに搭載してエントリを決めています。どうもその車をルーキーレーシング代表のモリゾウさん(豊田社長)が自らドライブする様です。
危険物とも考えられる水素を自ら背負って、レースの場でエンジンを壊しながら開発を加速させる意気込みの様なものを感じます。

環境対策車として欧州や中国がEVに流れるのに違和感を覚えていました。総発電量をどうやって確保するのだろうか?太陽光を中心とした再エネの昼夜発電能力のバラツキをどうするのだろうか?と。そこへ、EV化による電力使用量増加は負担できないのではないか?と。
だからこそ、あえて内燃機関をブラッシュアップする形での今回のトヨタの取組みは猛プッシュしたいのです。この技術が確立すれば、各種エンジンへの適用はもちろんのこと、建機への展開、更には発電機への展開、小型発電装置にも適用が考えられます。世界の環境対策をひっくり返すゲームチェンジャーの可能性も秘めていると感じます。

私も技術者としてこのプロジェクトに関わることができたら猛然と働いてみたいと考えてしまいました。技術者人生の最後にこう言う夢のある、社会的意義のある仕事ができると良いなぁと久々にワクワクしたニュースでした