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わたげのバルトロマイ
タンポポのわたげのようなふりをして、それはやってきました。ふわふわとしていて、さわりごこちもやわらかなそれは、マリーの耳たぶにぶつかってはずむと、耳のなかにするするとはいってゆきました。
「きゃあ! くすぐったい!」
おもわずマリーは声をあげました。
「わたしのあたまのなかにはいってきた、あなたはだあれ?」
タンポポのわたげのようなそれは、口をつぐんでだまっています。
マリーは、うさぎのぬいぐるみで、しんゆうのセバスチャンにたずねてみました。
「わたしのあたまのなかにわたぼうしみたいなのがはいってきたの。だあれってきいてもしらんぷりしているの」
「ああ、それは」
かしこいうさぎのセバスチャンはマリーにこたえます。
「わたげのバルトロマイというやつですよ」
「わたげのバルトロマイ! わるそうなやつだね」
「ああ、わるいやつかもしれない。いやいや、そんなにわるいやつじゃないかもしれない」
かしこいうさぎのセバスチャンは着ているベストのボタンをしばらくいじっていましたが、そのうち、ちいさな声でつぶやきました。
「わるいか、わるくないか。どうしてぼくがわかるんだい。ほんとは、わるいやつだっていって、マリーとけんかさせるようにしたいけれど、ぼく、うそをつくのはわるいことだってしってるから……」
「ねえ、どっちなの?」
そのとき、マリーのあたまのなかに、ガラスのふるえるような声がひびきました。
(ふん。おれはわたげのバルトロマイ。わるいやつだよ。セバスチャンとかいったな。おまえもわるいやつだ! だって、おれとマリーをけんかさせて、てんがいこどくなおれのことを追い出そうとしたんだからな!)
バルトロマイのわたげがさかだちはじめました。
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