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モモ/【小説】 繭の中で本を読む

 もちろん、わたしが紹介する必要がないほど有名で、読まれていて、間違いなく名作。三度目の読了だけれど、今回はオーディブルで聴いた。それがとてもよかったのでシェアするよ。

 最初にオーディブルについて説明をしておいた方がいいかもしれない。簡単に言えば、amazonが提供しているオーディオブックだ。オーディブルのページから引用。

月額1500円(税込)でお好きなオーディオブック1冊のほか、無料でもらえる月替わりのボーナスタイトル、Audible限定のポッドキャストを聴き放題で楽しめます。その他、返品・交換など会員だけの特典が受けられます。

 毎月1コインがもらえて、それはどの書籍にも利用できる。1500円を超えるものについても利用可能で、基本的には、毎月1500円で1冊のオーディオブックを自分のライブラリーに入れることができる。そのほかにも、月替わりのボーナスタイトルなどがあるので、月額料金内で複数の書籍を聴くことも可能。もちろん書籍代を払えば、いろんなタイトルを聴くことができる。後ほど、わたしがどうやってオーディブルを楽しんでいるか案内したいと思う。応用が効くかどうかは怪しいところだけれど。

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 ともかく、「モモ」だ。本当にこの物語は大好きだ。そしてオーディブルを聴くことで、とりわけ高山みなみさんのナレーションで聴くことができたのが最高だった。
 キャラクターごとのセリフの読み分けは、さすが、としか言えない。本を読みながらラジオドラマが、その行間から立ち上がっているようで、すこぶる贅沢な時間だった。子どもたちの本来の想像力のたくましさ。モモの孤独の嬉しさと寂しさ。灰色の男たちの冷淡さ、狡猾さ、浅はかさ。
 時間の花の美しさ。
 もちろん文字を追うことで、得られる感動がある。ディスレクシアなどの障害がなければ、まずは書籍で楽しむことがいいのかな、とは思う。自分の中にたくさんの人間が、よい人も悪い人も養うことができるから。それは、人生を豊かにすることに間違いがないと思う。しんと静まった部屋で、物語に体ごと潜り込む、あの没入感は、旅行の体験に勝る部分だってある。
 じゃあ、ディスレクシアの人がかわいそうかというと、この音声から入り込んでも、決して物語は損なわれたりしない。だから、読み聴くことは大事で、聴くことで、頭の中に、心の中に、像を成すことができるのなら、それはまた特別な時間となる。誰かと物語を共有するという得難い経験を得られるだろうと思う。

 どんな入り口でもいいけれど、とにかく「モモ」は読んで欲しい物語のひとつであることは間違いない。何度読んだって新しい感動があるんだ。

 そしてオーディオブックにたくさんの声優さんが参入して欲しいと切に願う。そういう流れにはなってきているのかな? もちろん書籍の読み込みは相当、必要になってくるけれど。

 オーディブルのよさとして、細かいけれど一例を挙げる。

「どうです。」とXYQ/384/b氏は、今度はもの柔らかな口調になって言いはじめました。

 灰色の男たちは記号で呼び合う。文字で見ると、なかなか覚えにくいのだけれど、淀みのないナレーションでそれが呼ばれると、確かに名前として認識できるんだ。この時、わたし、ちょっと感動しちゃったんだよね。わたし、主治医に数学の勉強を止められているくらい、愛しても拒絶されてしまう数字たちなのだけれど、それが固有名詞として耳の中に飛び込んでくる! これは、なんだか大事なことだぞ、と思う。もしかしたら挫折してしまった数学の勉強が、耳を通すことで再挑戦できるんじゃないかって期待してしまう。授業の時は、理解しようと躍起で、本当はちゃんと聴いていなかったのだと思う。思いがけず、自分の障害の困難解決の糸口を見つけたような気がする。

 長い物語だから、もちろん一日で聴き終わることは困難だ。スピードをコントロールすることができるので、速聴することはできる。わたしも1.2倍速にはしているけれど、それ以上だと、わたしの場合、物語の情緒が崩れるようで出来なかった。耳が慣れたら、或いはそういうことも可能かと思うけれど、今はのんびりと聴くことが必要なのじゃないかって思っている。

 わたしはこの長い物語を公園を散歩しながら聴いた。そう聞くと、日傘差しながら優雅な日常、みたいに想像されるかもしれないけれど、実情はちょっと違う。

 わたし、ポケモンGOのなんていうか割とガチなユーザーなんだよね。課金はイベントチケットを買ったくらいで、ほとんどしたことがない(ひとつはマツキヨでの購入分だし)。でも、サービス当初から始めていて、わたしを誘ってくれた人がいるんだけれど、その人のユーザー暦4年半に対してわたしは1年半弱。それなのにわたし、その人よりもイーブイ、たくさん捕まえちゃっているんだよね。ガチ話のついでに、イーブイのXL飴というのがあるんだけれど、それ296×2個、集めちゃっているんだよね。分かる人はちょっと引くと思う。
 でも、ポケGOだけしている時間て、正直なところ不毛というか、こんなことしていていいのかな、という気分に流されることがある。そんな時にオーディブルはとっても役に立つ。なんたって読書をしているんだもんね。しかも散歩までしている。健康的。一石三鳥、素晴らしい!
 ちなみに書籍を聴くのには、外出している時は公園や電車の中などでないと集中できないと思う。イヤフォンにもよるだろうけれど、物語が車の音に塞がれてしまう。ノイズキャンセリングで、車の音が聞こえないというのも、それはそれで危険だし、だから公園でのオーディブル、お勧めします。

 さて、ポケGOの話はそのくらいにして大事な「モモ」の話だ。
 マイスター・ホラとのやりとり。カシオペイヤのかわいい。ベッポじいさんの誠実さ、頑なさ。観光ガイドのジジがモモに話す物語。
 ジジが変わってゆく様子を追うと、身につまされるような、でもそうなれるのならなってしまいたいという強い誘惑であるような。
 わたし、もし、小説家になれたとして、ジジのようにならない自信はあるけれど、まあ、もしすごいベストセラーになっちゃったりして、と空想したりはするんだけれど、それでも、ああいう感じは今の日本の出版を取り囲む状況では、やっぱりならないような気がする。なれない、か。そういう意味では、日本は、時間を節約し、それを搾取されているのに金銭に反映されない、という「モモ」の世界よりも悲惨な場所になっているように思える。せめて、時間は取り戻さないと、本当に貧しい国になってしまうだろうな、と思う。
 政治家の人はちゃんと本を読んで欲しいよね、と思うより先に、まずはみんなちゃんと選挙に行きましょうね、と思っている。それは、本当に切実に。

 わたしは統合失調症なのだけれど、この間の診察で、わたしは本当に統合失調症なのかと主治医に尋ねた。
 主治医はこんなことを話した。
「うつの人は、周りに比べて自分が悪い状態にあると感じる。統合失調症の人は周りも自分と同じように悪くなっていると感じる」
 わたしは、それを聞いて、自分の病気を素直に受け入れた。解釈はいろいろできると思うんだけれど、なんというか前後の文脈も踏まえて、得心した。

 オーディブルのいいところを話そう。
 書籍は読み返すたびに新しい発見があるし、実は読み飛ばしていること、自分の空想に心がなびいて、目では追っているけれど、読んでないことが多々ある。もちろん聴くことでも起こりうることではあるんだけれど、聴いてなかった感覚は読んでいない感覚よりも、もっとはっきり分かる。個人の感想なのかもしれないけれど、聞き取れない時、すぐに巻き戻す。それは、音のよいところ。

 そしてその逆として、当然、音だから手に取れないところが不便なところになる。今は、「モモ」の書籍も持っているから引用文を作りやすいけれど、オーディブル専用とかになってくると、こういうレビューが書けるか、ちょっと怪しい。川上未映子さんのオーディオファースト作品をすでに予約済みだから、聴き終わったらレビューチャレンジしてみるね。きっと本が欲しくなっちゃうんだろうけれども。

「ザジ、あなたはモモが好き?」
 にゃ、と答える。そうかそうか、とわたしはザジの体全体をもふもふする。ザジは嫌がって逃げる。逃げる途中で、開きっぱなしの書籍版の「モモ」の紙の匂いを嗅いでいる。古本特有の酸い匂い。ぺろりと舐める。
「それ舐めるの?」
 ザジは行ってしまう。濡れている箇所は

 モモはふと気がつくと、みごとにうつくしい大きな時間の花を手に持っていました。

 わたしの時間の花は、今も、例えようのないほど美しく咲いて、そして迷いなく散ってゆく。そうするうちに、またわたしの時間の花は、新しく生まれる。これまでにないような美しさで、確かに。

 だから、ちゃんと生きていてね、わたし。そしてあなたも。例えようもなく美しいのは、比べられず、瞬間瞬間がまばゆい。

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モモ Audible Logo Audible版 – 完全版
ミヒャエル・エンデ (著), 大島 かおり (著), 高山 みなみ (ナレーション), Audible Studios (出版社)

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今後のラインナップ(つまり読書中:4/17現在)
・大きな鳥にさらわれないよう(再読中)
・さようならギャングたち(再読中)
・すべて忘れてしまうから(図書館から借りている)
・ブロークン・ブリテンに聞け(図書館から借りている)
・わたしを離さないで(オーディブル:読了)
・裾花(再読中)
・文學界5月号
・ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集(再読中)
などなど
ここにラインナップされていても読了しないかもしれません。あらかじめご了承ください。

 

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サンキュー。昼の星の瞬きが瞼の裏にありますように。
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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。物語を書きます。刺繍をします。インクの子どもたちの声を聞きながら。ホームページ http://www.roverdover.com / ヘッダー画:茅野カヤ