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伊豆大島に行って分かった火山の脅威と恵み

 伊豆大島に行った目的の一つが、三原山の山体を拝むこと。本州ではなかなか見られない山体のため、気になりました。三原山の1986年の噴火の脅威を学ぶと同時に三原山温泉の恵みもいただきました。

三原山

 伊豆大島最高峰。標高758mの山で地元の方にとって、御神火様として崇めれてきました。現在の山体は1777年の安永噴火によって誕生しました。カルデラに囲まれているため、本州からは山体がはっきり見えません。伊東〜下田駅間の伊豆急行線の車窓から見えていたのは、カルデラです。
 伊豆諸島は、伊豆・小笠原海溝に沿って南北に伸びた島々の集まり。フィリピン海プレートが太平洋プレートに沈み込むことによりできたプレートの境界に沿って浮かぶ島です。プレートの境目は地殻変動が活発で、マグマの供給源となり、噴火を繰り返して陸地が形成され、北上していきました。この火山活動により島が拡大していく過程は、現在、小笠原諸島の西之島で観察できます。
 江戸時代以来、35年以内に一度の周期で噴火を繰り返しており、2023年で、前回の噴火から36年が経過しています。いつ1986年以上の規模の大噴火が起きてもおかしくない状況です。

岡田港からバスで三原山登山口へ

 岡田港からバスで25分で山頂口へ。岡田港から、いきなり急な登り坂。三原山はカルデラに囲まれています。バス内に流れる観光ガイドを聴きながらカルデラを通ると、次第に緩やかになります。

三原山頂口

 終点の三原山頂口。山頂は平坦、台地のような山体が目の前に現れます。溶岩流がくっきり残っていて当時の溶岩の流れが想像できます。地面は黒い火山灰、岩が見られます。玄武岩と言われていてサラサラな溶岩が短期間で冷えて固まったため、簡単にボロボロと崩れます。伊豆大島東部には、日本唯一の砂漠、「裏砂漠」が広がってます。火山の影響でサラサラとした火山灰が広がり、火山性ガスの影響で植物が生育しにくい環境になっているため黒い砂がむき出しの状態です。鳥取砂丘、猿ヶ森砂丘は、川によって運ばれた砂が海流、風の力によって運ばれ、堆積した原理です。
 山体が緩やかなため、三原山は初心者でも登りやすい山。動きやすい服装、タオル、飲み物など身軽な荷物でOK。荷物はバス停近くの食堂「名代 歌乃茶屋」に預けられます。食事も楽しめ、伊豆大島名物の明日葉をいただきました。レストハウスで安全のためのヘルメットを借りてから出発。
 30分ほど緩やかな斜面を歩きます。1986年の昭和噴火時の溶岩流先端部の辺りから傾斜がきつくなり、手すりを捕まりながら登ります。

三原山山頂

 バス停から1時間で山頂に三原神社が見えてくればいよいよ山頂。三原神社は、バス停三原山山頂口近くに下社、三原山山頂に上社があります。御朱印は書き置きのみですが、麓にある大宮神社で受け取り可能です。鳥居から下る参道が珍しく、他には宮崎県の鵜戸神宮も同様の下り参道です。1986年の噴火時、無事だったことから、大島の七不思議の一つにされています。
 山頂付近には、巨大な溶岩が数多く見られ、アートのような形をしています。有名な岩は、ゴジラ岩。見た目がゴジラそっくりだったから名付けられました。現在では、人気の写真スポットとして親しまれています。

ゴジラ岩

 観測所を超えると火口が見えていきます。火口を一周回るコースもあります。深さ200mもあります。噴火を繰り返して積みあがった地形まるでグランドキャニオン。蒸気も噴出しており、地球も生物であることを実感します。

名代 歌乃茶屋
営業時間 9:00~16:00
定休日  無休
アクセス 三原山頂口バス停から徒歩1分

三原山温泉

 三原山を下山し、登山口からバスで下ります。大島温泉ホテルが三原山から最寄りの温泉です。三原山の麓には、温泉が各地で湧いています。特長は、無色透明の単純温泉で万人向けの優しい温泉です。湯冷めにしにくいです。ちなみに、元町港にも近い泉質の温泉はあります。

大島温泉ホテル(日帰り温泉)
営業時間 6:00~9:00、13:00~20:00
入浴料 大人800円、小人400円
定休日  無休
アクセス 入港地から送迎車あり(予約制)

伊豆大島火山博物館

 伊豆大島の中心市街地、元町にある元町港から徒歩30分。火山、噴火について過去の記録や最新の技術から、今後発生するであろう火山災害への防災に役立てることを目的として設立されました。1階には伊豆大島の地形、三原山噴火の歴史と防災について、2階は世界の火山の特徴を学ぶことができます。

伊豆大島火山博物館正面

 1階は1986年の三原山噴火の全島避難のときの報道も知ることができます。11月15日に噴火が始まり、19日にはカルデラを越え始め、21日には外輪山にも噴火口ができ、市街地へ溶岩が流出する恐れがあったため、全島避難を決行。避難生活は1ヶ月続き、インフラ、家畜のために一部の職員が残り、守ってきたのが印象に残ります。全島避難は、船で静岡県、東京都内へ分散して避難しました。当時のニュース映像では、溶岩が吹き上げる山頂で人影(正体はアマチュアカメラマン)が話題になりました。噴火の兆候をいち早く察知するために、最新の観測技術について学ぶことができます。
 2階の見どころは、伊豆大島ジオパークのジオサイトに登録されている千波地層切断面の一部の展示。千波地層は、元町から波浮港へ向かう途中、大島南西部で実物を見ることができます。木目よりもバームクーヘンに近い見た目です。

伊豆大島のバームクーヘン

 世界には、様々なタイプの火山があります。例えば、伊豆大島、富士山、有珠山では、溶岩の粘度により、山体が異なります。溶岩の粘性はホットケーキの生地に似ており 、粘性が弱いほど薄くなだらかな形、粘性が高いほど傾斜がきつく積み上がったような形になります。噴火の仕組みから温泉、地熱エネルギーなどの恩恵についても学ぶことができ、博物館から出る頃には、火山について詳しくなってあるかもしれません。

営業時間 9:00~17:00
入場料 高校生以上500円、小中学生250円
定休日  メンテナンスのため、年10日休み
アクセス 元町港から徒歩30分

まとめ

 三原山は傾斜が緩いため、初心者、体力がそこまでなくても、登ることができます。三原山の魅力は、地球の内部を覗けることだと感じました。下山後、伊豆大島火山博物館で火山について学び、温泉は至福。

参考文献

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