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関東最東端の鉄道に乗車してみた

結論

  • 銚子電鉄は副業があるから、成り立っている。

  • 救世主、ぬれ煎餅は、しっとりと醤油が染みて、せんべいの固定観念を覆す。

  • まずい棒は、美味しい棒。


銚子電鉄

千葉県東端にある銚子市。漁業と醤油造りが盛んな街です。総武線の終点銚子駅から銚子電鉄へ乗ります。銚子電鉄は、JR銚子駅〜外川駅を10駅、20分を結ぶ6.4kmの私鉄です。5時~21時台に1時間1、2本走っています。1923年7月5日に銚子鉄道として開業しました。

現在は銚子の観光、通勤、通学の足として利用されています。観光客の利用がメインとなっており、2023年の利用者数は35.3万人でした。今回は、1日乗車券を活用して、犬吠埼への旅を楽しみました。1日乗車券は700円で購入できます。犬吠駅でぬれ煎餅1枚交換できたり、地球の丸く見える丘展望館、銚子ポートタワーの入場券1割引という特典も受けることができます。

本業は苦しい

駅と駅の距離が平均700M程度と短く、全線単線です。列車の待ち合わせができる駅は笠上黒生のみです。短くても30分間隔の運行しかできません。さらに、路面電車並みのゆっくりした運行をしなければなりません。

銚子電鉄は、本業だけでは成り立ちません。2023年度の鉄道事業の売上は1億円程度でした。鉄道運行は、安全があってこそ成り立ちます。点検など、安全を守るため、お金がかかります。鉄道だけでは、1億円の赤字を出しています。

自動車の普及などにより、バブル経済崩壊以降、何度も廃線の危機を迎えました。後ろ盾として支えられていた建設会社の倒産、元社長の横領、東日本大震災、コロナ禍は、特にピンチでした。その度に、人々の支援と副業でしのいでいました。

副業が本業になっている

銚子電鉄が運行できている理由のひとつは、副業です。銚子電鉄の収入の約8割は食品事業です。食品事業部の本部は、銚子電鉄から離れた国道126号沿いにあり、工場を併設しています。工場の前には、「ぬれ煎餅駅」として直売所も営業しています。2023年度は5.2億円の売上を誇り、食品事業単体では9000万円の黒字を出しています。千葉県、サポーターの支援も加わることにより、銚子電鉄は黒字経営ができています。

食品事業は1972年から始めました。当時、ピーク時の150万人の利用客を誇っていました。しかし、自動車が普及してきため、鉄道だけでは経営できなくなると、銚子電鉄は考えていました。その結果、副業で食品事業を始めようという英断を下しました。

最初は観音駅でたいやき、たこ焼きの販売という、銀だこのような業務形態からスタートしました。当時、家族連れがよく利用していたため、子ども向けに販売していました。観音駅の鯛焼きは、副業開始当初から、銚子電鉄の名物として50年以上支えています。現在は、犬吠駅で食べられます。

犬吠駅で買うことのできるユニークなお土産

駅のお土産屋さんは、犬吠駅が最大規模です。犬吠駅は、地中海沿岸にありそうな開放的な雰囲気でした。

本社のある仲ノ町駅、列車の待ち合わせができる笠上黒生駅、終点の外川駅(土日限定)でも買うことができます。オンラインショップもあります。鉄道会社とのつながりから、京王御岳登山鉄道、南海電鉄、肥薩おれんじ鉄道でも購入できます。

ぬれせんべい

銚子電鉄の看板商品であり、救世主です。ぬれ煎餅があるから、今の銚子電鉄があると言っても過言ではありません。特に、2006年、当時の社長の横領発覚は最大のピンチでした。法定検査を受けられず、廃止寸前まで追い込まれていました。インターネットで購入を呼び掛けたところ、注文が殺到し、廃止が回避されました。その後も、ぬれ煎餅ブームが定期的に訪れます。そのたびに銚子電鉄を救っています。

1995年、自分たちでもできそうという理由でせんべい作りを始めました。銚子市にある柏屋で1960年代に、ぬれ煎餅が誕生しました。ぬれ煎餅は、素焼きのせんべいをアツアツのうちに、かつお出汁の効いた醤油ダレに浸けて染み込ませます。

銚子電鉄のぬれ煎餅は5種類あります。赤いラベルの濃口、減塩タイプの青いうす口味、緑ラベルの砂糖を加えた甘口味、橙色のパッケージをした、あまから味、銚子限定胡麻ぬれ煎餅(甘口)です。ぬれ煎餅駅では、自分で焼くこともできます。

最初食べたとき、「煎餅はパリパリしているもの。」という固定観念があったため、「湿気っているのではないか?」と疑いました。おそるおそる2枚目を食べると、湿気っているから、ぬれ煎餅だと気づきました。3枚目を食べると、噛むごとに、にじみ出る醤油の旨味から、たまらなくなります。

ちなみに、オーブントースターで温めると、醤油の香りがより引き立ちます。

まずい棒

ぬれ煎餅に次ぐ看板商品です。2018年8月3日に発売されました。うまい棒のオマージュです。発売日は、語呂合わせから、破産の日にするなど、経営難を自虐ネタとして作られました。「マズいんです、経営状況が・・・」というキャッチフレーズも経営のまずさを物語っていました。3万本売れればいいと覚悟していました。しかし、品切状態が続くほど、人気を呼び、1年も経たず、100万本を売り上げました。

1パック410円、1本40円です。経営がまずすぎるため、うまい棒の約3倍の価格で販売されています。パッケージから、経営のまずさによる絶望感を受けます。味は、美味しいです。チーズ味は、うまい棒より濃厚です。

今まで12種類の味が誕生しています。コーンポタージュ、チーズ、チョコが定番です。岩下の新生姜と同盟を組んでから、岩下の新生姜味も誕生しています。犬吠駅の2階では、栃木市にある岩下の新生姜ミュージアムを詰めこんだ世界観が広がっています。2019年の訪問時は、岩下の新生姜ミュージアムが犬吠駅にやってくる前でした。栃木市にある岩下の新生姜ミュージアムに行った話は、こちらをお読みください。

他にも、銚子港名産のイワシ、サンマ、カツオを使った佃煮など、オリジナルグッズが豊富です。

車両は他社の旧型車両を使用

新車両を導入するより、旧車両を改造したほうが安く済みます。かつて他社の鉄道で活躍していた車両を活かして改造されるため、動く鉄道博物館になります。長野電鉄、大井川鉄道など、ローカル鉄道では、他社から譲り受けた車両を改造して運行されることが多いです。

銚子電鉄では、南海電鉄、京王電鉄から譲り受けた車両を使用しています。2024年、南海22000系を改造した銚子22000系がデビューしました。

マッピング電車

現在は運行してません。2019年乗車時、千葉県のご当地キャラ、チーバくんをマッピングした電車に乗ることができました。真っ赤な車内には、チーバくんが溢れていました。チーバくんとも撮影ができます。運が良いと本物のチーバくんに会うこともできました。

ユニークな駅名

銚子市の活性化と銚子電鉄の経営改善のために、考え出されたアイデアです。駅名愛称をつくることができる権利です。権利を買うことにより、企業は、スポンサーとして、社名を駅標、時刻表に載せることができます。

元々ある駅名と並べて愛称がつけられます。観音駅であれば、「金太郎ホーム」、本銚子駅は、「上り調子 本調子 京葉東和薬品」、笠上黒生駅は、「髪毛黒生」というユニークな愛称がつけられていました。


今回は、関東最東端の銚子電鉄を利用したときの話をしました。銚子電鉄は、鉄道を止めないというあきらめない精神、本業に捉われないチャレンジ精神が、経営を支えていることを学びました。

記事を書いているうちに、ぬれ煎餅、まずい棒が恋しくなりました。

参考文献

銚子電鉄3年連続黒字 今年も列車内で株主総会 副業部門、安定した収益.千葉日報.2015年6月20日朝刊(2024年9月3日閲覧)
https://www.chibanippo.co.jp/news/economics/1243047

  • 地球の歩き方編集室,(2023),北海道2023~24 (地球の歩き方W),学研プラス

  • 堀内重人,(2013),チャレンジする地方鉄道 - 乗って見て聞いた「地域の足」はこう守る,交通新聞社

  • 矢野直美,(2011)鉄子の全国鉄道ものがたり,北海道新聞社


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