スープカレーが無性に食べたくなる恋愛小説
感想を一言でまとめると…
札幌に行ってスープカレーが食べたい。
幸野つみさん作「ぶこつでやさしいスープカレー屋さんKIBA」
著者の幸野つみさんは、札幌市在住のクリエイターさんです。北海道を舞台にした小説、エッセイなどにも挑戦されています。
幸野つみさんが書かれた恋愛小説「ぶこつでやさしいスープカレー屋さんKIBA」は、札幌にある小さなスープカレー店で起こる人間ドラマが描かれています。
進学を機に帯広から札幌に引っ越した女性、福島菜々恵さんが、「カレーが食べたい」というところから、スープカレーKIBAというお店に入るところからお話が始まります。マスターの市来大和さんとの約50日間の交流が描かれています。最後まで読んだ方は、マスター、お店のヒミツがわかります。予想を裏切られる展開で爽快感が広がりました。ヒントが堂々と書かれているのに、気づけませんでした。
連載後の裏話も、腑に落ちるエピソードばかりで、思わず「なるほど!」と頷いてしまいました。
「ぶこつでやさしいスープカレー屋さんKIBA」は恋愛小説です。しかし、グルメの描写もおもしろく、グルメの部分だけを読んでも、のめりこんでしまいます。気づいたら、スープカレーのお店で食事をしているかのような錯覚に陥りました。
真っ先に浮かんだことは、「スープカレーが食べたい」
札幌発祥のスープカレーとは?
この小説のシンボルは、スープカレーです。スープカレーとは、札幌市で誕生したサラサラのカレーです。ライスとカレーの別盛りスタイル、ゴロゴロ入る大きな具材、風味豊かで食べていくうちに身体がじんわり温まるスパイスが特徴です。和風出汁、エビ出汁を使ったり、スパイスの種類、配合を変えたり、具材に納豆を用いるなど、札幌市を中心に、個性あふれるお店があふれています。
食べ方も自由なのは、札幌のスープカレーのいいところ。スプーンにご飯を一口大持ってスープに浸して食べることがフォーマットとされていますが、別々に食べても、よいです。ご飯にレモンを添えられているお店もあります。レモンを搾るとサッパリ味に仕上がります。
個性あるスパイス、大きな具材、滋味あふれるスープの組み合わせに魅せられて、札幌を訪れたときはスープカレー屋さんに寄りたくなります。
スープカレー屋さんKIBA
主人公の福島さんが訪れたお店が、「スープカレー KIBA」。黄色い軽トラックが目を引くお店です。中に入ると、地元に帰ってきたかのような懐かしさが感じられました。
注文の仕方から、スープカレー屋さんあるあると共感してしまいました。ご飯の量、辛さ、ライス、トッピングを選ぶスタイルは、定型文です。メニュー名も具体的かつ食欲をそそる表現です。「十勝産」、「店長こだわり」とメニューに書かれたら、気になって注文してしまいます。
トロトロかつ旨味の詰まった豚の角煮、野菜のポテンシャルを最大限に生かした焼き、絶妙なバランスに調合され、まとまりもあるスパイス、懐かしさも演出するカレーベースという構成は、小説を読んでいるだけで、おなかが空きます。レモン水、ご飯についているレモンによってバランスがとられています。札幌旅行のときに、KIBAがあったら、立ち寄ります。
スープカレーの食べ方を丁寧に伝えたり、レモン水を提供したり、会話から、店主の市来さんの丁寧な仕事ぶり、さりげない優しい人柄が見えます。角煮カレーが、福島菜々恵さんと市来さんとの物語のはじまりを告げるのでした。
スープカレーが食べたくなる作品
コク深いスープ、豊かなスパイス、ゴロっと入った野菜、柔らかな肉の組み合わせを楽しみたくなりました。角煮カレーが気になり、読むだけでおなかが空きました。札幌のスーパーマーケットでスープカレーの素を買い、近所の直売所で夏野菜を買い、Youtubeでトロトロ角煮のレシピを探し、再現したくなりました。
恋愛小説なのに、食欲をそそられる素敵な作品でした。
2024年の創作大賞の反省、多くの方の作品を読み、感想を書くことができなかったこと。2025年は、多くのクリエイターさんの作品に向き合って感想を積極的に応募します。
よろしければサポートお願いいたします!いただいたサポートは、よりよい記事の作成、クリエイター支援などnoteのクリエイター活動に利用させていただきます!