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フェーズ毎の社長の仕事について振り返る

みなさんこんにちは、テックタッチ代表の井無田です。
当社製品が属するDAP市場における国内シェアNo.1の3年連続達成を記念して、約1年ぶりとなる弊社マネジメント陣のnote連載リレーを実施します。
今回も自分たちがエンタープライズSaaSの先輩が少なかった時のことを思い起こし、市場に僕らの経験を少しでも還元できれば、という思いで書いていきますのでお楽しみに!

まずは第一弾として、僕から、スタートアップ代表がよく聞かれる質問TOP3に入るであろう、「どんなことに時間使っているの?それってフェーズごとにどう変化したの?」に答えるnoteを書いていきます。
個別事象が参考になるかは置いといて、少し「社長」という得体の知れない生き物の動きが理解できるようになれば幸いです。

そもそも論:経営って何?社長の仕事とは?

経営って何?

数年前、とあるみんなが知っている先輩経営者から、1on1で「いま事業成長のボトルネックになっているのはヒト・モノ・金どれなの?」という質問をいただきました。頭の整理ができていなかった当時の僕は口篭ってしまいましたのですが、「そういうフレームワークで常に整理をしつつ最適な打ち手を打ちなさい、それが社長の仕事だよ、経営というものだよ」がメッセージだったんだと思います。
社長の仕事とは、「企業を成長させるための、①戦略的な意思決定をし、②リソースの最適配分投資を行い、③個別事業の最適化を徹底する」ということなのかなと。

どうやって経営ってできるようになるの?

シリアルアントレプレナーやこれまで経営経験がない限りは、みんな未経験から始まります。この辺、スタートアップはうまくできているものだと思っていて、会社を始めた当初は、経営判断は比較的シンプルで、だんだん会社が大きくなるにつれて複雑な判断が必要になっていきます。なので、経営初心者の全員にとって、練習・失敗していく時間があります。この間に小さな経営判断を積み重ねていくことによって修行するのが最短ルートなので、ご安心を。
(ちなみに、スタートアップ初期段階の経営判断は、「事業選び」「仲間選び」「調達&資本政策」など、シンプルと言いつつ間違えるとクリティカルなものばかりではありますが・・)

事業ばっかりやってる感覚だけどそれっていいの?

スタートアップの場合は、「自分自身もリソースとみなし、自ら最前線で事業執行する」ということも超重要だと思います。具体で何をすべきかは、参画してくれているメンバーの顔触れ/能力や、仕事の性質によって決めていきます。また、「xxxが弱いな」と思ったらそこに自分のリソースを投入していく必要もあります。
特にスタートアップ初期段階は、9:1くらいで事業に没頭するイメージになるかなと思います!

①:営業とプロダクトロードマップ
「提供している機能・サービスがお客さんの課題を解決できてるの?」
「どこにどれだけ投資すればどうKPIが改善してどう成長できるの?」
「そもそもこの事業いけるの?投資すべき?撤退すべき?」
など、特に事業の初期段階は細かい判断の積み重ねが超重要になります。なので、失敗できない場合は、絶対に二次情報ではなく、一次情報を取りにいった方がいいと思います。少しの情報取得の遅れが、判断の遅れに繋がってきます。

②:採用
社長の仕事の大半は採用、と言う方は多いですね。これは「社長がその会社を売る最強の営業マンだから」と言った理由もあるかと思いますが、それ以上に社長が現状見渡した時にどんなポジションにどんな人が必要かを考える仕事だから、ということも大きいと思います。採用もバランス感覚、経営感覚が求められると思っていて、いつまでに、どんなタスクを、どんなクオリティで解決していきたいのか、そのためにはいつまでに、どんな人材を採用しなければならないのか、常にこれを考えていくことで、事業をスケールさせられるようになっていく感覚があります。

僕の仕事のふりかえり

皆さんの参考になるのかやや不安ですが、簡単にこれまでやってきたことを振り返りつつ、当時のtipsなどをちょこちょこ書いていきます。

プレシード期(サービスリリース前)

社員2→5名、業務委託10名+

エンジニア(&デザイナー)採用が命。非エンジニアなのでバスケも行けてた

この時期の最重要ポイントは、とにかく「成功する事業を選定し、参入タイミングを見極めること」です。経験上、成功しない事業を継続していくことほどつらいものはないです。ですので事業の見極めにはしっかり時間を使った方がいいと思います。
顧客の課題解決につながっているかはもちろん最優先での見極めが必要ですが、それ以外にも、TAM/SOMの計算や、当該ドメインの海外市場における状況調査など、基本的な宿題すらやっていない起業家が多すぎると感じます。

参入タイミング」も重要です。僕の感覚では市場が受け入れreadyになってから(=技術的・市場的観点から)、競合の参入が次々に発生するタイミングまでは、領域によって1-4年程度かなと思います。この1-4年を新規事業のウィンドウと考えたとき、自分が今やろうとしていることがウィンドウの中なのか、しっかり考えた方が良いです。

あとは「採用、採用、採用」です。とにかくエンジニアを口説きまくりました。僕はエンジニアバックグラウンドがなく、プロダクトは共同創業者CTO日比野に任せていたため、この時期は役立たずになってしまうので、エンジニア採用にリソースを全振りしました。業務委託メンバー中心ではありましたが、社員も業務委託も多くのメンバーが現在のエンジニアチームの中核となってくれています。ここはエンジニアと一緒に仕事した経験がどの程度あるかによりますが、全くないのであれば技術顧問などに頼るのもありですね。

シード期(〜MRR500)

社員5→20名

シリーズA調達を目指し、パイプライン表と毎日睨めっこ

この時期は、人材も枚数が足らず、ただし投資のためには調達、調達のためには売上が必要なので、とにかく初期売上を作ることに全力投球の時期です。「MRRxx万円まで行ったらシリーズAの調達をする」などと目標を決めて(何ならVCと握って)、逆算して数字を作りにいくのがおすすめです。
一人一人のカバー範囲が広く大変。全てに注力することが難しいので、毎月フォーカスすべき場所が変わります。場合によってはバックオフィスもいなかったりします、僕は2期目途中まで経理やってました。

Biz側人材もこの時期に数名採用する形になることがほとんどかと思います。
初期の営業にはどんな人を採用すべきか?」もよく聞かれる質問ですが、プロダクト共感がとにかく高く、テリトリー意識が低く柔軟になんでもやってくれる、スタートアップっぽいキャラクターの人が良いと思います。顧客、機能、ユースケース、プライシング、などムービングパーツが定まらず大量に高速の仮説検証を繰り返す必要のある時期の営業は少し特殊なので、型化された営業に慣れている人はストレスに感じる可能性があるためです。

シリーズA(MRR500〜5,000)

人数:社員20→50名
任せられたこと:バックオフィス全般(to 管理部長)、資金調達/経営管理(to CFO)、カスタマーサクセス(to VPofCS)

CSを預けられたおかげで、とにかく営業!!

この頃は、ある種採用における黄金期だと思います。経営陣のシートが空いていることが殆どだと思うので、特にスタートアップ/IT経験のない、他業界参入組のエースプレイヤーを採用するビッグチャンスです。シリーズB以後だと、どうしてもいきなり経営メンバーにするのであればスタートアップ経験者でないと歪みを生むことも多いのですが、シリーズA時期ならば、単純に優秀な人を採用して、一緒に成長していくことができます。この時期に、マッキンゼー出身の垣畑(2020/8)、カーライル出身の中出(2021/3)の2名にjoinしてもらえたのは本当に大きかったです。この2名の採用はどこかの役割を特化して持ってもらう、というよりは、まさに僕が全く抱えきれてなかったところの大きいチャンクを持ってもらう、分担してもらう、という印象がぴったりの採用でした。

シリーズAの時期は、「売上の蓋然性と再現性の証明」つまりはPMFとの戦いです。はっきり言って、BtoBはある程度の販売能力があれば最初は何件かは売れます。その中で、しっかり顧客のusageを向上しつつ、チャーンされない、そしてLand&Expandまで持っていけるようなプロセスを作っていく、長い戦いです(エンタープライズだと本当に長い)。いろんな会社がここで振り落とされるのを見ます。本来であれば、社長として僕がCSをやってプロダクトFBサイクルを見る、というのが王道かもしれないのですが、ここはいるメンバーのキャラクターなどから、垣畑がCS、僕が営業をやる、という分担で決めました。垣畑が作り上げてくれたCSチームが当社の最大の武器の一つとなっているので、ここはいい判断だったと思います。

また、中出の加入により、「今期の数字をいかに作るか」という思考を脱却して、「IPOまでの道筋を逆算してどう数字を作るか」という戦略を考えられるようになったのは大きかったです。「事業型のCFOならシリーズAでjoinしてもらっても良いと思うよ」も、先述の先輩経営者のアドバイスで決めました。(ちなみに中出はウィークリンクは自分で担当する、を地で行っていて、彼の当時の担務は、CFO/経営管理業務に加えて、初期のデマジェン(パートナー+マーケ)、SaaS事業立ち上げ、公共立ち上げでした。化け物か)

また、自分としてPRにこの時期にヘルプで入ったのは大きかったです。プロの方々にはもちろん及びませんが、PR感覚を養うことは事業にも活きます(ビジョナル南さんなど、PRに強い大物起業家の人も何名かいますね)し、未経験職種の採用は鬼難しいので、採用の勘所を掴めたのも大きかったです(おかげで、スターである中釜の採用に繋がりました)。

シリーズB(MRR5,000〜現在)

人数:社員50→110名
任せられたこと:営業全般(to VP of Sales)、プロダクト(to CPO/CFO)、マーケ・PR(to Head of PR/Marketing)

採用

僕個人の営業力には限界を感じていました。CIOの方々とのアポの取り方もコミュニケーションの取り方もわからない。僕がやっていても会社のキャップになるな、と思い始めていた矢先にjoinしてくれたのがVP of Sales西野でした。彼に営業周りの全てを任せられたことで、売上の上昇角度が別物となり、僕は他の業務に注力できるようになります。

また、重要な役割変更の意思決定を2件実行しました。中出をプロダクトの責任者としてCPOに(CFOとの兼務は前代未聞のはずw)、そして中釜をPRだけでなくPR/マーケ兼務の責任者に。
中出のプロダクト責任者への移行は素晴らしい決断の一つでした。これまでよりも開発ロードマップが戦略に沿ったものになり、効率が格段に上昇しました。
中釜は数値化と施策PDCAに強く、エンタープライズマーケという難しいジャンルのマーケティングの隠されたカードを次々とめくって答え合わせしてくれることを期待しています。
多くの戦線を持ってくれた中出の後釜として、しっかり事業を任せられるメンバーを採用しています。例えばSaaS事業責任者の滝沢です。

僕自身は特に難しいポジションやハイレイヤー採用には継続してコミットしています。同時に、優秀なキーマンが数多く入ってくれているので、僕自身は兵站担当として、彼らがストレス少なく、パフォーマンス最大化してくれるための採用支援、設計を考える仕事も多くなってきました。「上司」というよりは「後見人」という感覚が非常に大事だと思います。全体を見ながらリソースの最適配分を決められるのは、社長なので。

未来へ

今年、テックタッチは設立6年を迎えます。
テックタッチという事業領域は3年連続国内シェアトップ(シェア自体も50%越えています)でもあり、またホワイトスペースが大きい領域でもあり、ここから数年間の視界は良好です。

僕自身の時間を第二創業である新規事業や海外展開に振っていくべきタイミングが来ています。そのために、事業(特に経営管理/Ops面)と採用をお任せできる人のjoinを熱望しています!

むすびに

前提なく、事業、プロダクト、顧客、組織と向き合うことができ、毎週のように新たな発見や気づきとの出会いがある、スタートアップは本当に面白いです。
スタートアップ業界に参画する人、スタートアップを始める人が世の中に増えていくことを心から願っています!!

テックタッチの他の経営陣のnoteはこちらです!
https://note.com/yo_kakihata/n/nc7a7198f67b5
https://note.com/masaya_nakade/n/n71b3d14f522a
https://note.com/yukiko_nakagama/n/nf4fee9644531
https://note.com/soushi_nishino/n/na1aaa7446495

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