【川崎戦ふりかえり】徹底検証!ガンバの右サイド「崩壊」は右SBのせい?

こんにちは。ひっっっさしぶりのnoteです。

昨年、得点シーンに関する分析記事を書きました。当初の予想通り1度きりになってしまったのですが、いくつか反応も頂きましたので今年も同じようなものをやろうかと思ったり思わなかったりしています。(よく考えたら攻撃のパターンがよく分からない今、もしこの記事を昨年1年間やり続けていたら何かが見つかっていたのかもしれないですね!!後の祭り!!)

さて、今季については諸事情により得点分析をしていたら記事になんかならないのでじゃあ失点パターン...?となったんですが、そんな悲しい分析もありません


ところで、川崎との一戦を終えてtwitter上では右SBの佐藤(ひいてはガンバの右SBの層の薄さについて)への批判の声が多く上がっていました。失点が2つとも右サイドを破られたものだったからです。
しかし、僕はこの論調に疑問を感じていました。果たして失点は右SBの責任なのか?また、右SBを補強しなかったのは強化サイドだけの責任なのか?

ということで、失点シーン分析になってしまう予感がビンビンにしていますが取り急ぎ2つの疑問についての僕なりの考えを書いていこうと思います。題して
「徹底検証!ガンバの右サイド「崩壊」は右SBのせい?」



1失点目(41分、レアンドロ・ダミアン)

川崎の先制点はレアンドロ・ダミアン。
YouTubeのハイライトを見ると分かるのですが、前線で引っかけたガンバのショートカウンター⇒川崎のカウンターという流れで生まれた失点でした。

注目したいのはハイライト内2:03(40:31)のシーンです。宇佐美のクロスを拾った山根が縦に付けると、家長がフリーで待ち受けます。

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全景は見えませんが、おそらくクロス後の配置はこんな感じでしょう。人数的にはガンバの方が多かったですが昌子は家長に比較的自由を与えてしまい、ターンを許します。逆サイドにスピードのある長谷川がいたことも念頭に置いていたのかもしれません。

その後、家長はスプリントしてきた脇坂に出します。ガンバは戻しの形がややまずく(井手口が家長に食い付く)、脇坂がフリーに。

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脇坂は昌子がそのまま追いますが、寄せは間に合わずまたもフリーな状況で長谷川へスルーパス。佐藤が裏を取られ、そのままレアンドロ・ダミアンのゴールシーンへと繋がりました。

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この失点に至るまでの問題点を箇条書きにまとめてみましょう。

・山根に対し黒川が中途半端に前へ出てしまった(これにより後ろの人数が減る)
・昌子が家長をフリーにしてしまった(直前ボール保持時の全体配置の問題と、昌子の個人的なポジショニングの問題)
・井手口の戻し方(脇坂がフリーに)
・長谷川に対する佐藤の身体の向きとポジショニング(もう少し中を閉めれば...)
・シュートブロックが滅法上手い昌子が中央におらず
・全体として戻しが遅い(対する川崎はゴール時に旗手・山根も含めた5人がPA内に)

確かに佐藤にも問題はありました。しかし1失点目に右サイドが破られたのはあくまで「結果論」であり、そこに至るまでにチームとしての構造に問題があったのではないかというのが僕の見解です。
その「構造」とは攻撃時の予防的カバーリングというチーム戦術であり、またネガティブトランジション時に「どこに戻すか?」という共通理解の問題でもあります。

2失点目(76分、三笘薫)

2失点目はジョーカーとして投入された「天敵」三笘薫から。佐藤が裏をブチ抜かれたことで、冒頭の大きな論争を巻き起こしました。(途中から三笘が入ってくるのはいつだかのCLで途中からスターリングが出てきてカルバハルがkillされていたのを彷彿とさせますね。どうでもいいですが。)

さて、これも広義の意味で「ネガティブトランジション」の局面から。レアンドロ・ペレイラがボールを奪われた後に田中を3人(倉田・奥野・矢島)で囲みますが圧はゆるく、結果的に登里をフリーにしてしまいます。その瞬間に三笘にスプリントされ(以下略

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このシーンの問題点としては、切り替えのタイミングで一瞬チームとして前から行くのか、それともミドルブロックを敷くのかが中途半端になってしまったということにあると思います。奥野や佐藤の意識は「前へ」でしたが一美や倉田との意思疎通は取れておらず、倉田はワンテンポ遅れたタイミングで登里へ。佐藤はおそらく登里-三笘の所でハメる想定で前へ出ていますが、フリーで蹴らせたらそりゃ裏に出されます。

もう一つ疑問に思ったのは、なぜCBはカバーが遅れたのか?ということ。もちろん三笘のコース取りや加速は素晴らしいのですが、佐藤との脚力・残り体力の差を考えれば三浦には準備してほしかったところ。

・黒川や矢島の戻りが遅い
・奥野が出たことでライン間がめっちゃ空いて三浦が判断に迷った?
など他の要因や問題点も考えられますが、頭が痛くなってくるのでこの辺りでやめておきます。ってか三笘上手いな...早く海外行ってくれ...


まとめその1:「右SB不足」は強化部のせい?

以上、2失点について分析してみました。くり返しにはなりますが「右サイドが破られたのは右SBだけの責任ではない」というのが僕の考えです。

ここに付随して、シーズン前に松波GMが「SBは補強ポイントではない」と発言したのが批判されていました。この点についても個人的な見解を少し書いていこうと思います。

(以下妄想)

松波GM発言の意図として考えられるのは3つです。
①本当に補強はいらないと考えている
②補強は必要だと思ってたけど現有戦力への配慮・言えない事情があった
③ブラフ

③は知りようもないのでここでは無視します。

②の場合、「実際に補強には動いていたけど獲得には失敗した」となることは問題です。強化部のミスと批判されても否定はできません。ただし留意すべき点もあります。以前のガンバであれば攻撃的なスタイルや競技力ゆえにブランド力も高く、「非売品」の選手を「強奪」することもできていたでしょう。
しかし悲しいかな、今のガンバにかつてのブランド力はないと考えるのが妥当です。しかもコロナの影響で金銭的な余裕もそこまでない。となると、選択肢は限られてきてしまいます。

➀の場合は慎重に考察する必要があります。まず、GMが本心で「補強は必要ない」と言ったのだとしたら、それは監督はじめ首脳陣とのコンセンサスが取れているはずです(監督の要望を無視してこう言ってたら流石にヤバすぎるのでその可能性は排除したい)。

監督が「補強は必要ない」と考えたのだとしたら、それは「ボール保持して押し込む」というゲームモデルに合致する守備に多少難はあったとしても攻撃でプランを実行できるSBを希望し、市場にはいないから有事の際は小野瀬や奥野で代用しようと考えた、と想像できます(そもそも主力は髙尾がいるし)。
だとすればその想定が甘かった訳であり、ゲームモデルを仕込めなかった指導陣の責任も追及されるべきです。活動停止という不測の事態があったことは考慮すべきですし、ここから仕込んで巻き返す算段があるなら何ら問題はありませんが...(だとしても負け過ぎだけど!!!笑)(更に言えば、様々なタイプの選手を揃えなかった対策・詰めの甘さも原因です)

(以上妄想)


まとめその2:そもそも論としての要素還元的思考批判


「そもそも、サイドが破られているのは右SBだけのせいですか?」

僕が今回伝えたかったのはこの点にあります。「右SBの裏を取られているのは右SBの問題だから右SBを代えれば解決できる!」もしくは「右SBを代えなければ解決できない!」というのは要素還元的な思考であり、サッカーの本質を突いた考えではありません。

例えば、川崎の事例を見てみましょう。僕は川崎の試合を追っていないので安易な言い切りはできませんが、旗手がSBとしての守備を本職の選手と同レベルでできるとは思いません。しかし守備について言及されることが少ないのは
・川崎は押し込まれる時間帯が短く守備の粗が目立たない
・中盤の戻しやCBのカバーなど、他の選手(≒チーム戦術)で弱点を補っている

といった理由があると予想できます。そして、だからこそ、攻撃面で強みを出せる旗手をSBで起用することができるのです。

SBとして小野瀬を起用した采配も同じ文脈で読み取ることができるでしょう。旗手にあって小野瀬になかったのはボール保持の時間帯と周囲のカバー。つまりガンバと川崎の「チームとしての出来の差」が「SBの守備」という一側面で表出したにすぎない、と見做すことが可能なのです。


もちろん個人としてある程度の守備原則は必要ですし、佐藤を起用した意図は明らかに「守備」にあったはずなのでマイナス評価は避けられないのも事実ではあります。


おわりに:広島戦を終えて

広島との一戦では右SBに奥野を起用。攻撃面で良さを見せ、守備でも失点に繋がる大きなミスはありませんでした。

それ以上に目立ったのは被カウンターでの粗さ。特に2失点目での井手口の動きはvs川崎の1失点目を思い出し頭が痛くなりました(ちなみに失点シーン分析は試合前にしていました)。

髙尾がトップコンディションを取り戻すまでは現状のような起用法が続くでしょう。宮本監督解任論も少しずつ大きくなっていますが、監督が替わってもSBの駒が増える訳ではありません。いずれにせよ、SBの人選が試合の大勢に影響を与えないような「チーム力の底上げ」を期待しています。


(以下宣伝)

僕の所属する東京大学ア式蹴球部についての記事です。よろしければこちらもお読みください。テクニカルスタッフの後輩がfootballista様でサッスオーロについての分析記事も書きました!


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