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【小説】硝子の転入生【ついなちゃんのスクールライフ】
和親のいざないを受けて教室の中に入って来た、華奢な少女の姿を見て、教室中が驚きに包まれた。
その少女の肌は透き通るように白く、大きく見開かれた瞳は琥珀色をしている。
何より驚かされたのは、真珠色に輝く彼女の見事な長髪だった。頭の両脇でツインテールに結び、ボリュームを抑えるかのようにリボンがきつく巻かれている。それでも尚、結んだ髪の先端が地面スレスレに届きそうな案配だ。恐らくリボンを解き、ツインテ
【小説】体験入学前夜【ついなちゃんのスクールライフ】
神奈川県・厚柿市。鶴賀家の一室。
「…はぁ」
ベッドの上で、パジャマ姿のついなが枕を抱いて、不安げに溜息をついた。
「どうしたの、ついなちゃん?眠れないの?」
そう言いながら、楓がマグカップをふたつ乗せたお盆を持ってついなの部屋に入ってきた。マグカップからはかすかに湯気が昇っている。
「ホットミルクよ。眠れない夜はこれに限るわ」
そう言って楓は、かわいらしい熊の意匠が施されたマグカップを
【小説】新しい家族【ついなちゃんのスクールライフ】
それから数日後。
ついなは、祖父の宝庵に伴われ、大きな荷物を抱えて荒人と楓の家にやって来た。
「これからは荒人殿を父と崇め、楓殿を母と崇め、身を慎み、己を律して過ごすのだぞ。たまには文のひとつも送れ」
「おじーちゃん…」
「哀しそうな顔をするな。今生の別れではない。儂が関八州に用があって出向いた時は必ず時間を作って逢いに来る故に、心配するな」
ついなに向かって力強く、諭すようにそう言った宝庵は
【小説】事の起こり【ついなちゃんのスクールライフ】
そもそもの事の起こりは、半月程時を遡る。
神奈川県・厚柿市郊外。
坂道を登った丁度てっぺんにある、白い壁も眩しい新築の一軒家。
そのリビングで、セーターにジーンズ姿の、背が高く少しだけ赤ら顔の目鼻立ちの整った紳士が、コーヒーを飲みながら寛いでいる。
彼の名は鶴賀荒人。相模原市にある鉄鋼会社の営業マンを生業とする、温厚篤実な男だ。
「あなた、コーヒーのお代わりは要る?」
ダイニングから長い
【小説】序章【ついなちゃんのスクールライフ】
20XX年、春。
神奈川県・厚柿市に隣接する神域。
小高い丘の上に建つ、荘厳な社がひとつ。
朱塗りの大鳥居、白木の材も眩しい本殿、そしてその向かい側に建つのは生活感溢れる社務所。社務所の玄関には丸太を荒く削いだ看板がぶら下がっており、墨痕鮮やかにこう記されている。
【御剣神宮】
その、ゆかしき社…御剣神宮に続く石段を、橙色の地に鶴の刺繍が入った着物を着た小柄な銀髪の娘が、下駄の音も軽やかに歩