(けいざい+)携帯5G戦略:下 器は作った、さて中身は

実際5Gで動画を見てみても、4Gの画質や通信速度と大きな違いは感じなかった。各社は5Gサービスの開始に合わせ、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)でより臨場感のある動画サービスを出すなど、新たな需要の掘り起こしに躍起だが、業界内で「スマホが5Gになっても、5Gならではの『キラーコンテンツ』がない」という悩みは深い。
2020/12/05 朝日新聞 朝刊 大阪版 (けいざい+)携帯5G戦略:下 器は作った、さて中身は

●5G時代のキラーコンテンツとは、なにか?
●差別化をどこで出せるのか、興味のあるところ
●補完財企業が、出てくるのか?
●コンテンツまで一元支配できるキーストーンとなると、また、アップルやアマゾンにかっさらわれるのかな?

ところで、今、日経のわたしの履歴書に掲載されている、福川伸次氏が面白い。
昭和20年5月の2回目の東京大空襲は、東京駅の東京ステーションホテルに泊まっていた時に受けて、避難したのが、今のオアゾがある旧国鉄本社ビルというのに目を引いて読みはじめた。

氏は通産次官まで務められた方だが、1980年代、マイケル・ポーターがやってきた話なども興味深い。

そのころ産業政策局長だった私のもとに、米国から来訪者があった。ハーバード大学のマイケル・ポーター氏。欧州などを回り、85年に「ヤング・リポート」を発表する準備だったようだ。
私は彼の目的を「日本の産業政策に注文をつける材料探し」ではないかと考えていた。ところが実は米国の大戦略作りの一環だった。彼はいずれ世界で情報産業が大きく伸びると確信していた。
発表されたリポートは、情報技術の革新、情報ハイウエーの展開、特許権の保護、人材育成の強化が柱だった。
米国は同盟国日本の巨額の黒字を一方で非難しながら、同時並行で自国産業を強くする戦略を練っていた。その後も官民から国家戦略への優れたリポートが次々に出た。
日本人はそういう動きを見逃し、90年代以降、情報産業の発展に立ち遅れた。アングロサクソンは非常に戦略的な民族だ。米国はいま国をあげて、中国に対する高いレベルの中長期戦略を練っているに違いない。
2020/12/01 日経新聞 電子版 私の履歴書 福川伸次氏

そんな氏の以下のコメント。坂の上の雲の志。今の日本がもう一度、自分を見つめ直す必要があるのではなかろうか。

バブル経済の最盛期に「もう欧米から学ぶものは何もない」とうそぶく経営者がいた。「坂の上の雲」を目指してひたすら歩み続けた日本人が謙虚さを失い、バブル経済崩壊を契機に坂道を下り始めた。最近の日本は人工知能(AI)や電気自動車(EV)などで世界に後れをとっている。
私は通産省に33年間勤め、政界、経済界と交流した。「着眼大局、着手小局」。自省をこめて、これが国家戦略の要諦であるという思いが今も胸にある。
2020/12/01 日経新聞 電子版 私の履歴書 福川伸次氏