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殿!

「殿!恐れながら!」

 座したまま畳の目を凝視して息を吐く。

「よい、申せ。だがその策に命を懸けよ。」


じっと額の脂汗が吹き出すのを感じる。
丹田に力を入れる。

「先の詮議にて仰せは早計かと。然るに左大臣の策を上策とし、先ずは補給線の確保を。」

                              
一気に、静かにまくし立てる参謀のこういう台詞が言いたい。顔は堺雅人か岡田准一がいいな。2週間に1回は、夜寝る前に軽く練習だってしている。

だが俺の人生には、このトーンで佇むシーンがない。ただただ残念で仕様がない。


でもこのトーンでカッコつければ、ひょっとして、なんか失礼な事言ってもごまかせるのでは?と気づいたのは儲けものだ。


殿!恐れながら!
正直さっきの会議で爆睡しておりました。
あと、隠れてゲームもしました。
いえ、さすがにパズル系です。


殿!恐れながら!
朝、もうあと5分、あと5分と、気づいたら夕方になっておりました。
いえ、もう今日は休みます。
あと、この電話のついでに明日も休みます。


殿!恐れながら!
誰もいない道路では赤信号で待つ必要なくないですか。すごい嫌です。


殿!恐れながら!
もうアカウントとパスワード求めないでくれます?


殿!殿!殿!

殿も逃げるだろう。

殿の居ぬ間に、yes yes ya'all。




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