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#8 トピックストリングを使って段落中の文章の流れをよくする その1

はじめに

今までの記事では、Known-to-Newの原則強調の原則を使い文単位で文章の流れをよくする方法を書いてきました。

今回から、段落単位で文章の流れをよくするのに役立つトピックストリングについて書いていきます。

トピックストリングを使うと段落内での文章の最適化はかんたんな連立方程式やパズルを解くようになります。例えば、段落最適化の一部は後述するように、既知・未知の情報や強調部分を並び替えて焦点の定まったトピックストリングを作ることで達成できるからです。

トピックとは?

トピックストリングを構成するトピックについて説明します。トピックとは筆者が一つの文で伝えたいメインアイディアです。つまり一つの文におけるキーワードのようなものです。トピックが読者に認識されると読みやすく内容が伝わりやすい文章になります。

認識されやすいトピックの条件は、1.読者が知っている情報であること、2.文法上の主語であること、もしくは文の前半にあることです。大雑把にいうとトピックが既知情報で動詞の前にあると文章の流れがよくなるのです。

トピックストリングとは

トピックストリングとは段落内の文のトピックをつなげたものです。トピックストリングに一貫性があると焦点が定まりぐっと引き締まった文章になります。

よいトピックストリングの条件は、
1.トピックが主部や主語であること、もしくは文頭にあることです。文頭にトピックを置くにはas forやregardingなどの導入フレーズを使うとよいです。
2.トピックが既知情報で一貫性や統一感があることです。トピックは同じ単語である必要はありません。トピックが関連性をもって変化するのは自然なことです。
3.トピックが何度も変わらないことです。複雑なアイディアを説明するのにトピックが変わることもあるでしょう。しかし、一つの段落内で何度もトピックが変わると焦点が定まらず読者も疲れてしまいます。段落を分けた方がよい場合があります。

トピックストリングを使った段落最適化の例

トピックストリングの作り方はとても簡単です。基本は段落の各文の動詞前の部分を並べるだけです。

それではトピックストリングを前回記事の例文からつくってみます。例文はすでにKnown-to-Newと強調の原則が適用されているバージョンです。第一文を除いて、動詞前の部分を太字にしてあります。第一文は形式主語をつかったthere構文なので動詞直後をトピックとしました。

1) There has also been work towards a universal influenza vaccine that would not require yearly modification. 2) Such a vaccine would confer Immunity against several influenza strains (heterologous immunity) and subtypes (heterosubtypic immunity). 3) The first mRNA vaccine that was demonstrated effective against influenza in 2012 was RNActive, mRNA encoding haemagglutinin from the PR8 H1N1 strain. 4) Three intradermal injections of 80ug RNAactive induced homologous and heterologous immunity against H1N1 and H5N1 strains, respectively, and protected the mice against a lethal viral dose (10× LD50). 5) Since then, mRNA-based influenza vaccines have been further developed including the evaluations of [alternative antigen targets, alternative mRNA technologies (nucleoside-modified mRNAs and self- amplifying mRNAs), and several delivery vehicles (DLinDMA, DOTAP, polyethylenimine and cationic nanoemulsions).

できあがったトピックストリングは下記になります。

1) work towards a universal influenza vaccine
2) Such a vaccine (a universal influenza vaccineのこと)
3) The first mRNA vaccine 
4) Three intradermal injections of 80ug RNAactive (mRNA vaccineのこと)
5) mRNA-based influenza vaccines

お気づきの通りトピックはすべてvaccineを含みます。トピックのキーワードはワクチンであることがわかると思います。3番目のトピックはRNAactiveと変化しますが、これはfirst mRNA vaccineのことですから一貫性のある変化です。これらのトピックは第一文を除き文の前半にあり、既知情報であるワクチンがキーワードで、また統一感もあります。前述したよいトピックストリングの条件を満たしています。したがって、この段落はすでに最適化されていると言ってよいでしょう。

では、Known-to-Newと強調の原則を使う前の例文のトピックストリングをみてみましょう(例文は前回の記事を参照)。

1) Work towards a universal influenza vaccine
2) Immunity against several influenza strains and subtypes
3) In the first demonstration of an effective mRNA vaccine
4) Since then, several delivery vehicles

トピックは1) ワクチン、2) 免疫、3) ワクチン、4) several delivery vehiclesに移り変わります。特に4番目のトピックは未知情報で一見しただけではワクチンとの関連性がはっきりしないと思います。トピックストリングには改善の余地があり段落がまだ最適化されていないことを示しています。

このようにKnown-to-Newの原則と強調の原則をつかうだけでトピックストリングがよくなり段落の最適化ができることが多いです。

同じトピックを繰り返していいの?

「段落内で同じトピックを繰り返し使うと文章が単調にならないか?」と思う方もいるかもしれません。「ちょっと表現を変えた方が英文が格好良くなるんじゃないかな?」と思うこともあるかもしれません。しかし、読みやすい伝わる文章にはよいトピックストリングが必要になります。そのためには一貫性のあるトピックを繰り返す必要があるのです。

まとめ

段落内での文章の流れをよくするのに役立つトピックストリングについて説明しました。よいトピックストリングになるように文章を変えていくと焦点が定まった段落にすることができます。よいトピックストリングにするためにKnown-to-Newと強調の原則が役立つツールであることも紹介しました。次回からトピックストリングをよくする別の方法を紹介していく予定です。

僕のテクニカルライティングの問題点の多くはトピックストリングの概念用いることで解決されたと思います。トピックストリングについて教えてくれたClaude Reichard博士にはあらためて感謝です。

さらにトピックストリングについて深く学びたい方はStyle: Toward Clarity and Grace (Joseph M. Williams著)を読まれることをお勧めします。


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