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凡豪の鐘

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一人の才能を失くした高校生の小説家と、夢を追う少女達の物語。 読み方は「ぼんごうのかね」です。
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2024年4月の記事一覧

凡豪の鐘 #55

凡豪の鐘 #55

シューーーー ゴトンゴトン

景色が移り変わってゆく。新幹線というのは、こんなにも早いモノなのか。修学旅行の時とは段違いのスピードで進んでいる気がする。

懐かしい景色が近づいてくる。今までいた町が、もう遠い記憶に感じる。意図的に遠い記憶にとして仕向けているのだろうか。

気を抜くと、あの家での思い出がひっきりなしに頭へ流れ込んでくる。

美月:......................

新幹

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凡豪の鐘 #56

凡豪の鐘 #56

〇〇:うぁあ......グスッ....あぁぁあああぁ...

無意識に脳が避けていたものに真正面に向き合う。そうなると激流となって流れ込み体が弛緩していく。蓋が外れると、後はもう止める術はない。

蓮加:.........ギュッ

〇〇:うぁ.....

蓮加は〇〇を抱きしめた。

蓮加:大丈夫....私達がついてるから。何があったか....話してくれる?

その声はどこまでも優しかった。

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凡豪の鐘 #57

凡豪の鐘 #57

ガラガラガラッ

一旦扉の前で立ち止まる時間も鬱陶しいと思って、すぐさま扉を開いた。

〇〇:お呼びでしょうか、お姫様笑

美月:ぷっ笑 なにそれ笑 そんな事思ってないくせに笑

〇〇:家主様だったな笑 

美月:声大きいって!......早く外行くよ。

〇〇:......足、うごかねぇのか?

美月:動くけど、車椅子で行きたいの。練習練習。

〇〇:........わかった。

美月:看護師さ

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凡豪の鐘 #58

凡豪の鐘 #58

司会:では登場していただきましょう。文豪先生です!

パチパチパチパチパチパチッ 割れんばかりの拍手と写真のフラッシュで袖から出てきた俺は目を瞬かせる。

ステージ中央まで行き、すでにそこに佇んでいる人物と握手を交わす。

律:よろしく....ぶふっ笑

〇〇:笑ってんじゃねぇよ笑

「おおっ!....あれが文豪先生か...若いな..」
「まだ20代前半とかじゃないのか?」
「それなのにあの作品量

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凡豪の鐘 最終話

凡豪の鐘 最終話

は?.....なんだこれ。は?

美月:私にさ、小説見せてよ!

鳥肌が立った。俺の目の前で故人が演技をしている。そっくりさんでもない、モノマネでもない。そして俺の目の前にいる奴はハッキリと言ったんだ。「山下美月」....と。

「なんだこの人!めっちゃ可愛くね!」
「演技めちゃくちゃ上手い!」
「ん?文豪先生の様子、なんかおかしくね」

チャット欄は盛り上がりを見せていた。〇〇は体を動かせない。

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