見出し画像

岡山大学の「次世代医療機器開発人材育成プログラム」行ってきた(3日目・PMDA申請)

岡山大学が運営している「次世代医療機器開発人材育成プログラム」に参加しています。1、2日目に続いて、3日目の内容もnoteにまとめておきます。

※プログラムの概要については1日目のレポートに書いてあるので、そちらご参照ください。

3日目のテーマ「PMDA申請」

1日目は「医療機器について知る」、2日目は「医療機器の保険適用」がテーマでしたが、3日目は「PMDA申請」。具体的には下記の内容でした。

・医療機器の規制
・医療機器の承認審査の基本と相談業務
・PMDA模擬面談(医療機器メーカー側、PMDA側の両面から)

PMDA(医薬品医療機器総合機構)は3つのミッションを持ちますが、

・医薬品の副作用や生物由来製品を介した感染等による健康被害に対して、迅速な救済を図り(健康被害救済)
・医薬品や医療機器などの品質、有効性および安全性について、治験前から承認までを一貫した体制で指導・審査し(承認審査)
・市販後における安全性に関する情報の収集、分析、提供を行う(安全対策)

その中の「医療機器の承認審査」に関連する業務について勉強しました。

画像1

PMDA審査関連業務の概要 より引用

過去2回と同様に、内容は下記ツイートにぶら下げているので、興味ある人はツイートの方をご覧ください。

PMDA審査でどんな点が重要視されるのかを座学で整理して、それを午後の模擬面談ワークショップで体感する構成でした。

申請側・相談員側の両面を体験する模擬面談

後半は2チームに分かれてのワークショップ。PMDAの審査の申請を行う前に「審査に向けての臨床試験の要否」などを事前に相談することができるのですが、今回は申請側・相談員側の両方の立場で事前相談を体験する内容でした。

具体的には下記内容で食事休憩を挟みつつの6時間!

【申請側】
1.各チームでどんな医療機器を申請するかアイデア出し
2.相談員への説明内容&相談したい点を事前に整理
3.相談員(相手チーム)に対して、申請内容と相談事項のプレゼン

【相談員側】
4.申請者(相手チーム)の申請内容と相談事項をヒアリング
5.申請内容をもとに、相談事項への回答や追加質問事項の検討
6.申請者(相手チーム)に対して、相談事項への回答プレゼン

【申請側】
7.相談員(相手チーム)からの回答に対して議論

相談員への説明で重要になるのは、医療機器の構成に加えて、その用途や使われるシチュエーション。どんな場面で使われるかによって、有効性の考慮や管理すべき安全性が変わってくるからです。

用途や使用シチュエーションの重要性は、保険適用の講義でも話がありました。しかし、保険適用とPMDA審査ではその意味付けが異なります。

保険適用:総合的な治療効果の改善、医療費の削減に貢献するかの検討
審査:用途や使われるシチュエーションに応じた審査内容の検討

模擬面談では、たとえばこんな議論が交わされました。Aが申請側で、Bが相談員側(PMDA側)。一応ぼかして書きます。

A:今回の医療機器は、他の機器で既に利用実績がある構造が使われている。構造上の安全性に関しては、既存機器のデータを提出することで証明を行い、新規の臨床試験は必要ないと考えている。
B:今回の機器は老人を対象者としている。既存機器は若い成年を主な対象者としており、老人に使用した場合、◎◎といったリスクが考えられるのではないか。
A:老人の身体的特徴を模した人体模型で性能試験・耐久試験を行う形でよいか。
B:模型で検討した場合、・・・・

ワークショップ中に繰り返し強調されていたのは下記のような内容

・その機器が使われるシチュエーションをとにかく具体的にすること
→利用場面や対象者の幅が広がるほど、検討すべきリスクが増える。その結果、審査時に必要な試験データなどが増え、準備の負担が増える。

・「すぐやりたいこと」と「将来的にやりたいこと」を分ける
→上記と同様の理由で、用途を広げるだけリスクマネジメントが複雑になる。今回の審査で、どの用途の承認を取りたいか明確にしておく。

・オープンクエスチョンではなくクローズクエスチョンにする
→「こんな装置を作ったんですが、審査に向けてどんなデータが必要ですか?(オープンクエスチョン)」ではなく、「この機器は◎◎なので、臨床試験はせずに、動物による試験のデータを提出する予定です。それで大丈夫でしょうか?(クローズクエスチョン)」という聞き方をする。そのためにも利用シチュエーションを具体的にする必要がある。そうでないと前提条件が定まらず、Yes/Noで答えられない。

・既存の機器と同じ部分、違う部分を整理すること
→既存の機器と同じと判断できる部分は、既存のチェック項目を元に審査を行うことができる。その分、新しい部分の有効性・安全性の証明に注力することができる。

まとめ

自分以外ほぼ全員医療従事者(公的機関の薬事系相談員なども含む)の中、何とか最後まで議論に参加することができました。医療現場において何をリスクと捉えるか、どんな場面でその医療機器が有効性を発揮できない状況になりうるか、など、現場のイメージをしっかり持つ必要性を感じました。

1月から開始したプログラムも次回が最終回。医療機器のマーケティングや知財の話なども出てくるみたいなので、最後までしっかり聞いてこようと思います。

twitter:@tech_nomad_

※プログラム全体の説明&1日目の内容はこちら

※2日目の内容はこちら


サポートいただいた分は下記にまとめた本を読んで還元したいと思います! デジタルヘルスケア https://is.gd/4XCPtN スタートアップ×知財 https://is.gd/KHV8G8 中国スタートアップ https://is.gd/KG2zcF