ケーキの切れない非行少年たち

境界知能?なぜ衝動を抑えられない?

書名:ケーキの切れない非行少年たち
著者:宮口幸治
出版社:新潮社
発行日:2019年7月12日
読了日:2019年8月17日
ページ数:192ページ

今、話題の本書、読みました。
この帯にあるケーキを三等分した図。
インパクトありますよね。

なぜこんな図を書いてしまうのか?
本を読んで、私なりに整理してみた。

”少年たちは境界知能児(IQ70〜84)で認知機能が低い”
”少年院は認知機能が正常な人を対象としている”
”そもそも知能が低いと矯正プログラムが理解できない”
”まずは適切な支援・トレーングで認知機能を回復させる”
”その上で非行の矯正を行っていく”
1番は未然に防ぐ事であり
”学校、家庭で早期発見し、見過ごさない事が大切”

では知能が低いとどうなるのか。
高校生なのに、九九を知らないだけでなく

「日本地図を出して自分の住んでいるところはどこか?」
少年A:答えられない
「九州をさして、これはどこ?」
少年B:外国です。中国です。
日本地図を見せて「これは何の図形?」
少年C:見た事がない、何の図形ですか?

日本地図が何の図形かすらわからない少年がいる。


まずは世の中にはこうした少年がいるという事を
知っておくべきだと思いました。

なんで若者がバイト先の動画をSNSでアップして
炎上しているのか。
全員がこの境界知能だとは思いませんが
やはり認知機能が低下しているのかな?って思います。

彼らはその行動自体も悪いとは思ってないし
アップロードすると最終的にどんな結末になるかも
先が見通せないのです(計画性・想像性の欠如)。

ある意味、学校教育や社会で
見過ごされている被害者とも言えるかもしれません。
避けるだけでなく、そうした問題意識を持つ事。
また、気付きにくいけど、兆候はあるので
教育やトレーニングをして、罪を犯す前に
彼らを変える事の重要性もあります。

やっぱり、”生育環境や学校教育・いじめ”
子供達の成長に大きな影響を与えていると思いました。

但し、私のスタンスとしては、そういう事情があっても

窃盗・恐喝、暴行・障害、強制猥褻、放火、殺人といった
犯罪を許す事は絶対できません。

犯罪は世の中からなくならないとは思います。
少年が罪を犯して少年院に入っても
なぜ罪を犯す事が悪いのか❓
反省とはなんなのか❓

いくら教えても、そもそも相手が言っている言葉すら
理解できないわけです。

そんな非行少年に共通する特徴は5点+1。
(*不器用さは当てはまらない事もあるため”+1”とする)

☑︎認知機能の弱さ
☑︎感情統制の弱さ
☑︎融通の利かなさ
☑︎不適切な自己評価
☑︎対人スキルの乏しさ
+1身体的不器用さ

ざっくり私なりにまとめてみると
『相手が”何を考えているか”を読み取る事ができず
さらにその時の感情に任せて反応する。そして、先を読み解く想像力もないのである意味、動物的な行動に出てしまう。』


IQや知的障害についても触れられているのですが
こうした機能が劣っているため、まともに接しても
そもそも理解できないため反省以前の問題なのです。

最初に述べた境界知能とはIQが70〜84。
70以下が知的障害なので、その境界という事で
知的障害がないと断言して良いのか微妙なラインという事。
(約14%です。35人クラスに約5人程度)

学校でも寝てばっかりでまともに授業を受けないで
テストもいつも名前しか書かないような子が
クラスに数人いたかと思います。

勉強がわからないとますますわからない。
教師からは叱責されるも、理解できない。
ますます楽しくなく、悪循環…。

画一的な教育をしていると、落ちこぼれた子は辛いです。
こういう時に少しでもすくい上げてあげられれば
非行少年にはならない可能性が高いと思う。

✅イラっとした時は何が起きてるか?

私たちだって様々な場面でイラっとしたり
ストレスが溜まったり、感情コントロールできない時もあるでしょう。

でも、一線を超える事はないと思います。
もし、この先に進んだらどうなるか
やっぱり考えるから、ブレーキが働くのです。
これって結構大きいと思います。

でも、脳の機能に偏りがあったりしたまま
育ってしまうと、そうした我慢が利かない。
本人は衝動を抑えたいと思う以前に脳が動いてしまう。

直近だと”あおり運転”でしょうか。
今回の場合は怒りの感情から行動したというより
あおるのが目的だったのかもしれませんが
普通の人間は高速道路で車を止めて、かつ暴行なんてしません。

さて、”道を歩いていて肩がぶつかりました”
そんな時、相手が謝らず立ち去りました。
あなたならどう思うでしょうか?
最近だとキレて暴行なんてニュースが
結構多いですよね。

では、なぜ肩がぶつかったくらいで
そんな事が起きるのでしょうか。

それは自分の中に
”ぶつかったら謝るべき”という
固定観念があるからです。
それはある意味、
相手への要求でもあります。

相手が自分の思い通りにならない時に
怒りが生じる。そこで止められれば良い。
しかし、抑制できないと、行動に現れる。

これって日常の至るところでありませんか?
同僚、家族、夫婦、恋人…。
”こうあるべき”を相手が実行しないと
そこに不快感を覚えて、相手に要求してしまう。

要注意ですね。

さて、やる気のない非行少年を変えていくには
どうすれば良いのか?
※ここに割かれているのは1つの章しかなく物足りなかった。。。

それは2点。

☑︎自己へのきづき
☑︎自己評価の向上

自分がしたい行いは何なのか?
本当にそんな事をしたかったのか?

正しい行いができると自信にもなるし
それが自己評価につながる。

気づきってほんと大事ですね。

さて、最後になりますが

172ページに脳機能と犯罪との関わりで
先日読んだ”サイコパス 中野信子著”の96ページにも出てきた
フィネアス・ゲイジの症例が紹介されていました。
(直近に読んだので、覚えてました❗️)

このフィネアス・ゲイジさん、めっちゃ有名人なのですね…。

ゲイジは事故で前頭前皮質の機能を失った事で
社会性を失って反社会的な行動をしてしまいます。

前頭前皮質は
”認知行動の計画、人格の発現、適切な社会的行動の調節”
に関わる領域です。
事故でなくても、何らかの原因で前頭前皮質に異常がある場合
それに気づかず、見過ごされ、トレーニングもされないと
いつか非行や反社会的行為をしていまうという事ですね。

私は認知機能があると思っていますが
それでも感情のブレはやっぱりあるので
自分なりにトレーニングして強化していこうと思っています❗️


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