【ネタバレあり】金カムがしんどすぎたので尾形にガチ弔辞を書いた 2/10追記
(2023年2/10追記 冒頭だけでなく最後にもあるよーー)
ゴールデンカムイがしんどすぎて(褒めてる)未だに三日に一度思い出しては泣いているオタクです。「祝福」まじしんどいって……
とうとう耐えられずに弔辞を書きました。金カムのことを一切知らないのに読んで感想までくれた友達ありがとう……勝手に送りつけてごめん……
ちなみに、ガチ弔辞を書いたことがない人間が「ガチ弔辞」なんて銘打って書いてるので、暖かい目で見ていただけると幸いです。最後にベストオブしんどい作者インタビューのスクショを載せてるのでぜひ見てね!!!!!!
余談ですが銀河英雄伝説の推しはキルヒアイスとロイエンタールでした。
弔辞
尾形百之助どの
新緑がかぐわしいこの季節、全てを祝福するような柔らかな日差しとは裏腹に、あなたは逝ってしまいました。正直なところ、今でもあなたの死を受け入れることはできていませんが、この度、僭越ながらお別れの言葉を述べさせて頂きたいと思います。
私とあなたが出会ったのは、忘れもしません、四年前の夏のことでした。
初登場でいきなり主人公の命を狙ったかと思いきやすぐに敗れ、再登場した時には何があったのか坊主頭からオールバックへと華麗なるイメチェンを果たしておいででしたね。本当に謎なのですがあの時あなたには何が起こったのでしょうか。メンズノンノでも読んだのですか。
あなたは様々な顔を見せてくださいました。谷垣ニシパを狙っていた時のあなたは極めて冷静沈着で、狙撃手とはこのようなものなのかと、なんと興味深い生き物なのかと心躍ったことを昨日のことのように覚えています。
ラッコ鍋ではギャグなんてやりませんみたいな顔をしつつ、しれっと筋肉を見せつけてくださり、あまりのファンサの多さに夜も眠れないほど心臓が高鳴りました。棒鱈を連絡船の船長に差し出したあの日、見ず知らずの人の良心を利用することを少しも厭わないあなたを一生推そうと心に決めました。
そう、あなたがチタタプと言った日の感動は言葉にできないほどでした。津田健次郎に心からの感謝と金一封を送りたくて仕方がありません。ヴァシリと対戦した時のあなたの狙撃手としての執念、プライドには感嘆の念を感じずにはいられませんでした。雪の中を一晩中微動だにせず銃を構えるなんて正気ですか。
月島軍曹相手に見せる、少しでも隙を見せたら食ってやろうとする顔が好きでした。鯉登少尉相手に見せる、心底バカにしている表情が好きでした。宇佐美上等兵に対して見せる、油断ならない悪友のような顔は万病に効くと今でも確信しています。
鶴見中尉にほんの少しの父性を感じつつも、そんな自分を否定し、中尉を裏切る不安定さと強かさが好きでした。土方さんや永倉さん、牛島、家永に見せる、気まぐれで互いを心から信頼することなく利用しあおうとする和やかで殺伐とした雰囲気が好きでした。
終盤になるにつれ、あなたは信じられないほどの供給を私たちにくださいましたね。ロシア語を話せること、軍中央部と繋がっていること、あなたの野望のこと。おかげで私のロシア語の語彙には「バルチョーナク」が追加されましたし、怒涛の展開にただただ放心するしかありませんでした。
最終話あたりで判明した勇作さんに対する禍根。
そのことを思い出すと、今でも胸が痛みます。いえ、そんな生易しい言葉で片付けていい訳がありません。
正直に言うと、あなたがあんなにも勇作さんのことが心に引っかかっていたとは知りもしませんでした。表面上は何事もなかったように見えたからです。
でも、そうですね、私があなたを現実以上に神格化していたことは決して否定できない事実です。
序盤のあなたは本当に得体が知れなくて、微塵も理解できませんでした。そう、だからこそ、「祝福」を読んだとき、あなたが思っていた何倍も人間くさいことに驚きました。
白状いたしますと、私はあなたのミステリアスでクールなところが好きでした。猫のように気まぐれで、何を考えているのかわからないところが好きでした。それも確かにあなたの一面ではあります。
ですが、「祝福」を踏まえて考えると、あなたはまるで燃える氷のような、痛いほどの焦燥感と、苛烈で悲痛な探求心を、幼く未発達な情緒の内にくべているのではないかと思うのです。
思い返せば、あなたはまるで春の嵐のように現れ、トリックスターとして物語を攪乱し、自らを燃やし尽くすように落ちていきました。
勇作さんやアシリパさんのような人間を恐れつつもどこか憧れ、自らが傷つくとわかっていながらも近づかずにはいられなかったあなたに、私はイカロスの翼を見ます。たとえ蝋でも、あなたは翼を持っていました。近づけば近づくほどその身を焦がすだけの翼。
今でも時々考えるのです。どうすればあなたは死なずに済んだのか。あなたが救われるためには、どこがどう違っていたらよかったのか。あなたにとっての幸せとは、救いとは何なのか。
エリクソンの発達課題では、乳児期に獲得すべきものとして「基本的な信頼」を挙げています。私が思うに、あなたにはきっとそれが欠けているのです。
母親が精神を患い、十分な関心と愛情を注がれなかった幼少期を鑑みると、それは致し方ないことなのかもしれません。
芸者として働いているところを軍の高官に気に入られ、あなたを授かったものの、それ以上の愛情を得ることなく辺鄙な実家で妾として彼の訪れを待ち続けたあなたの母親。
来もしない彼の好物を作り続ける母親の背に、あなたは何を見たのでしょうか。
好物に「あんこう鍋」と答えたあなたは、何を思っていたのでしょうか。目の前に確かにいるというのにいうのにこちらを見もしない母親。それでも確かに、それはあなたにとっての唯一と言ってもいい母親の手料理だったのでしょう。鳥を撃って帰ってきても変わらず作られるあんこう鍋。チタタプがあなたにとって少しでも気に入るものになっていたら、こんなにうれしいことはありません。
そういえば、あなたは「親殺しは巣立ちのための通過儀礼だ」と仰いましたね。
私はそうは思いません。親とは最も身近な他者であり、それを殺すことは他人からの理解を正面から拒絶することになると思うからです。周囲を拒み自分を律し世界から目を背けた果てに、あなたは何を見たのでしょうか。
あなたにとっての救いとは、他者からの承認だったのかもしれません。ですが、あなたが認められたいと(無意識にでも)望んだ、母親も父親も勇作さんももういなくなってしまいました。
あなたが殺したのです。
あなたが自分で、自らが救われる道を断ったのです。それは仕方のないことだったのかもしれません。鶴見中尉にそそのかされたから、その時はそれが正しいと信じていたから、ですが、過程はどうであれ、いなくなったことは変わらないのです。
あなたは無意識のうちにアシリパさんの背に勇作さんを見ていました。彼女は、最後の最後に、あなたを拒絶することを決めました。あなたは、ここでも選ばれませんでした。
あなたの芯にある、良心を捨てきれないところがとても好きです。世の中に対する素朴な疑問や己の技量を突き詰める、ストイックなところが好きです。
「戦場における人殺しの心理学」によれば、人間には3%ほど、人を殺すことにためらいや罪悪感を覚えない、生まれながらの兵士というものがいるそうです。
結論から言うと、あなたは生まれながらの兵士ではありませんでした。心の内にある罪悪感を克服することができませんでした。それは最悪の形で発露し、結局はあなたの命を奪っていきました。
猫は死期を悟ると姿を消すといいます。「孤高の山猫」と称されていたあなたも、ひょっとしたら不意にいなくなってしまうのではないか、そう考えたことも少なくありませんでした。
ですが、今はそうは思いません。あなたは誰よりも人間くさく、純で、いたいけなほど真っ直ぐでした。
勇作さんを撃たなければ、日露戦争がなければ、鶴見中尉と出会わなければ。考えても詮無いことだとはわかっていますが、そう考えずにはいられないのです。
ですがそれでも、あなたは陸軍で狙撃という居場所を見つけました。いくら誘導されたものだったとしても、あなたが、自分で、見つけたのです。
あなたのことが本当に好きでした。
夢女子ではありませんが、今でもあなたのことを考えると胸がキュッと苦しくなります。
BANANA FISHで一日寝込んだメンタルでは立ち直ることは難しいのでしょうか。そんなことはない、はずです、多分。
あなたが私の前に実像を持って現れることはついぞありませんでした。ですが、確かにあなたは生きていたのです。私の心の中で、誰かの心の中で。
最後になりましたが、あなたのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
たくさんの感情と感動をありがとう。代わりに徳をたくさん積んでおくので、天国で思いっきり可愛がられてください。あなたの御霊が、どうか安らかであることを願ってやみません。
追記
この記事を書いてから半年以上がたって、いい加減落ち着いた矢先に問題のインタビュー↓を見つけ、比喩ではなく本当に涙の海を毎日のように作りました。
それから更に半年以上が経った現在、やっと泣かずに尾形の触覚(って言うんですか??あの色気が暴力的なちょっと出てる髪の毛のことです)を見れるようになったので少し手直しして冒頭に経緯をちょっと入れました。
尾形………ホント尾形…………………尾形…………………………………………
み ん な ゴ ー ル デ ン カ ム イ 読 も う ね!!!!!!!!!!!
(そしてあわよくば尾形に狂おう)
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