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本を読もうと言われても ~免疫を下げないために⑦~

私もお店を閉めていますが、みんな色々考えて閉まり始めていますね。強制ストップなところもあると思うけど、自発的ストップで自分の周りを救うと思うとヒーローみたいな気がしませんか?地味だけど。

こんな時に読むと色々思えて、ちょっと希望が持てる本をご紹介。

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。
自分の言動が原因で息子が自殺したと思い込む父親(「終末のフール」)
長らく子宝に恵まれなかった夫婦に子供ができ、3年の命と知りながら産むべきか悩む夫(「太陽のシール」)
妹を死に追いやった男を殺しに行く兄弟(「籠城のビール」)
世紀末となっても黙々と練習を続けるボクサー(「鋼鉄のウール」)
落ちてくる小惑星を望遠鏡で間近に見られると興奮する天体オタク(「天体のヨール」)
来るべき大洪水に備えて櫓を作る老大工(「深海のポール」)などで構成される短編連作集。
はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。(Amazon BOOK 内容紹介より)

昔読んだ時、凄い設定だなと思いました。パニックを書くんじゃなくて、それが終わった小康状態の時期を書いてるんですよ。パニック中は暴動や自殺や混乱が起きているんだけど、それらが一時治まった時、生きてる人は何を思っているか。

『鋼鉄のウール』なんて、私は好きですね。

プロボクサーが試合もなにも無くなって、それでも黙々と練習を続けているんです。試合もないのに練習なんてしたって、と言われても、これしかできないっす、って淡々と毎日練習してるの。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

インタビュアーが逆に彼から聞かれちゃうんですけど、死ぬ日がわかってから本気になって、生き方を変えるんじゃなくて、今本気で生きようかなって思える話です。誰かのためにとかじゃなくて、自分のために。

『天体のヨール』なんてオタクのオタクらしい生き方で、オタクって最高と思う話です。私、結構これだな。

突き抜けて好きな物があると、怖いものがなくなる。

伊坂幸太郎の書く話は、絶望の中に小さな光が見えます。

全てひっくり返って元通り、めでたしめでたし、とはならないんだけど、現実は現実で酷いままだけど、変われるのは自分からだな、って思うと思う。

二冊目。

去年の秋の終わり、ある小説を読んで腹を立てていて、調べものをしている中でたどり着いた本がこちら。

詩人ダンテが、現身のまま、彼岸の旅を成就する物語『神曲』。「地獄篇」は、1300年の聖木曜日(4月7日)に35歳のダンテが、罪を寓意する暗い森のなかに迷い込むところから始まる。ラテンの大詩人ウェルギリウスに導かれて、およそ一昼夜、洗礼を受けていない者が罰せられる第一圏(辺獄)にはじまり、肉欲、異端、裏切りなど、さまざまな罪により罰せられる地獄の亡者たちのあいだを巡っていく。 ( Amazon BOOK データベースより)

罪を罰として与えられながら永遠に償えないのが地獄編で、罰を受けて償えるのが煉獄編なんですが、地獄編の地獄の門と三途の川の間で、虻や蜂に刺されまくっている人たちがいました。地味に嫌ですよね。地獄の罰ってこんな感じなのかな、焼かれたり煮られたりするんじゃなかったっけ?と思うくらい、地味。

そこは地獄前域 とされていて、 無為に生きて善も悪もなさなかった亡者として、地獄にも天国にも入ることを許されない人たちがいるところでした。

つまり、地獄にすら行けない。

ダンテが「彼らはどんな悪い事をしたんですか?」と師匠のウェルギリウスに訊ねるんですが「すべての事に無関心だった者たちだ。関心を持たないでいい」と切り捨てられます。

「誉れもなくそしりもなく生涯を送った連中」「神に仕えるでもなく、そむくでもなく、ただ自分たちのためにだけ存在した」「天はこうした奴が来ると天国が汚れるから追い払うが、深い地獄の方でも奴らを受け入れてはくれぬ、こんな奴らを入れれば悪党がかえって威張りだすからだ」「神のお気に召さずまた神の敵の気にも入らぬ卑劣な連中」「この本当に人生を生きたことがない馬鹿者ども」「彼らについては語るな、ただ見て過ぎろ」

ウェルギリウス、こ、怖い。

この後どんな罪にはこんな罰、と続いていくのですが、私はこの前域が一番衝撃的でした。

自分には関係ないと思っていると、誰からも関心も持たれない。

自分はコロナにかからないと思っている人に似ている気がする。

まだ現世は隔離してくれたり様子を見てくれたりするけど、死んだあとは放置なんですよ。永遠に。

神さまからも悪魔からも、自分には関係ないって言われちゃう。

加護もなく裁きもない。

すごいなぁ。そうだなぁ。何のために生きているのかなぁって素直に思っちゃうよ。

外出自粛の時期に読むには重たいけれど、色々振り返って考える時間が持てる今だから、お勧めします。

イタリアの古典なので日本で源氏物語を読むような感じだけど、訳がわかりやすいので想像しやすかったですよ。私は平川さんの訳より寿岳さんの訳の方がすんなり読めました。

色んな小説がありますが、心にしみる言葉がきっとあります。文字が心をほぐして、さらには免疫も上げてくれる。私はそう思っています。

この1ヶ月をどう過ごすかで、5月以降どう生きていくか決まると思うんですよね。4月は試行錯誤することになるから、色々トライしてみるのが良いと思っています。


すごく喜びます(≧▽≦)きゃっ