せっかくの出番なのに……
ライターの仕事がひと月ぶりに来て、嬉しい。
一週間ほど前に打診されたその仕事は、私の技量でできるのか不安だったけれど、提示された原稿料が前よりも高くて嬉しかったし、難しいことにチャレンジできることもありがたくて引き受けた。
だけど……
実際に、仕事の詳細がわかって、いざ、取り組み始めたら、息苦しくて、呼吸が浅くて、泣きそうになった。
「嫌だ」というマイナスの感情とは違う。
やるぞーというお腹の下の方から湧き上がる気持ちと、できるかな? という不安と、また「書くこと」ができるという喜びが渦巻きになってぐるぐるしていた。
なんだよ! ビビってんじゃねーよ!
落ち着いて、取り組もうよ!
って言いつつ焦る私もいて、いろんな私の登場でキャラが渋滞していた。
本当なら、すっきりした気持ちで、落ち着いて取り掛かりたかったのだ。
そんな、どうでも良さそうで、私としては結構大切な思いも、カサコソと現れた。
「必ずしもベストコンディションでなくてもいいんだよ」
渋滞するたくさんの私たちの前に、ちょっと凛とした雰囲気の私がまた新たに現れて、こう言ったんだ。
「気持ちが落ち着いてなかったら、そのまま始めてもいいし、落ち着くまで待ってもいいし、どっちでもいいよ」
「サラサラと書けたらいいし、なかなか進まなくたって大丈夫だよ」
そうだよ! いいじゃないか!
なんでこんなことで泣きたくなるんだよって思って、本当に馬鹿みたいだけれど、何かよくわからないけれど、心が動いているってことなんだよね。
何も起きないと、つまらないから、感情が動く何かがしたいと思うくせにさ、感情が動き出すと落ち着かせたくなるんだよね。
もしかすると、久しぶりの出番に、緊張しているだけなのかもしれない。
大丈夫。
小さなおぼつかない足取りでも進んでいればぼんやりと道が見えてくると思うから、まずは、一歩を踏み出そう。
呼吸が浅い時は、まず吐いて、そうしたら少しずつ呼吸が落ち着いてくるはず。
怖がってもいい。
泣いてもいい。
焦ってもいい。
その代わり、楽しい気持ち、嬉しい気持ちも味わって、精一杯、取り組もう!
面倒くさいやつだけど、それが今の私。
さあ、始めよう!
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