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夢物語

手を伸ばしても触れられないものに恋い焦がれること。
そんな虚しい、けれどもある種期待に満ちた行為が、もう何年もわたしを生きながらえさせているような気がする。

動機は虚しくとも、期待を胸に生きるということ、そしてその期待を成就させるために、幼い日に描いた夢物語にふたたび光を当てること。
それは平凡に過ぎゆく日々の中に、ささやかな彩りを添えるものであった。

過ぎゆく日々の中で時に消えてしまいそうになるその彩りを何度も見失いそうになりながら、そのたびに何度でも手を伸ばし、この胸に抱きとめながら、呼吸が止まるその瞬間まで、わたしは期待に胸をときめかせるんだろう。
胸の中に夢物語を秘めていること、気が遠くなるほどの長い歳月を生きていくうえで、それはきっと幸福なことだ。

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