第7話 火加減は誰にもわからない

「いやぁ、なんか言うてる間に仲間が集まってきましたなぁ。もういけるんちゃいます?」と、ロボの一言に

「まだだ。どうしてもあと1人。気になる奴がいる。俺はあの光景が忘れられないんだ。」

「......ちょっと出かけてくる」
俺は奴の様子を見に行くことにした。

「火加減はどうだ?」
「….。」

ペンギンは相変わらず、BBQをしている。

周りには火加減に失敗し焦げ付いた具が散らばっている。
前と同じ風景…ではない。

具の種類が増えている。


「気づいたかい?具によって火加減て違うんだぜ。まったく、奥が深いよ。」

「お前は一体何をしているんだ。」


「別に。俺はみんなと美味いものを食べたいんだ。こうした方が美味くなると思ってやってる。」

手元の具をひっくり返して、こう続ける。

「ただ、誰もやり方を知らないから、俺がやっているだけのことさ。それに、失敗も無駄じゃいぜ。この焦げたBBQの具にも使い方があったんだよ。こういうご時世だろ?だから、この具を人間に…」

「もういい!みなまで言うな。わかっている。….覚悟はあるのか?嫌われるし、BBQは少し先になるぞ」

「構わねえよ。一緒に食える仲間がいなくなる方が大変だからな。BBQは少し先にする。俺は、この失敗した具を使って、みんなを助けるさ。作る過程で見つかる思わぬお宝ってあるんだな。ラッキーだったよ。」

「それは単なるラッキーなんかではない。お前の努力と勇気の結晶さ。お前自身の力だ。」

「ふっ。そんなものかな。どうだ、一本いるかい?」
ペンギンは焦げたBBQを俺の前に差し出した。

「いや、遠慮しておこう」

しばし、気まずい沈黙の後、2人は笑って固い握手をかざした。


最後のヒーローが誕生した瞬間だった。


ペン


次回 第8話 ヒーロー会議

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