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家族レジリエンス:傷跡は残っても育ち続ける家族

「ひと・こと・もの」に頼りながらチームで子育て&仕事をやっていこう!というチームわが家。「いいね!でも大変!」という声をうけて問い直しを行い、チームわが家1.0から土台となっていた理論を変更。

家族発達理論家族ストレス対処理論、家族レジリエンス(概念)をベースに、チームわが家2.0へアップデートしています。

今回はチームわが家2.0の土台の三つ目、「家族レジリエンス」について考えてみます。

家族レジリエンスとは?

家族レジリエンス
家族が困難なことや挑戦を乗り越える力。その際の試行錯誤を通して新たな対応力を得て、個人や家族そのものがチームとして成長する過程。

齊藤・岡安, 2009; 鈴木・渡辺・佐藤, 2019; 得津, 2012

レジリエンスはもともと「弾性」「跳ね返す力」という意味です。空気の入ったゴムのボールをぎゅっと手で押し潰しても元に戻ります。あのイメージです。困難なことがあっても一度は凹むかもしれないけれど、どうにかこうにか立ち直る。発達心理学では「精神的回復力」と言われ、ストレスに対する心理的な適応力を指します。

レジリエンスは楽観性、社交性、行動力、冷静さといった「もともと備わっている資質や特性」でもありますがそれだけではありません。困難を乗り越えるために新しいスキルの獲得したり、周囲の人の助けを借りたり、新しいツールを導入したり「困難を乗り越える過程で新たに獲得する対応力」もレジリエンスです。

このように、レジリエンスは元々備わっていなくても大丈夫で、経験を通して学習したり獲得したりできます。これが、「乗り越える力、またはその過程」と言われる理由です。

レジリエンスは個人の資質だけではない

家族発達理論でも触れましたが、個人が成長するように家族も成長します。同様にレジリエンスも個人だけではなく家族というチームにも備わっていて、獲得することができます。

レジリエンスが高い人が集まったチームはレジリエンスが高いかというとそういう訳ではありません。個々のレジリエンスの高さ故に個人プレーが多くなり、チームとして乗り越えるという経験が生まれにくくなります。結果、チームとしての対応力の獲得にはなりません。

また、チーム内にレジリエンスが高い人が一人いると、その人に負担が集中しやすくなります。その結果、一人で負担を抱え、その重さに潰されて折れてしまう場合ももあります。チーム全体のレジリエンスを高めることにもつながりません。それは家族も同様です。

家族レジリエンスを高めるためには、家族というチームで課題を理解し、課題に取り組み、チームでの試行錯誤を経て新しい対応力を獲得することが大切です。家族みんなでその過程を経ることで家族というチームとして成長します。

チームわが家は家族レジリエンスそのもの

出産、育児、育休からの復職といったチャレンジに家族が直面した時、最初は対応する手段も方法も選択肢も少なく、どのように対処し乗り越えたらいいかわかりません。しかし子育てに必要なスキルが次第に身についていったり、家事の負担を軽くするために家電を購入したり、保育所の送迎にシッターさんを頼んだりと、チームわが家でどうにかこうにか対応します。

気がつくと、子供の世話も問題なくこなし、家族も信頼して頼り合える関係になり、サポーターが増えたことで対応の選択肢も増え、気持ち的な余裕もできてきます。経験を重ねるごとにチームわが家がどんどん進化&パワーアップし、次に同様のチャレンジに遭遇して対応する術がわかっているのでジタバタしなくなります

つまり、チームわが家を創る過程そのものが、家族というチームのレジリエンスということです。

どんな家族も大小の様々な困難に遭遇します。弱さゆえに傷つけあったり、立ち直るまでに時間がかかる場合もあるでしょう。楽しい経験ではないかもしれませんが、その過程で家族レジリエンスは育まれます。お互いに弱いからこそ家族として強くなれます。時には傷跡が残るかもしれませんが、どうにか無事で、なんだかパワーアップしている。こんなふうにチームわが家として育ち続けるのが家族です。

ところがなんと!レジリエントな家族でいるためには、レジリエントな個人でいることが大切で、そこがチームわが家にはすっぽり抜けていた!というのが次回のお話です。

参考文献:
Alliger, G.M., Cerasoli, C.P., Tannenbaum, S.I., & Vessey, W.B. (2015). Team resilience: How teams flourish under pressure. Organizational Dynamics, 44, 176-184.
齊藤和貴・岡安孝弘, 2009 最近のレジリエンス研究の動向と課題 明治大学心理社会学研究 第4号 72-84
鈴木和子・渡辺裕子・佐藤律子, 2019, 『家族看護学- 理論と実践 第5版』 日本看護協会出版会.
得津愼子, 2012, 家族の持つ回復する力を信じて 家族看護学研究. 第17巻 第2号 99-104
平野真理, 2010, レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み:二次元レジリ エンス要因尺度(BRS)の作成.パーソナリティ研究,19(2):94-106