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キングダムとティール組織にみるエンゲージメントとモチベーション(麻野耕司氏×島田由香氏イベントレポート)

お二人とも大のキングダムファン

Team WAA!の2018年11月のマンスリーセッションでは、リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司さんをお迎えして、キングダムとTeal 組織をテーマとして取り上げました。
キングダムを読み始めて、大のキングダムファンになった島田由香ユニリーバ取締役が、キングダムについて著書もある伊藤羊一さん(Team WAA!の2018年5月のセッションのゲストでもいらっしゃいます)にキングダムに詳しい方を紹介してもらって出会ったのが麻野さんだったそうです。

まず麻野さんから、麻野さんおススメのキングダムのシーンについてご説明いただきました。

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キングダムを読む時の視点

個人と企業の関係が変わってきています。
かつては、企業は終身雇用を個人に保障して、個人は全面的な忠誠行動をとる相互拘束型でした。ところが、右肩上がりの成長が終わり、企業は個人に終身雇用を保障できなくなってきていており、相互選択関係つまりお互い選び選ばれる関係となっています。
企業は個人から選ばれるような、社員のモチベーションを高められるようなモチベーションカンパニーを作っていく必要があります。
これに対し、個人は企業から選ばれるようアイ・カンパニー(自分株式会社)として、自分のキャリアを切り開いていく必要があるのです。

エンゲージメントを左右する、社員から選ばれる要因としての4P

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かつての日本の会社はPrivilege、すなわち給与や出世で社員を束ねていました。社会が豊かになり、仕事のやりがい・理念の共感や仲間との共感を求めるようになってきたので、今はPrivilegeのほかの3要素も大切になってきています。

黒羊丘の戦いでの那貴の言葉(45巻58ページ)

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黒羊丘の戦いでは、桓騎(かんき)軍と信(しん)の飛信隊(ひしんたい)が一緒に敵と戦っていました。
桓騎軍に所属する那貴(なき)が、飛信隊にヘルプで行きました。
桓騎が勝利のために手段を選ばないことに信が反発して、もめた経緯があります。
戦いが終わった後も、那貴が桓騎軍に戻らないと言ったので、桓騎から理由を聞かれると、
「飛信隊(あっち)で食う飯ってうまいんスよね 意外と」と那貴が答えました。
ここにチームや組織を作っている人にとって重要なエンゲージメントの概念がすべて詰まっています。

那貴の気持ちを解説すると、「俺にとってのエンゲージメントはPrivilegeではない。People やPhilosophyを感じながら戦いたい。」
飛信隊で持っている夢や飛信隊にある絆の方が自分にとっては大切だという、エンゲージメントに突き動かされている場面だといえます。

スライドの2段目右下の桓騎の目は、「人が働く理由は待遇だけじゃないのか。」とエンゲージメントの重要性に気付いた瞬間だといえます。

今までのリーダーは自分のチームのメンバーにいっぱい稼いでうまい飯を食わせようと思っていました。
これからのリーダーはそれだけではだめで、飯をうまくすることが大切になっています。
同じご飯を食べていても、そこに夢や絆があったら飯はうまくなるのです。

人の能力のなかでも重要なモチベーション

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これは人の能力を表すピラミッドです。

ポテンシャルとは知的基礎能力です。
ポータブルスキルとは、どんな職種・業界でも持ち運び可能な能力のこと。
対人力や対課題力・対自分力を指します。
テクニカルスキルは、業種や職種ごとの専門知識・専門技術です。

人生100年時代には専門知識はすぐに陳腐化してしまうかもしれないが、
働くモチベーションや学ぶモチベーションはずっと自分を支えてくれるもので、
自分でモチベーションをコントロールできることはとても大切です。

セルフモチベーションコントロールの天才:李牧(45巻162ページ/趙王46巻196ページ)

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李牧は、秦の隣国趙のとても優秀な軍師です。
秦が攻めてくると報告をしても、趙王はお風呂に入ったまま。
「自分は体が弱く長生きしないだろうから、その間だけ城がもてばよく、国のことは知りません。兵を出す必要はない。自分は軍を出さない。」という返事をしました。
文句ひとつ言わないで、李牧は趙の民を守ることを選びました。
秦の国王、政に会った時に、李牧は「本当ならあなたのような王にお仕えしたかった」と言ったのは本音だと思いますが、自分の役割を趙で全うすることを李牧は選んだのです。

モチベーションはずっと自分を支えてくれるものです。
セルフモチベーションで大事なことは、変えられるものにエネルギーを注ぐことです。
変えられないものは過去や他人で、変えられるものは未来です。
李牧は瞬時に気持ちを切り替えて、未来に向けて自分が何ができるかに切り替えたのです。

変えられるもの、自分や未来にエネルギーを注いでいると、他人や過去も変わってくることがあります。例えば面接官がむすっとした顔で入ってきた時に自分が笑顔で話しかけると、面接官が笑顔で話してくれることもあります。

ビジョンを語って、斉の王を味方につけた政(45巻135ページ)

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秦以外に6つ国があります。
このシーンでは、「法治国家をつくることで平和を成し遂げたい」と秦の王の政がビジョンを語ります。斉の王が「わかりました。あなたが中華統一をするときには、斉の国をあなたにあげましょう」と言いました。
政の言葉によって、一人の命も失わずに一つの国を平定しています。何十万人の命が救われているのです。
真のリーダーとは、戦いに勝つということではありません。
本当のビジョン・ミッション・パーパスによって、戦いをなくすことができるのが真のリーダーだと思うので、政のこのシーンはすごいと思います。

麻野さんの好きな言葉に、

力のあるやつは金のあるやつに使われる。 金のあるやつは知恵のあるやつに使われる。知恵のあるやつは夢のあるやつに使われる。

がありますが、夢やパーパスのエネルギーがすごいということを、このシーンから学んだそうです。

蕞(さい)での政の民への演説(31巻50ページ)

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7つの国のうち、6つの国が連合を組んで秦に攻めてくる。
民衆しかいない町で、敵の兵士が強すぎて守り通すことが難しい状況でした。
政の「聞かせたい言葉がある」のあとに続く話がめちゃくちゃいいです。
ミッションやビジョンをどう伝えるのが良いかを学べるシーンで、過去・現在・未来という形で今なぜ戦わなければいけないかを語っています。
今、秦の国で私達が平和に暮らせているのも、過去先人たちが戦い、守り抜いてきたからです。そのうえに僕たちの平和が成り立っているので、その人たちの気持ちにこたえるためにも頑張ろうよと政は民衆に伝えました。ミッションを過去・現在・未来という流れで語っていく中で物語が生まれます。その人たちの物語の中に人間は意義を見出すことを学んだシーンです。

(きょうかい)が飛信隊を離れる時(23巻62ページ)

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羌瘣(きょうかい)という副将が、自分の村に帰って復讐を果たすためにいったん飛信隊を抜けることになりました。「いつでも戻ってきてくださいね。」と言って飛信隊のメンバーはあたたかく、羌瘣を送り出しました。その後羌瘣は飛信隊に戻ってきたのです。
これもこれからの企業と個人のかかわり方を表していると思っています。

かつては退職することは裏切り者みたいな感じの時代がありました。
今はお互い選び選ばれる関係で、ロイヤリティーだと相手の選択肢を奪って忠誠を誓わせる面があるのに近いのに対し、エンゲージメントというのは、相手の選択肢を全部認めて、そのうえで自発的に選択するもので、相手の選択を認めるスタンスが大事です。

現在は、別れの際に温かく見送れば、お互いの人生のパーパスが重なる時が来たらまた一緒になれるという時代だと思います。
こういう風に離れていく人に向き合えるのが、これからのチームや組織で大事になってきます、と麻野さんはおっしゃいました。

向こう岸に敵がいる中で、淵さんが川を渡る(42巻148ページ)

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川の向こうにいかないといけないけど、敵がたくさんいる。川の別の場所の浅瀬だと、向こうまで渡れそう。誰が渡って、みんなを向こう岸に連れていくのかというときに、信は責任者として淵(えん)さんを選びました。
この仕事は、責任感と信念がないとできないので、秦は淵さんを選んだのです。
淵さんがこの仕事をやりきれたのは、エンゲージメント。エンゲージメントの4PのPeopleで、淵さんと飛信隊とはつながっています。

人間は、自分のことを分かってくれる人のために頑張りたいと思う傾向がすごく強くあります。麻野さんはこのシーンを読んだ後、自分がどれくらい自分のチームのメンバーのことを理解できているか、承認できているか、共感できているかを見直すようになったそうです。

信が王騎の馬に乗って、将軍の見る景色を見る(16巻164ページ)

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王騎(おうき)という秦の大将軍は、飛信隊の信のことを将来将軍になる人物だと見込んでくれて、死ぬ直前に信を自分の馬にのせてくれ、将軍の見る景色を信に見せました。

リーダーには視界が大切です。
視界には、空間感と時間感があります。
空間感とは、どれくらいの広がりでものをみているか、
時間感とは、どれだけの長さでものをみているか、です。

普通の人が今日の仕事が終わるか、今週終わるかと考えているところをリーダーは1年先、3年先、5年先を考えないといけません。
新入社員が委員が自分の仕事と考えているところ、リーダーは部署全体・会社全体・業界全体・社会全体を考えないといけません。その広さ・長さがリーダーにとって大切なのです。

将軍も同じで、軍とか戦場全体をみて、今だけでなく、先を見て、広がりや長さを感じさせるために一番よかったのは、自分の横に座らせてその景色をみせること。王騎将軍の横で将軍の目に映る景色を見たことによって、信は視界の広さや長さということを学んだのです。

ティール組織のポイント3つ

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ここからは島田由香さんによるティール組織についての解説がなされました。

ティール組織の本

や、嘉村賢州さんのお話からポイントをまとめるとこの3つになります。
この3つは特にキングダムとも連携・連動しているといえます、と島田さん。

1.主体がなければ変化は絶対起きない

I とかWeというように、自分ごとにならなければ変化は起きない。

2.人をその気にさせ、実力以上の力を引き出す
これはティールなリーダーだからできること。
キングダムの政や王騎はそういったリーダー。信が伸びていったのも、王騎に力をひきだしてもらった面もあると言えます。

3.成長のきっかけは常に人生の大きな試練という形でやってくる
もう無理だ。
なぜこんなことが起きているのか、大変だという時こそ自分の成長の時。
今いる世界観で解決できないことができないということは、次へ行こうというチャンスになっています。

Tealにたどり着くまでの段階

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Tealにたどり着くまでの段階については、このスライドを見てください。
TealはREDからGREENまですべて包摂しています。
社長がORANGEだったら組織はORANGE以上にならないため、社長の選任はとても大切になります。 
1個上に行こうと思っているとそうなります。なので、自分がどうありたいかと思えるところをよく考えてみてください。

Tealだと生命体で、信頼で結びついていて指示命令系統もなくてよい。それはどんなチームなのか。 
その時その組織に求められているパーパスによっても違ってきます。
王騎軍や桓騎がどこに当てはまるかを考えてみるのも面白いですね。

リーダーシップが発揮されている時におこっている3つのこと

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「ティール組織」のP334にかいてあります。
蕞(さい)での政の民への演説のシーンがこれにあてはまります。

1.パーパスレッドパッション(Purpose Red Passion)が出ている
こういうことをしたいというPassionがPurpose Red
2.その人の強みが出ている
3.感動が起きている

だから人がついてくる。
人は感動して動くのです。

ティールになっていく3つのBreak Throughとは

ティールになっていく3つのBreak Throughとは、以下の3つになります。
1.Self Management
自分で自分のことを知り、変えるもの変えられないものが何かを知る
2.Wholeness
全体性。自然と自分とのつながり・空間の中での自分・時間の中での自分3.Evolutionary Purpose
革命・改革をおこすくらいパーパスをもっていることは大きい。

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麻野さんはキングダムの政と李牧が好きで、会社でメンバーに話をする時は政のような気持ちでふるまうとのこと。モチベーションクラウド立ち上げ時の他社との連携の際には、合従軍をつくった李牧のような気持ちでいらっしゃったそうです。

李牧がどんな幼少期を経て李牧になったのかとか、政がひどい幼少期を送ったが、紫夏に助けられたこともあり、どのように人格形成され、成長していったのかについても、キングダム作者の原泰久先生に描いてもらえたらいいですね、と島田さん。
こんな魅力的なストーリーでキングダムを描いている原先生にもぜひお会いしてみたいなど、話は盛り上がるなか、イベントは終了しました。

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この日のセッションのカエルンさんによるグラフィックレコーディングはこちらです。

伊藤羊一さんのキングダムについてのご著書


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Team WAA!の2019年7月のセッションは、WAA FESという拡大版の形で開催予定で、その際にキングダムカンファレンスもプログラムに組み込む予定でいます。
詳細決まり次第お知らせしますので、楽しみになさっていてください!!

麻野さんはトーク中にもおっしゃっていたように、組織人事コンサルタントでいらっしゃいます。
その立場からおすすめの本について語られています。

また来年4月頃にNewsPicks Bookから出版予定の書籍「THE TEAM(仮)」という、チームについて再定義した、わかりやすい本を出される予定です。
そちらも出ましたら、ぜひお手に取ってみてください。

登壇者プロフィール

麻野耕司(あさの・こうじ)
株式会社リンクアンドモチベーション取締役 株式会社ヴォーカーズ取締役副社長 2003年 慶應義塾大学法学部卒業後、リンクアンドモチベーション入社。2018年 リンクアンドモチベーション取締役に就任。同年 同社からヴォーカーズに出資し、ヴォーカーズ取締役副社長に就任。リンクアンドモチベーションにて国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」、ヴォーカーズにて国内最大級の社員クチコミサイト「Vorkers」を展開。投資家としてHRTechを中心にビズリーチ、ネオキャリア、あしたのチーム、Fondなどに出資。主な著書に「すべての組織は変えられる~好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか~」(PHPビジネス新書)。
島田 由香(しまだ・ゆか)
1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GE(ゼネラル・エレクトリック)にて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLPトレーナー。日本の人事部HRアワード2016 個人の部・最優秀賞受賞。中学2年生の息子を持つ一児の母親。

文:宮崎恵美子
(Team WAA! プロモーションチーム)

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🔹2019年度 Team WAA!マンスリーセッション日程
*やむを得ず、日程の変更を行う場合もございます。
*8月開催なし。7月にスペシャルイベント予定。
1月18日 金(初の大阪開催!)
2月18日 月
3月15日 金
4月18日 木 
5月15日 水
6月18日 火
7月20日 土:WAA FES / キングダムカンファレンス
9月18日 水
10月15日 火
11月15日 金
12月18日 水
よろしくお願いします!

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