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石ころ屋さん

こどもがとても小さかった頃、1歳ちょっとの、公園で遊びだしたくらいの頃、やたらと公園の石を集めていた。

まだ、全然話せない。
おぼつかない足取りで、公園をてとてと歩いて、色んな形を石を拾って、大事そうに持っている。
食べてしまわないか心配で、注意深く見ていると、ニコニコニコニコ笑っている。
走ったり、遊具で遊ぶ時に石を離してしまうのだけど、また帰り際に石を拾っている。

とても大事なもののように、色んな石を持って、家に帰る。
帰ったら玄関に石を置いておくようにしたら、公園に行く度に石が増えた。
集まった石を、楽しそうに見ていた。

今は、大きくなったから、石ころを拾って集めたりしない。言葉も沢山話すし、あの時になぜ石ころを集めてニコニコしていたかも分からない。
石ころを集めるだけで、あんなに楽しそうだった時は終わって、今はもっと複雑な遊びをしている。

嬉しくもあり、どことなく、寂しさもある。
これからの、縮図を見ているような気がした。
いつまでも、あのニコニコを、忘れないで。
石ころ屋さんだね、と話しかけると、満面の笑みを返してくれた。あの石ころ屋さんの頃には、もう戻れない。俵万智さんも短歌で言っていたけど、子育てって、最後の連続なんだな。
毎日、お風呂に入って、テレビを観て、話をして、どの瞬間も、同じようで、でも最後。

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